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学園一のイケメン王子様な美少女が、俺の前ではとにかくカワイイ  作者: 日之影ソラ
二年生一学期

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怪しい二人③

「お待たせ夢原さん」

「いらっしゃい白濵君。今日はいつもより遅かったね」

「ちょっとリョウスケたちに捕まってさ」

「あー萩原君か。いつも仲良しだよね」

「中学からの腐れ縁ってだけだよ」


 軽く会話を交わしながら俺も席に座った。

 夢原さんの手元は空いている。

 俺が来るまで注文も待っていてくれたみたいだ。


「注文するけどいつもので良いよね?」

「うん」


 それで通じる仲っていうのも、むず痒くて悪くないな。

 この特別な感覚を味わえる放課後はやっぱり良い。

 ただ、遊びに誘ってくれたリョウスケには悪いことをしたと罪悪感はある。

 今度、偶にはこっちから誘ってみる……か?

 きっと驚くだろうな。

 なんて、注文したコーヒーが届き、手を付けようとした時だった。


 カランカラン。


 カフェの扉が開閉する音が響いたのは。

 この時間は普段、俺と夢原さん以外お客さんはいない。

 来ても本当に珍しい。

 特に夢原さんの向いている方向的に、出入り口に目が行きやすかった。

 だから仕方がないだろう。

 気づいた時にはもう手遅れだったんだ。


「「――あ」」


 目が合ったのは俺とリョウスケだった。

 声が合ったのは俺とサキだ。

 二人がここへ来たことに驚いて、一瞬頭がフリーズする。


 ――なんで?

 どうして二人がここにいるんだ!?


 フリーズから回復した俺の脳内では、眼前に起こった問題を解析し始める。


「え、ちょっ、白濵君! 二人にここ教えちゃったの?」

「違う違う俺じゃない! 夢原さんのことは誰にも話してないし、今日だって場所も教えてない」

「じゃ、じゃあなんで一緒にいるの?」

「それが俺が一番知りたいよ」


 考えても疑問しか浮かばない。

 場所は教えていないし、そもそもこんなカフェを二人が知っているか?

 リョウスケは絶対ないとして、サキ……も家の方向違いしないだろ。

 それに偶然二人が同じ場所に来るのも不自然じゃないか?

 となると、この場で考えられる可能性は……。


「あいつら、俺の後をつけてきたのか?」

「え、えぇ!?」

「――タクト」


 耳に届く声。

 考えに集中して気付かなかったけど、二人はもうすぐ目の前に来ていた。

 俺の名前を呼んだのは……。


「サキ……リョウスケも、お前ら俺の後をつけてきたんだな」

「そう」

「なんでそんなこと?」

「……色々聞きたいのはこっちなんだけどね」


 そう言ってため息をつく。

 チラッと夢原さんのほうに視線を向けて、サキはすぐ俺に戻す。


「最近、タクトが変に放課後何かしてるみたいだったからさ。心配になって見に来たんだよ」

「心配って、何が」

「――変なことに巻き込まれてねーかだ! お前の性格知ってる身としちゃーありえないことでもなかったからな。オレもまぁまぁ心配してたんだぜ」

「リョウスケ……」


 そういうことか。

 二人の反応、表情を見ればふざけていないことはわかる。

 サキは特に真剣で、心配してくれたのも嘘じゃないな。

 

「だからって尾行しなくても……」

「いやーそこはほら! お前は聞いても答えねーだろうと思ってな」

「まぁ……正解だよ」


 尋ねられても絶対に答えなかったと思う。

 仮に変なことに巻き込まれていたとしても……俺は言わないな。

 二人を巻き込みたくないから。

 それで嫌われたくないから。


「んで、来てみたらまさかの人と一緒とはな!」

「ホントだよ。そこが一番ビックリだし反応に困る」


 二人の視線が揃って夢原さんに向けられる。

 どうして一緒にいる?

 そんな疑問の声が、言葉として発さなくても伝わってくるようだ。


「あ、えっと……」

「でー? お前の放課後の予定って夢原さんと会ってたことなんだなぁ」

「ま、まぁそう……かな?」

「いやー驚いたな~ その可能性も考えてたけどさ~ まっさかお前の彼女が夢原さんだったとは――」


 夢原さんの顔がぶわっと赤くなったのに気づく。

 さすがに堂々と言われたら、夢原さんでも恥ずかしいだろう。


「そ、それは違う!」


 話が盛り上がる前に、俺は前のめりで否定する。

 そういう誤解は覚悟していたけど、俺とそう見られることは夢原さんにとって迷惑なはずだ。

 誤解が深くなる前に否定しておかなくちゃ。


「俺と夢原さんはそういう関係じゃないよ」

「は? んじゃなんでこそこそ会ってるんだよ」

「それはあれだ。夢原さんとは、互いに相談に乗り合ってたんだよ」

「相談? お前が夢原さんにか?」


 リョウスケの目は俺を疑っている。

 普段の俺を知っていればそういう反応が正しいな。

 しかも咄嗟に出た嘘だ。

 夢原さんとは何の示し合わせもしていない。

 それでもつき通すしかないぞ。


「二年になっただろ? そろそろ俺も進路とかちょっとは考えなきゃーって思って。夢原さんは成績もいいし、偶然にも隣の席になれたから聞いてみたんだ。ね? 夢原さん」

「そうだよ。少し前に相談されたんだ」


 夢原さんは俺の意図を察して合わせてくれている。

 態度も学園での王子様な雰囲気を取り戻し、動揺の色も見せない。

 さすが夢原さんだ。


「それだけ?」

「え?」


 ただ今のやり取りだけじゃ納得はしてもらえなかったらしい。

 サキはつっかかってくる。


「ただの進路相談なら学園でも良いし、わざわざこんな場所で隠れてすることじゃないよね? 他にあるんじゃないのかな?」


 俺と夢原さんはほんのわずかに身体をビクッと震わせた。

 バカなリョウスケはともかく、勘の鋭いサキは簡単には納得してくれないか。

 何か有効な次の言い訳を……。

 と、俺が思考を回らせるより早く、夢原さんが口を開く。


「――実は、私からも白濵君に相談にしてたんだ」

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