拝啓、神様
拝啓 神様
いつかいつか、きっと絶対に
王子様に出会えますように!
絶対ですよ?
宮下 心より
期待を込めてポストに投げ入れる。
「ねぇ、宛先ちゃんと書いたの?」と、親友の一人である佐藤由美ちゃんが言ってきた。
「え?書いてないよ?神様宛だもん」
「ちょっと!いつまで夢見てるつもり?呆れて何も言えないんだけど」
「それじゃあ、由美ちゃんは神様の住所分かるの?」
由美ちゃんは、やれやれといった様子で歩き出す。
「あんたの馬鹿さには勝てません!ほら、行くよ」と私の手を引っ張る。
小さい頃から、お願い事があるとなんでも神様にお願いしてきた。神様と言っても、私は決して怪しげな宗教団体の信者ではない。心の中で勝手に作り上げた架空の神様だ。
私が初めて神様にお願いしたのは、3歳の時……。
お母さんとお父さんが、交通事故で死んでしまった時。その日は、お姉ちゃんと一緒に家で留守番をしていて、急に電話が鳴り出した。電話を取ったお姉ちゃんが、もの凄い勢いで泣いていたのを今でも覚えている。当時3歳だった私は、何が起きたのかも分からずに黙ってお姉ちゃんの側にいた。
その日、初めて神様にお願いをした。
かみさまえ
おーさんとおかーさんがかえってこないの
こころさみしい
みやした こころ
いくら待っても、お父さんとお母さんは帰ってこなかった。しばらくして、親戚の人たちがいっぱい家に来て話し合いをしてた。長い長い話し合いで、私は退屈だった。
おばあちゃんがやってきて、「鈴ちゃんと心ちゃんは明日からおばあちゃん家で暮らそうね」といった。
そこから、お母さんの実家のある秋田県に引っ越してきたのだ。まだ幼かった私は、理解できるわけもなく、小学生になって全て聞いた。
「心?顔、青白いよ」心配そうにのぞき込む由美ちゃんの顔が見える。
「大丈夫!ちょっと……考え事してただけだから!」
「……そっか。ただの考え事ならいいんだけど。あんまり深く考え込むとよくないよ!」
いつもは厳しい由美ちゃんの、こういう優しさが大好き!
そうこうしているうちに、由美ちゃんの家の前まで来た。
「それじゃまたね」