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チビと私の平々凡々  作者: 愛賀綴
本編

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69/81

69.働いているほうがホッとする

 チビと陛下たちの歌唱会は三時間近く行われ、ようやく終わりかと思えば、夕方から第二部を開催すると盛り上がっていて、チビはもちろん第二部も歌う気まんまん。私はチビを置いて戻ることにした。

 警備隊長さんと洗濯部のオバチャン、素材鑑定士の爺様先輩とともに巨艦から降りる。

 なぜ三人が来ていたのかを訊いたら、管理所の職員向けに歌いたい人を募集する通達があったと教えてもらえた。

 私が牧場で妖獣たちの餌の対応をしていた最中で、直後に陛下に拉致られたので職員全体向けの通達を知らない。

 言われて情報端末で確認したら、飛び入りもウェルカムな内容で、今さっき決まったはずの第二部の開催のことももう掲載されていたから、最初から予定していたのだろう。


「急に言われても真っ昼間じゃ勤務中が多いだろ? せっかくお声がけいただいて誰も行かないっていうのも気になっちゃってねぇ。だから歌唱同好会で声かけあって三人で来たんだよ。久々に歌って気持ちいいね!」

「『仕事ー!』と悔しがっていたやつらもいるから、夕方に連れて行きませんとな」

「俺は夜は無理だー」


 オバチャンと爺様先輩は夕方も行く気まんまんだけど、警備隊長さんはどうやら仕事らしい。と、いうより甲板から降下する先に笑顔なのに確実に怒っているように見える警備隊の副隊長さんが待ち構えているので、警備隊長さんは勤務を抜け出してきた可能性がチラリ。突っ込むのはやめておいた。


 前倒しで連れて行かれたので、昼食時間過ぎに解放された。もともとの予定では午後が丸々潰れると思われていたので午後の妖獣世話班の業務担当からは外されているが、午後の勤務に戻れる時間なので先輩方々の誰かに確認しよう。

 陛下の歌唱会がメインだったので、拉致るならチビだけでよかったんじゃないかと思ってしまった部分もチラリ。

 しかし、私と一緒じゃないと行かないと言い張ったのはチビ。

 それなのに、行ってしまえば私が先に帰っても何も言わない。

 たまにチビの判断基準は謎だな。


 王族方々を前にして胃痛を覚えそうだったものの、両妃殿下のおかげで和やかな雰囲気に慣れ、そこそこ楽しく会話できたと……思う。

 第二王子殿下は予定をやり繰りして確実に来ることがわかった。まだ非公式なので私からは言えないが、そのうち管理所職員向けに通達がまわって、領主館にも連絡が行くだろう。

 何の話しの流れだったか、聞き上手な王弟妃殿下とお話していたら、側にいたお付きの方から痺れ辛子の風味漬けなる料理を教えてもらえたのは嬉しい。ネバネバ感が弱めでシャキシャキしている種類の山芋を買ってきて試そう。

 浮遊城に勤務する方々の出身地はさまざま。話しの流れに任せて各自の出身地の家庭料理をお聞きすることができ、妃殿下付きの方々も給仕をしてくださった方々も話しかけてくれた。味噌焼きなる調理もいくつかアレンジができそうだ。これもやってみよう。


 浮遊城の甲板から舟で地面に到着したら、案の定、警備隊長さんは副隊長さんに業務の代役を押し付けて歌唱会に来ていたことがわかり、そりゃもうネチネチ言われながら連れて行かれた。

 オバチャンと爺様先輩と別れて、人工森林を伐採したところに建てられた仮設妖獣仮眠所に向かう。

 陛下と王弟殿下の巨艦がこれから開拓して職員村となる場所に停泊しているので、大掛かりな開拓整備作業はしばらくお休み。

 たまにモラさんと何人かが設計図を片手にあっちこっち見て回っているけれど、今日は姿を見なかった。

 仮設妖獣仮眠所の建物の近くに、鹿に似ているけれど角はなく、尾がふさふさの妖獣と、オニキスのような狼に似た妖獣がいた。どちらも私の身長と同じくらいあって大きい。


「よく寝れましたか?」

「ああ、よく寝れた。だが、まだ寝るぞ」

「少し歩いてくる」


 仮設妖獣仮眠所はけっこう急ピッチの建設だったけれど、防音も空調設備も妥協しなかった。実際に利用した妖獣たちからも合格の言葉があってホッとする。

 この二匹は陛下と王弟殿下の船から飛び出てきて、真っ先に「よっしゃぁ! 寝る!」と、勢いよく仮眠所に入っていって、追いかけてきた相棒の人も苦笑。

 シャーヤランに着く前までなかなかハードな勤務だったらしく、「五日間は起こすな!」と言ってそれぞれの仮眠部屋の扉の施錠までされたが、「五日間も籠もるって聞いてないから! 部屋に用意している補給は一日分しかないから、こらー! 待ーちーなーさーいー!」と、すぐにマスターキーで扉を開けたのはサリー先輩だった。


 仮眠預かりとなる妖獣はえんえんと寝続けるわけではなく、たまに起きて食べたり排泄したりする。中長期でのんびり寝る妖獣は、たまに散歩に出ることもある。

 遊び回る妖獣も寝たい妖獣にも行動していい範囲の説明はしてあり、二匹はゆっくりとした足取りで山小屋の方向に散歩に向かっていった。

 こちらとしては遊び回られるより、こうしてのんびりしてくれる妖獣のほうが、振り回されない分、ありがたい。


 相棒とした人とともに仕事をしなくていいとなって、とにかく休む妖獣と、自由に行動する妖獣の個体差はいろいろ。

 チビをどこかに預けたことはないけれど、──チビが大きすぎて預けるところでも大騒ぎになるから預けることを諦めている部分もあるけど、私と離れて待たなければならない状況なら、寝て過ごすと言っていた。チビなら自由に遊び回りそうだと思ったのに、「オレっち、いるだけで目立つからさー」と冷静な判断を聞いたときは驚いた。普段も冷静沈着であってほしい。なぜ人の目があると歌い始めたり、大道芸を披露し始めるのか。もはやチビの本能なのかもしれない。

 オニキスはトウマと離れて待つとなるなら寝て過ごすタイプ。想像通りだった。

 フェフェは自由行動派。ただし、あちこち彷徨うわけではなく図書室か図書館、本屋に行きたがる。そして出てこない。リーダーが経験談で教えてくれた。

 キィちゃんは相棒を作る気がないので何とも言えないけれど、仮に相棒がいて相棒を待つ状況でどうするかと聞いたことがある。自由にさせてもらうと言っていた。性格的にもそうだと思った。

 妖獣を預かるときに個別希望があれば聞いて、叶えられることは叶えるように調整する。セイがそうだった。思いっきり農作業がしたい希望なんてそうそうないと思うけれど。


 二匹を見送って仮設妖獣仮眠所の外に停めてある車両を何気なく見たら、シード先輩の小型トラックだった。どの小型トラックも同じに見えるけれど、リーダーとシード先輩のものは区別がつく。ニット先輩はトラックではなくボックス型の車両なのですぐわかる。

 今日は夕方前までニット先輩が仮眠所の担当だったはずだが、私が拉致られていた間に勤務担当が変わっている。

 中に入ったらシード先輩がいて掃除に向かう準備をしていた。


「おっ、解放されたのか」

「はい、解放されました」


 シード先輩が声を殺して笑いながらお疲れと言ってくれたけれど、座って食べてきただけなのに本当に疲れた。顔に出ていたらしい。


 勤務の変更理由は、ニット先輩の息子さん、エバンスくんが熱を出したと連絡があり、ニット先輩を看病に帰らせたためだった。


「まだ続報はないんだが、カーラさんも季節性の風邪かもしれないとさ」

「二人ともって、大変じゃないですか!」

「予防接種しているから症状は酷くないらしいが、あれだ、コンサートの子どもたちの引率役が終わって気が抜けたのもあるかもな」

「ああ……」


 チビのサプライズコンサートが終わってからも、子どもたち全員ではないが午後に芋掘りのアルバイトに来ていて、その時間だけカーラさんは子どもたちの見守り役をしている。エバンスくんの育児が最優先だけど、部屋に引き籠もらないように外に出る理由を残しておきたいとカーラさん自身が望んだことで、育児支援班の職員もついているし、芋掘り最中は菜園の職員もいる。ニット先輩も積極的になってきたと喜んでいたし、私たちもいいことだと思っていた。

 エバンスくん連れでできることを増やそうとしている矢先だったので、症状が酷くないことを祈るばかりだ。


 子どもたちもチビのサプライズコンサートのダンサー役をやりきってから、チラホラと体調を崩す子が出ている。季節性の風邪はウイルス感染なので、気合でどうこうできるものではないが、楽しみにしていたイベントに参加できないとなったら、子どもたちにとって悔しい思い出になってしまう。コンサート前に感染しなくてよかったと思った。

 管理所でのうがい、手洗いは日頃から当たり前で、業務内容によってはマスク着用が必須の現場もある。予防接種も受け、できる対策をしてもウイルスはスルリと入り込み、体を蝕むから厄介。


 あんなに鬱々していたカーラさんが生き生きしてきたので、この体調不良で精神面が前に戻らないか心配になってしまった。

 シード先輩も同じ思いで、リーダーもサリー先輩もルシア先輩も夫であるニット先輩も言葉にはしていないが同じらしい。

 いや、大丈夫。

 そうならないことを祈ろう。


 急きょ変更になった妖獣世話班の担当業務はしっかり理解。

 預かっている妖獣の数が随分減ったことと、チビのサプライズコンサートが終わったことで随分と落ち着いた。明日以降も妖獣世話班の誰かが連勤になってしまう酷さはない。

 シード先輩がチビの歌の発売までのアレコレを気にしてくれたけれど、それはラワンさんにお任せで私は決定事項を聞くだけの状況。

 ラワンさんは今、所長室と所長代理室で一次回答した先の問い合わせをあしらうことに苦労している。

 チビの希望で何らか関係を持つならシャーヤラン領が優先で、次に私の故郷のシシダと決めてくれている。

 結局、チビ大好き商会長さんのところが一番無難。

 アルア商会は全総力でチビの歌の発売記念に向けて大わらわだろう。

 音楽フェスティバルの昼公演の裏後援会ができあがった頃には打診したけど、通信映像の向こうで嬉しさのあまり滂沱の涙で大泣きしたかと思えば踊り出すもんだから、話しがなかなか進まなかった。

 アルア商会は手広い。王国のすべての領に支店があるわけではないが、そのネットワークは大商会並み。その後、ラワンさんが交渉してシシダは私の両親が勤める湯治場の組合を窓口にしてくれた。そうしたら父と母が担当者に抜擢されて「巻き込むな!」と文句がきた。まさか両親にまで飛び火するとは思わなかった。

 チビの歌が発売されたら、またお祭り騒ぎになるだろうから、私はつかの間の平和を淡々と過ごしたい。

 そんなことを言ったらシード先輩にまた笑われた。

 必要となればラワンさんはちゃんと教えてくれる。腹黒い所長よりも安心感がある。

 そう言ったらシード先輩は確かにと大笑い。


 サリー先輩とルシア先輩にも連絡を取ったが、「そこにいるならシードを手伝えばいい」と言ってくれて、私はシード先輩とともに仮設妖獣仮眠所の各部屋の掃除。

 シード先輩は陛下らに会って気疲れしているだろうから無理するなと言ってくれたけれど、私にしてみれば勤務中に不可抗力で拉致られて、仕事を先輩方に押し付けてしまった罪悪感のほうが大きい。


「くっくっくっ。リリカが悪いわけじゃないのはわかってるぞ」

「そう言ってくれるのは嬉しいですけど」

「ま、手伝ってくれるなら、上のフロアを頼む」

「はい!」


 妖獣は糞尿をそのままにすることはなく、排泄場所を教えておけばそこにしてくれる。だから部屋自体が酷く汚れることは滅多にない。

 私は二階の小型妖獣たちの寝ている部屋を見て回って、ぼんやりと起きていた数匹からおやつの追加を求められたので補充したり、寝ぼけて廊下まで這って出てきていた妖獣を部屋に戻したり。

 この妖獣、どういう寝ぼけ方をしているのか、よく廊下に出ていると日誌にあった。今もうつらうつらしていて、私が声をかけて部屋に戻したことも記憶にないだろう。


 小さい妖獣の場合、管理所の仮眠室だと防音を施した檻だったけれど、ここだと一つひとつ部屋なので掃除する空間は広く多くなったけれど、快適さは増したのではなかろうか。

 ぼんやり起きていた妖獣たちに廊下にある待合場で待っていてもらって、ざっとモップで拭き掃除。この掃除の際に集まってしまう妖獣の毛や鱗は、種類分けせず素材管理室に回す。塵なども一緒くただが分別は素材管理室にある機械がやってくれるので、収集ボックスにまとめた。


 各部屋の扉横のボタンを操作して、掃除をした部屋、掃除ができなかった部屋を区別。

 部屋の掃除ができた場合は、扉の上の小さいランプが薄青色。妖獣が寝ていて掃除ができなかった部屋はオレンジ色。次の見回りの際にオレンジ色のランプの部屋を優先的に掃除する。空室は無点灯で、次の見回りの際に二回オレンジ色の部屋を掃除できないときは赤色に変更。

 見回りに来て赤色ランプになっている部屋はそっと様子を見るのだが、妖獣たちは何日間もぶっ通しで寝ることがある。喉が渇いたりしないのか、排泄したくならないのかと不思議になるけれど、めちゃくちゃ寝ているだけなので心配することはない。

 なかなかの数の部屋を掃除して下に戻れば、シード先輩も取り替えた妖獣用マットレスを洗濯部に引き取ってもらうときの出入り口に置いてきて、一休みしようというタイミングだった。


 このあとシード先輩は自身の研究レポートをまとめながら、仮眠所待機の勤務。

 リーダーはもともとの予定では午前が会議で、午後は陛下の船だったのが、陛下の船に行かずに済んだので午後休になっていた。

 朝、シード先輩がリーダーに会った際、少し怠そうに見えたのだという。私が陛下の船に連行されたのを知って、会議後に追いかけようとしたのを止めたのはシード先輩だった。


「恨むなよ?」

「そういう状態だったんなら止めて正解です。恨みません。リーダー、大丈夫ですか?」

「単に寝不足だと言っていたが、弱ってるとかかりやすいからな」


 今年は早々に予防接種を受けさせたので、季節性の風邪だとしても重症にはならないだろう。

 管理所の受付はサリー先輩。

 遊び回っている妖獣たちはルシア先輩がついていて、山小屋の奥ではなく、式典のリハーサルをした広場まで行って駆けっこをしているという。あそこに行くのは少々時間を要する。私は引き続きシード先輩のフォローとなった。


「シード先輩、落ち着いたタイミングでお願いがあるんですが」

「どうした?」

「すみません、トラックを借りてもいいでしょうか」


 朝の妖獣たちへの餌やりが終わった牧場で陛下に拉致られたので、私の浮遊バイクは牧場にある。チビがいるなら運んでもらうのだが、チビは陛下のところに置いてきた。ここから牧場まで歩けなくはないけれど一時間近くかかる。体力はまだ大丈夫でも、正直、精神的疲労が大きくて歩きたくない。

 そこで、シード先輩が仮眠所にいる間にトラックで浮遊バイクを回収して、ここに戻ってくるのでトラックを貸してほしい、そう訴えた。

 また肩を震わせて笑われ、快く車のキーを貸してくれた。


「じゃあ、ついでだ。牧場の保管庫からこの干し肉と骨を貰ってきてくれないか。明日の朝でいいかと思ってたんだが、ニットは休ませるし、リーダーもなぁ。どっちも無理させたくねぇし、今のうちに頼む」


 情報端末の画面を見せられて差し示された内容を確認すると、仮眠している妖獣のおやつのストック分だった。ありがたくその任務を受けることにした。

 牧場に音声通信で連絡を入れて、浮遊バイクと妖獣用のおやつの引き取りに向かうと連絡したら、用意しておくと応答してくれた声の後ろから何やら騒がしい声。何を言っているかわからないけれど、声の様子で悪いことではないのはわかった。


 シード先輩の小型トラックを運転して牧場に向かうと、討伐班の巡回船が奥の整備エリアに向かっていくのが見えた。討伐した何かを牧場に置いていったのかもしれない。

 牧場に近づいていくと建物から随分と人が外に出ていて、なにごと?


「おー、リリカ。バイクは向こうに移動してある」

「……これ、どうしたんですか?」


 わらわらと人がいたのは討伐班の職員もいたからで、絶命している魔物が数体並んでいた。


「見回りに出た先で、馬とフクロウの妖獣たちに会ったんだが、『襲ってきたから狩ったがいらない。持っていってくれ』と言われたんだよ」


 詳しく聞けば、オパールとフクロウたちが散歩していたら魔物の集団が出てきてしまったので、やり過ごそうとしたけれど、理性を失っていた魔物は殺ることと食うことしか考えない。無駄な殺生はしたくなかったものの、オパールたちを守るためにフクロウたちが狩った。しかし、オパールたちとフクロウたちが好んで食べる魔物ではなかった。仕方なく土を掘って埋めようとしていたところに討伐班と会い、これ幸いと押し付けて森の奥に去っていったという。

 討伐班が見回っていたのは森の比較的浅いエリア。

 オパールたちが棲もうとしているところは、たしかもっと奥。


「あ、痺れ辛子……」


 討伐班が見回っていたエリアにちょろちょろと流れる小さい川があったような、薄っすらとした記憶。清流と呼ぶには微妙だが、痺れ辛子が生息している場所を見て回っているようなことを聞いたので、奥から出てきて探検していたのかもしれない。

 それにオパールたちの悪阻が酷くて、それでも何か食べられないかとあれこれ探し回った際、川魚と湖魚はちょろっと食べることができた。川魚の採れるところもいくつか見て回っているんだろう。


「元気そうでしたか?」

「ん? ああ、痩せている感じはなかったぞ」


 討伐班の人たちも、私たち妖獣世話班が痩せていたオパールたちを心配しているのは知っているので、痩せていなかったと答えてくれたことにホッとした。

 あと数日したらバケモノカサハナの種のことでフクロウたちは来る約束だけど、オパールたちに無理してほしくない。

 魔物を解体処理場まで運ぶ運搬車がやってきたところで私はその場を離れ、移動してあった浮遊バイクを積み込んだ。用意してあった妖獣のおやつ用の干し肉と骨の入った箱もそう重くはない。

 仮設妖獣仮眠所に戻ろうとしたところで、クララさんが走ってきて「新作!」と渡されたのはソーセージの試作品。


「この印があるのは辛いやつ。この前みたいに忌憚のない評価がいいわ」

「これ、すごい緑色ですね」

「そうなの。ここまで発色よく緑色になるとは思わなかったんだけど、これもこっちのは辛いから気をつけて。とくにコレ! 青唐辛子を入れたんだ。自分で言うのもなんだけどイケるから!」


 クララさんはなかなかチャレンジャー。牧場の食肉加工チームで生き生きやっている。

 私はそこまで辛いものは食べられないので、これはトウマに食べて評価してもらおう。


 仮設妖獣仮眠所に戻ってシード先輩にソーセージの試作品をおすそ分け。シード先輩もペニンダさんもお酒が好きなので、酒のアテができたと喜んでくれたけど、念押しで言う。試作品なので味は保証できない。


「評価はこれに書いて、クララさんに直接お願いします」

「この真緑のはパッと見、キュウリに見えるな」

「遠目だと間違えますね」


 前回、驚くほどチーズ味だったソーセージの試作品の話しはシード先輩にも言ったので、口直しは用意するとニコニコ笑って、ペニンダさんに夜のつまみができたと連絡し始めた。


 私もトウマに連絡だ。

 まず、陛下の船に来てくれなかった愚痴から。急きょ時間が変わってしまい、仕事を抜け出せなかったことくらいわかる。わかるが、愚痴りたい。

 それと第二王子殿下との仲!

 トウマの生まれのことよりも、直近のこと!

 ヴィスランティ家の子として育ったから、王侯貴族と付き合いがあったことくらい想像しなきゃ駄目だったけど、だからって次代の国王陛下とバイクを通じて仲良しだなんて想像つくわけがない! ……ということを愚痴りながら食事をしよう。

 今夜でもいいし、明日でもいい。明後日になってしまうと愚痴りたい気持ちが褪せる。

 今日か、明日! 絶対!

 ソーセージ、どれくらい辛いんだろう。楽しみだなぁ。


お読みいただき、ありがとうございます。

感想や評価等をいただけると励みになります。

(2025年6月6日時点)引き続き、家族介護看病の事情で更新の間隔が空いてしまう可能性があります。

更新頻度が落ちてしまったら本当に申し訳ないですが、頑張って書いていきますので、引き続きよろしくお願いします!

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愛賀綴は複数のSNSにアカウントを持っていますが、基本は同じことを投稿しています。どこか一つを覗けば、だいたい生存状況がわかります。

愛賀綴として思ったことをぶつくさと投稿しているので、小説のことだけを投稿していません。
たまに辛口な独り言を多発したり、ニュースなどの記事に対してもぶつぶつぶつくさ言ってます。

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