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6話 八月終わりの頃でした
「鳥さん鳥さん」
あかい実がないな
「わからないかな。鳥さん鳥さん」
百姓がいないぞ
「通じてないか。やっぱりお姉ちゃんじゃないとダメか」
いないとは百姓はだめだな
「お姉ちゃんね、死んじゃったんだ」
鳥はいるぞ
「最後の言葉が、『鳥さんにサクランボ』だってさ。何言ってるんだろうね」
あかい実がないな
「お姉ちゃんが言ってたから、この木は鳥さんの木だよ。ハウスはかけないから」
百姓がいないぞ
「ねえ聞いてる?バカ鳥さん、バカ鳥さん」
つつきたくなったぞ 百姓はどこだ
「バカ鳥さん、バカ鳥!」
百姓 百姓
「お姉ちゃんをつつきに行ってあげてよ!」
なんだかこわいぞ 百姓 たすけて
「あ、ごめん……」
百姓 百姓
「もう行くね。来年もサクランボ食べにきてね」
百姓 百姓