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学園一のイケメン王子様な美少女が、俺の前ではとにかくカワイイ  作者: 日之影ソラ
二年生一学期

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22/27

優しい友情

「え、夢原さんがタクトに?」

「そうなんだ。私のこと、というより私に相談されたことを、白濵君に相談してる感じかな?」

「んん? どういうこと?」


 首を傾げるサキに、夢原さんはニコリと微笑んで答える。


「時々なんだけどね? 私の所に相談事を持ってくる子たちがいるんだ。私に出来ることなら協力したり、話を聞いてあげたりしてるんだよ」

「へぇ~ 夢原さんそんなことしてんのか。さっすがー」

「まぁ、夢原さんくらい有名人ならそういうこともあるよね」

「うん。それで大体は同性からの相談なんだけど、偶に異性の相談事も来るんだ。私もなんでも知ってるわけじゃないから、特に異性のことになると力になれなくて……」


 夢原さんは申し訳なさそうに視線を下げる。

 ここでようやく、俺にも彼女の意図が伝わった。

 彼女が視線を下げて間を空けたのは、次は俺の番だぞという意味だ。


「そこでちょうど相談に乗ってもらってた俺が、夢原さんの所に来てる相談事を一緒に考えてたってわけだ。同じ男性ならわかることもあるだろうって」

 

 こんなんでどうでしょう?


 その無言の問いに答えるように、夢原さんが続く。


「うん。でも他の人からの相談事で内容もデリケートだったからね。さすがに人が多い所では話せなくて……それに相手は私に相談してきたことだから、別の人に聞かれてるっていうのは、嫌だと思われそうだよね」

「それはまぁ、確かにあたしも嫌だね」

「うん。だから申し訳ないけどこっそり相談してたんだ。白濵君は口も堅そうだし、話しても大丈夫かなと思ってね」

「あーそれは合ってるな! こいつは誰にも話さねーよ。自分のことも話さねーし。つーかそんな話できる相手とかオレかサキちゃんくらいしかいねーしな」


 友達が少ないですよって言ってるよなそれ。

 リョウスケは素で失礼なことを言う。

 事実だから否定できないのが一番腹が立つな。

 でもこれで、サキも多少は納得してくれそうか?

 チラッとサキに視線を向けると、彼女はまだ悩んでいるように見える。


「そういう……ことならまぁ、なくはないかな」

「二人に黙ってたのは謝るよ。けど俺以外の人も関わってることだから言えなかったんだ。あと、俺みたいなのが夢原さんとこうして会ってるなんて知られたらどうなる? お前が言ってた夢原さんのファンクラブが黙ってないだろ?」

「うわ、それはぞっとするな」

「だろ?」

「え? ファンクラブ? そんなのあるの?」


 夢原さん本人が知らなかったのかよ!

 まさかの事実に突っ込みそうになったが、今それをやると話がまとまらない。

 我慢して、最後の一手に入ろう。


「相談内容っていうのも、なんとなく察すると思うけど男女のあれだ。他に話せないだろ?」

「なるほどな」

「納得してくれたか?」

「まぁな。お前に相談した所で無意味だとは思うけど」


 こいつ……。

 あとで一発殴ってやろうか。


「サキは? まだ納得できない?」

「……いや、大丈夫わかった。そういう話ならあたしらがとやかく言うことじゃないし。ごめんタクト、変に探って。夢原さんもごめんなさい」


 サキは深々と頭を下げた。


「謝らないで響谷さん。私たちも隠れて相談してたから良くなかったよ。二人とも、白濵君を心配してくれたみたいだし、私も配慮が足らなかったね」

「そうだぜー。オレらも別に悪いことはしてねーからな!」


 リョウスケお前はそっち側だろ……。

 ここにきてもバカっぽい発言、それもまたリョウスケらしいか。


「――ただなぁ、納得はしたけど最後に一個いいか?」

「なんだよ」


 リョウスケにしては珍しく真剣な表情をする。


「お前、本当はただ断れねーから付き合ってるだけじゃねーよな? 頼まれて断れねー状況だったとか、嫌々やってんじゃねーよな?」

「おい、それは――」

「わーってるよ。夢原さんに失礼だってことくらいな。けど、オレはお前の性格を知ってる。頼まれたら断らない。どんだけ面倒でも引き受けちまう。しかも相手は学園の人気者だろ? 相談の内容だって本当はでっちあげで、もっと手に負えないもんやらされてんじゃねーよな? だとしたらオレは――」

「違う!」


 リョウスケが続きを話すより早く、俺の口は否定していた。

 自分でもびっくりするくらい力強く、ハッキリと。

 リョウスケが俺を心配してくれている意味は伝わった。

 だけど、それだけは違うんだ。


「俺がここにいるのは俺の意思だよ。強制されたわけでも、断れないからでもない。俺がそうしたいから。俺が自分で選んだんだ」

「白濵君……」


 心配が理由でも、夢原さんとの時間を否定されたくない。

 そう思ったら言葉に、顔に力が入ってしまった。

 でもお陰で、リョウスケには伝わってくれたみたいだ。


「そうかよ。んならオレの出る幕じゃねーな」


 そう言って清々しく微笑む。


「それじゃオレたちは帰るぞ」

「え、ちょっ、なんでもう帰るのよ!」

「オレらが知りたいことは聞けたろ? オレらが一緒にいたら相談事ができねーじゃん」

「それは……そうだね」

「そゆこと。んじゃ二人ともまた明日な」

「あーでもまだ聞きたいことが! ってお前! どこ触ってんだ!」

「ぐへお!」


 最後の最後で二人らしい光景を見せられて、ベルの音が消えて静かになる。


「ごめんね夢原さん。俺のせいで色々と」

「ううん大丈夫。二人とも良い人だね」

「うん。俺には勿体ない……友達だ」

「そうだね。優しいお友達だよ。羨ましくなっちゃう」


 夢原さんにそう言ってもらえる。

 そんな友達が俺にもいることが、心から誇らしかった。


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