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学園一のイケメン王子様な美少女が、俺の前ではとにかくカワイイ  作者: 日之影ソラ
二年生一学期

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18/27

少し変わった?

 ゴールデンウィークも終わり、数日が経過した。

 俺たちは変わらぬ日常の中、学園での日々を送る。


「かぁ~ やっと今日で補習が終わるぅー」

「お疲れ様。まぁ自業自得だけど」

「わかってるよそんなこと! でも休みだぜ? 普通遊ぶだろ?」

「遊んでも良いけど宿題は忘れれるなってことだ」

「正論カウンターやめて!」


 ゴールデンウィークの宿題を全部忘れてきたリョウスケは、三日間放課後に補習を受けることになった。

 今日がその最終日らしい。

 そんなに嫌ならちょっとでも宿題をしておけばよかったのに。

 今さら後の祭りだけどさ。


「とにかく地獄も今日で終わりだ! 明日から遊べる! 遊ぶぞこら!」

「ちょっ、テンション高いな。言ってもまだ今日が残ってるんだろ?」

「今日で終わりだってわかっちまえば何でもねーよ! つーわけで明日の放課後なんだけどさ? ぱーっと遊びに行こうぜ! 補習頑張った会しようぜ!」

「補習受けたのはお前だけだけどな?」


 なんならクラスでもリョウスケ一人だ。

 だから余計に怒られたんだろう。


「細かいことは気にすんなよ! お、サキちゃんもどうだ?」

「ん? 何が? っていうかちゃん付けキモイって」

「良いじゃん良いじゃん! 明日の放課後遊びに行こうぜって話!」

「あたしは部活あるからムリ」

「そうだったー……」


 盛大にがっかりするリョウスケだけど、サキが部活で忙しいことは知ってたはずだろ?

 それも忘れてたんだとしたら、宿題を全部やってこなかったのも記憶力の問題なんじゃ……。


「じゃーしゃーない。明日は野郎二人で乳繰り合いますか」

「うわキモッ」

「目がマジだ! 酷いよサキちゃん!」

「いや今のは俺も引くよ。というか、そもそも俺は行くって言ってないけど?」

「なっ……」

 

 リョウスケはオーバー過ぎる驚きを見せる。

 まるでお化けでも見たような顔だ。

 そこまで驚くことか?


「なんだよぉ~ 予定でもあんのかぁ?」

「うーん、たぶん」

「たぶん?」

「今の所はわからないけど、たぶん入るかもしれないってこと。まぁ普通に暇になるかもしれないから、当日また……なんて顔してんだよ」


 話の途中、気づけばリョウスケはこの世の終わりみたいな顔をしていた。

 隣にいるサキも少し驚いているように見える。


「タ、タクトが誘いを断った……」

「いや断ることももあるだろ?」

「あったけどなかったぞ! 予定があるかもーみたいな曖昧な理由で断ること! どうしちまったんだタクト!」

「おっ、なんだって何だ? 揺らすなー!」


 動転したリョウスケが俺の肩を掴んで前後に揺らす。

 どうしたはこっちのセリフだ。


「俺が誘いを断ることはそんなに不自然か?」

「別に不自然じゃないけどさ。珍しいとはあたしも思うよ」

「サキまで……」

「だってタクトって、お願いされたら断らないし。余程の理由でもない限り、誘いも断ってる所見たことないよ? 今みたいなケースなら、わかったの一言だったと思うしさ」


 リョウスケとは違いサキは冷静に、俺の行動を分析するように説明した。

 そう言われると、確かにそうだと思ってしまう。

 実際、以前までの俺なら断らなかった。

 特に曖昧な理由で断ったら、相手に嫌な思いをさせてしまう気がして。


「なんかさ? 気のせいかなって思ってたけど、最近タクト少し変わったよね」

「え、そう?」

「うん。前は頼まれたら断らない、手を貸そうかって言っても、必要ないって断る。なんていうか機械みたいだった」

「機械……」


 絶妙な例え方だな。

 でもまぁ、その通りではある。


「でも最近は時々、頼まれても断ること増えたよね? 放課後の用事断れなかった時も、普段なら一人でやっちゃうのに、あたしらに手伝い頼んできたこともあった」

「え、そんなのあったの!?」

「リョウスケは補習だったでしょ」

「うぅ、そうだったぜぇ……」


 つい二日前の話だな。

 夢原さんのと約束があったけど、どうしても変わってほしいと頼まれ断れなくて。

 仕方ないからサキにも手伝ってもらった。


「タクトっていつも一線引いてるじゃん? だから正直、友達って感じも薄かったんだよね」

「その本音は酷いな……」

「だって事実だし。でも頼ってくれると良いよね。友達って感じがする」

「そんなものなのか」

「そんなもんだよ」


 サキの言う友達感、その全てがわかるわけじゃない。

 ただ頼られたり相談されたり、そういうことが面倒じゃなくて、嬉しいと思う気持ちは理解できた。

 だとしたら本当に俺は、友達甲斐のない奴だったんだな。


「うおーそれでもオレは悲しいぞ! 昔のお前ならオレの誘いを断ったりしなかったのに!」

「そこまでじゃないだろ?」

「リョウスケきもい」


 サキのストレートな悪口がリョウスケに刺さる。

 それでもめげずに彼は叫ぶ。


「ぐおおおおおおおおお! オレの知っているタクトはどこにいっちまったんだあああああああああ!」

「悪いなリョウスケ、そいつはもう死んだ」

「な、なんだと? そ、蘇生! 蘇生の呪文を唱えれば!」

「それも無駄だ。もう新しい俺として生まれ変わってる」

「ち、ちくしょうが! 天よオレに時をかける力をおおおおおおおおおおおおおお!」

「その力でまず補習を回避しろよ」


 やかましく荒れるリョウスケを置いて、俺は一人で教室を逃げ出す。

 向かう先はいつものカフェだ。

 少し出るのが遅れたし、今日は彼女のほうが先に付いているだろう。

 俺は駆け足で駅のホームを抜け、カフェへ向かう。


 サキに言われたこと。

 少し変わったと……そう思ってもらえたなら。

 その理由はきっと――


「あっ、白濵君遅いよー」

「おまたせ! 夢原さん」

 

 彼女との出会いがあったからだと思う。


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