表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/38

15嫌な予感

 美耶の結婚式はあっという間にやってきた。4月のGWゴールデンウィークの最初の土曜で、当日は雲一つない快晴で式を行うには絶好の天気だった。


紅葉とは駅で待ち合わせて電車で一緒に行くということになり、楓子が駅の構内で待ち合わせの10分ほど前から待っていると、すぐに弟がやってきた。


「おはよう。今日はずいぶんと気合が入っているね」

「当たり前でしょ。今日は親友のハレの日なんだから。招待されたからには、恥をかかない程度に着飾るのは当然」


「そういうもんかね」

「紅葉だって髪型に気合が入っているでしょ。パーマなんて今までかけたことなんてなかったのに」


 楓子と紅葉は結婚式に参加するということで、化粧や髪型に気を遣っていた。二人は結婚式に招待されるのは今回が初めてだった。彼らの周りで結婚式を挙げる知り合いはまだいなかったので、結婚式のための準備を張り切っていた。


 楓子はこの日のために紺色のワンピースを購入し、靴もヒールのあるシルバーのパンプスをそろえた。首元には母親から借りた真珠のネックレスを付けていた。明るい茶髪に染めた髪はショートにしていたため、美容院には行かずに普段はしないアイロンをしてセットした。


 紅葉は黒のスーツをビシッと決めていた。靴も汚れのない革靴で、髪型は黒髪にパーマをかけていてオシャレにしていた。



 電車で式場の最寄り駅までは一時間ほどだった。GW中ということもあり、電車内は混みあっていたが、座席に座れないほどではなかった。楓子と紅葉が電車に乗った時にちょうど席がふたつ空いたので、二人横に並んで座ることができた。


 結婚式場までは、電車とバスに乗る必要がある。電車を降りて改札口を抜けて、駅の外にあるバス停まで歩いていると、声を掛けられた。


 二人はよく似ていたが、男女の姉弟のため、二人で一緒にいると恋人同士に間違えられることがあった。


「すいません。カップルの方を取材しているのですが」

「そこのお二人さん。カップル料金で料理を提供できるのでぜひ」


 今日は特に楓子と弟の紅葉が恋人同士だと間違えられ、声を掛けられることが多かった。しかし、親友の結婚式に向かう楓子たちは彼らの声に反応することなく、速足でバス停まで歩いていく。


 バスに乗ってようやく二人は安堵の溜息を吐く。バスの車内も混雑していたが、こちらも奇跡的に二人乗りの席が空いていたので、楓子と紅葉は並んで座った。


「なんか、やけに俺たちが恋人同士だと間違えられたね」

「この格好が目立つからかな」


(なんか嫌な予感がする)


 結婚式場が近づくにつれて、楓子は親友の結婚式に来たことを後悔し始めていた。そもそも、本当に親友は結婚するのだろうか。弟と二人で参加するから何も起こらないと安心していたが、それこそが美耶の罠なのかもしれない。


「これもまた、俺たちが先輩にやられるフラグだったらやばいよな」

「不吉なこと言わないで。GWで店も頑張ってお客さんを取り入れたいから、いつもよりたくさん客引きを増やしているかもしれないでしょ」


 ぼそりとつぶやいた紅葉の言葉に同意したくはない。同意したくはないので、明るい口調で弟の言葉を否定する。紅葉の顔は不安そうで、隣の席に座る楓子も不安になってくる。


「もしかして、俺と姉ちゃんの両方を……」


 せっかく楓子が場の空気を緩ませようとしたのに、弟はさらに深刻な表情でひとりごとをつぶやく。


 楓子は無視してバスから外の景色をぼうっと眺める。相変わらず雲一つない快晴で、天気予報でも伝えていたが、今日の降水確率はゼロで一日晴れという予報は当たっていた。しかし、楓子たち姉弟の心は晴れとは反対にどんよりと曇っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ