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残業の女

 駒込律子は税理士事務所に勤務する事務員だ。


 しかし、彼女は商業高校も出ていないし、簿記の専門学校にも通った経験がない。


 全く無知識のまま、面接を受け、入所してしまった。


 年明けから三月中旬まで、税理士事務所はまさしく「猫の手も借りたい」忙しさになる。


 そのせいで、ほとんどコピー要員として、律子は採用された。


 年末調整業務から始まり、その内容は過酷だった。


 給与支払報告書? 総括表? 合計表?


 法定調書に、償却資産申告書。何が何やらさっぱりわからない。


 税理士事務所って、確定申告の時凄く忙しいんだよ、という知識のみだったので、律子は根を上げかけていた。


 連日勤務時間は長くなり、帰宅するのは夜中。


 しかも、週休二日制のはずなのに、皆自主的に出勤するので、律子も休めない。


「疲れた……」


 そんな言葉を家で呟くと、


「仕事があるだけでもありがたいと思え!」


と父親に叱られた。それはそうなんだけどね。


 律子にも、そんな事くらいわかっている。


 ようやく年末調整の処理が終わった。


 一息つける。そう思った。


 ところが、次は確定申告というメインイベントが待っていたのだった。


 帰宅時間は更に遅くなり、年の離れた弟の顔をもう何日も見ていない。


 姉の存在を忘れられてしまうかも、と本気で心配する律子。


 一段落したら、辞めよう。そう思い始めた。




 そして、あの地獄のような日々が遂に終了した。


 申告書をまとめて送付し、業務完了。


「駒込さん」


 同僚の田端充が声をかけて来た。ちょっとだけいいかな、と思っている男子だ。


「打ち上げするんだけど、一緒に行かない?」


「うん」


 笑顔で応じる律子。


 もう少し、頑張ってみるか。


 呆気なく前言撤回だった。

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