シンデレラと婚約者
お兄様の話しを聞いたところによると、そのエドガー殿下は私の婚約者だと言っていた。
やっぱりこの世界のシンデレラは私が知ってるシンデレラとは異なるようね。
それにしても、貴族にしては随分地味なドレスばかりなのね。
シンデレラって、こういう地味な物がすきだったのかしら?
まぁ、趣味嗜好は人それぞれだもんね!
どのドレスにしようかと悩んでいると、突然ドンドン!とドアを乱暴に叩く音がした。
「お嬢様!エドガー殿下がお越しになりましたよ!」
「えっ!?もう!?すぐに行くから!」
それから私は適当に選んだドレスを身に纏い、屋根裏部屋から出た。
さて、早速婚約者エドガー殿下とのご対面だ。
いったいどんな人なのかしら?
そして私は、客間の扉の前に立ちコンコンっとノックをした。
「し、シンデレラです!」
「入れ」
扉の奥から男性の声が聞こえ、恐る恐る中に入ると、そこには赤い髪の美しい青年が客間のソファに座っていた。
すると彼は、冷たい眼差しを私に向けた。
「遅かったなシンデレラ。この僕を待たせるとはしばらく見ない間に偉くなったものだ」
「……」
か、かっこい〜!!
赤い髪に切れ長の目に綺麗な顔立ち……!
お兄様以上のイケメンだわ!
そんな人が私の婚約者だなんて!
ん?ちょっと待ってよ?殿下っていうことは王子って事よね?
えっ!?じゃあこの人はこの国の王子様って事!?
「おいシンデレラ。聞いているのか?」
「はっ!す、すみません!ボーっとしてしまいました!」
「はぁ……どうやらまったく反省していないようだな」
「えっ?反省?」
反省ってどういう事?
頭にハテナマークを浮かべて唖然としている私を見て、エドガー王子は私に軽蔑する眼差しを向けた。
「君がそういう女だったとはな。少しくらい反省していれば城に戻る事を許したというのに……心底見損なったぞ」
「あ、あのぉ〜、私、何か悪い事しましたか?見に覚えが全然なくて……」
私はゆっくり手を挙げてエドガー様にそう質問すると、エドガー様は深い溜め息をついた。
「お前、僕の妹を散々いじめてただろ?」
「えっ……?妹様を、ですか?」
キョトンとする私に、ついに堪忍袋の緒が切れたのか、エドガー様は私の頬に平手打ちをした。
パンッと叩かれた音が鳴り響き、私は叩かれた頬を押さえエドガー様を見た。
「しらばっくれるのもいい加減にしろ!自分が何をしたのか分かっているのか!?エリザベスはあれ以来、食事もせずずっと部屋に引きこもっている!シンデレラ、お前がエリザベスの心を殺したんだぞ!?それなのに何だ!?その態度は!」
えっ……えぇ!?
本当に何なの!?
もしかしてこの世界のシンデレラって俗に言う悪役令嬢だったとか!?
いったいなにをしたの!?シンデレラ〜!
「シンデレラ、これが最後だ。エリザベスにしたことを深く反省し、もう二度とエリザベスをいじめないと今ここで誓え。でなければ、婚約破棄だ!」
えぇ〜!?そう言われてもな〜……
でも、もしエドガー様の言う事が本当なら、一応謝ったほうがいいわよね?
私の優雅なシンデレラライフの為にも、謝っておこう。
「ごめんなさい。もう二度とエリザベス様に酷いことはしません。エリザベス様にも直接会って謝ります」
そう頭を下げて言うと、エドガー様は「ふっ」と満足そうに鼻で笑った。
「ようやく反省したか。だが、エリザベスにはまだ会わせられんし、まだ城に戻る事も許さん。だが、今度の夜会には出る事を許そう。一応お前は僕の婚約者だからな」
「はい」
そしてエドガー様はそれだけを言うと、城へお帰りになられた。
私は屋根裏部屋に戻り、窓を開けて青い空を見上げる。
夜会か〜
夜会ってあれよね?舞踏会よね?
ってことは、私エドガー様にエスコトートされるってことよね?
なんだか嫌だなぁ〜。エドガー様顔はいいんだけど性格キツそうだし……
もう婚約破棄されてもいいかも。
「はぁ〜……シンデレラって色々面倒な事もあるのね」