表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/41

サングラスの女

 僕はもうすぐ社会人一年生。


 希望に溢れる、と言いたいところだが、前途多難だ。


 入社予定の会社が危ないのだ。


 不渡り手形を出してしまったらしい。


 多分倒産するだろうという話。


 どうしたらいいのだろう? やっと入社が決まったのに。


 考えてみれば、年度末になって社員を採用するって、ちょっと変だとは思ったのだが。


 ああ。お先真っ暗だ。


 落ち込んで駅へと歩く。


 ガード下を進んで行くと、途中一人の髪の長いロングコートの女性が立っていた。


 薄暗いガード下で、サングラスをかけたまま、本を読んでいる。


 妙な人だ。しかも、口を半開きにしている。


 危ない人かも知れない。


 季節の変わり目には多いんだよな。


 僕は目を合わさないようにして、その人の前を通り過ぎようとした。


 バサッと音がして、僕の前に女性が本を落とした。


「あ」


 反射的に僕は腰を落とし、手を伸ばして本を拾った。


「どうぞ」


 僕は怖かったが、つい拾ってしまったので、本を女性に差し出した。


「ありがとう」


 女性は礼を言ってくれた。それほどおかしな人ではないのかも知れない。


 あれ? 何か不自然だ。


 彼女は言葉を発したのに、口は半開きのままだった。


 腹話術師か? 一瞬そう思った。


 でも次の瞬間、僕はとんでもない人に関わったと気づいた。


「どうもありがとう。お礼にお茶でもご馳走しますわ」


 そう言って女性はサングラスを外した。


 そこに目はなく、口が二つあった。


 そして、半開きの口だと思っていたのが、目だったのだ。


「うわああああああああ!」


 僕は絶叫し、そこから一目散に逃げ出した。


 彼女は一体何者? 


 いや、そんな事はどうでもいい。


 とにかく逃げなくては!


 僕は必死に走った。


「きゃあああ!」

 

 僕を見た女性が叫び、逃げ出した。


 いや、その人ばかりでなく、その他の全ての人達が僕を見て逃げて行く。 


 ふと気づくと、その人達は全員、目の場所に口があり、口の場所に目があった。


 どういう事なんだ? 異世界?


 ここでは僕が恐ろしい顔の化け物なのか?


「おまわりさん、あそこです! あそこに宇宙人が!」


 僕はいつの間にか警察に包囲されていた。


 もうどうでもいい。


 僕は脱力し、その場にしゃがんだ。


 そして思った。


 この街には、就職先、あるかなあ、と。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ