僕は君
扉が開いた。
薄闇の中に、奇妙なシルエットが浮かび上がる。
少年は恐怖に震えながら、上ずった声で尋ねた。
「……誰だ?」
“それ”は、明るく楽しげな口調で答えた。
「僕は、僕だよ」
少年は眉をひそめる。
「僕? でも……僕って、誰?」
シルエットはゆっくりと歩み寄り、やがて少年はその顔をはっきりと認めた。
それは、自分自身の顔だった。
「僕は君で、君は僕さ」
その生き物は言った。
少年は混乱し、後ずさりする。
「もし君が僕なら……どうして僕は君じゃないんだ? 僕たちは感情を共有していないじゃないか。今、僕は怖い。でも君は、幸せそうだ」
目の前の“自分”が微笑んだ。
「それは、君が想像力で僕を作ったからさ。君は心を落ち着かせる方法を探していた。だから……僕が現れたんだ」
やがて、夜が訪れた。
クローンが尋ねる。
「両親はどこ?」
「いないよ」と少年は答えた。
「最初から?」
「たぶんね」
クローンは長い間、空を見上げていた。
「じゃあ、外へ行こう。誰もいないなら、この世界のすべては君のものだ」
二人の少年は外へ飛び出した。
通りを駆け抜け、笑い、叫び、通り過ぎるものすべてを破壊していく。
奪い、荒らし、殺した――誰にも見えず、誰にも止められないまま。
二人は、幸せそうだった。
しかし、次第にクローンの様子が変わっていった。
その笑顔が消える。
「怖いよ」と彼は言った。「帰ろう、お願いだ」
本物の少年は、高らかに笑っていた。
「怖い? 出会った時、幸せそうだったのは君の方じゃなかったか?」
「そうだけど……今は怖いんだ」
少年は彼を見据えた。
「なら、君はもう僕じゃない」
迷うことなく、彼は自分の分身を殺した。
そして、月明かりの下。
彼は野原を一人で駆け抜け、狂ったように笑い声を上げ続けた。




