異世界から召喚されたという勇者とやらが魔王を倒した褒美として私にハーレム要員とやらの一人となれ! と命令するので断ったらなんと婚約者の王太子殿下に婚約破棄されてしまいました件について
「お前、そうだな、もう一人ほしかったところだ!」
「はい?」
「お前、俺のハーレム要員の一人になれ、そうだな、悪役令嬢枠が空いている!」
「お断りしますわ」
私は勇者とやらが召喚され、そして仲間とともに魔王を倒して凱旋をしてきたので、婚約者の王太子殿下にパーティーに立ち会えといわれてここにいるだけですわ。
褒美の一つをお前にするといわれて、だれがはいと頷きますか? 普通あり得ませんわ。
「勇者殿、王女を一人ハーレム要員にされたのでは?」
「……もう一人くらいいいだろう」
「もう20人もつれていますが……」
「まだ足りないんだ!」
何と言いますか子供のような人でした。
年齢は22歳と聞きましたが、とても見えませんわ。
魔王が封印から目覚めて5年、そして勇者が魔王を倒すために召喚されて3年、魔王を倒していただいたのは感謝しますが、この人、あまり評判がよろしくないお人でした。
だからパーティーに参加は嫌でしたのよ。
お仲間の魔法使いや僧侶たちが止めに入っています。
王女様は婚約者がいないし、勇者様のご褒美とやらに陛下はするようだったので問題ないでしょうが。
私、王太子殿下の婚約者をしてますのよ? 普通あり得ませんわ。
「ハーレムの一人に絶対にするんだ!」
エルフに獣人、それに若い女の子ばかり集めているようですが……下は12から上は20歳くらいまで。
私は収集物じゃありませんわよ。
20人以上いるのにまだ欲しいって普通じゃありませんわ。
「……ルーリ、勇者殿がどうしてもと仰って」
「はあ?」
「婚約を破棄してくれ、そして勇者殿のハーレムに入ってくれ!」
「お断りしますわ!」
あれから一日たち、私は殿下に呼び出され、勇者のハーレムに入れと命令されました。
絶対に嫌ですといったら、命令だときましたわ。
……従えるわけもありませんわ。私はわかりましたと従うふりをして、逃亡しましたの。
だってハーレムってハーレムってあり得ませんわ。あの男、ずっと私の胸やお尻ばかり見てましたの、いやらしいあの目……。
「えっと、それでどうしてこんなところにこられたので?」
「あなた、私の従兄ですわよね! かくまってくださいまし!」
私は隣国の城に駆け込みました、私の母は実は隣国の王女、私は今の王太子の従姉でもあったのです。
母は側妃の娘だったので、正妃の嫌がらせで隣国に嫁がされたのですわ。
「いやそんなこといわれましても、困ります。ルーリ姉さま」
「かくまいなさい!」
私は必死に従弟に縋り付きます。いやだってこの人くらいしかかくまってくれそうな人物が思い浮かびませんでしたのよ。
私は16歳、従弟はまだ13才でありましたが……。
「うーん、ルーリ姉さま、勇者様に逆らうのは僕でも……」
「う、ううう、ハーレムの一人なんて嫌ですわ。21人目のハーレム要員にするなんていいやがるのですわ!」
「ハーレムとは……」
「私私、あんなのに処女をささ……」
「わかりました、わかりましたから!」
従弟は気が弱い、それに身内にやさしい、私、切羽詰まっておりましたの。だからここにくるしかなかったのですわ。
私はクリスにどうしてもどうしても嫌なのですと縋り付きます。
「一番いい方法としては、そうですねえ」
「どうしたらいいのですか!」
「いい方法があります」
にこっと笑うクリス、私はどんなことでもやりますと彼に縋り付きました。
しかしあの勇者、やりたい放題ですわ。かわいそうにハーレムとして連れてこられた子たちの中に奴隷契約を結ばされた子もいるそうですわ。
「……クリス、あの勇者を女性を餌に呼び出すなんて」
「心苦しいですが、あの勇者とやらは巨乳とやらを好むそうで、なんとか姉さまを説得しました」
クリスの姉、メリア様を説得したらしく、勇者の街宣を隣国王家でも祝いたいと、メリア様の名前で招待したらほいほいあの勇者きたそうです。
ああ、女好きにもほどがありますわ。
「なんとか魔法も仕込みましたよルーリ姉さま」
「成功しますかしら」
「させます」
舞踏会が開かれ、あの極悪勇者も参加しています。
私はカーテンの後ろからメリア様の胸を見て鼻をのばす勇者の情けない顔を見ていました。
「今です!」
クリスの掛け声とともに、魔法使いたちが勇者の周りを囲みました。
勇者が驚いた顔で見ています。魔法使いたちが呪文を唱え始め……。
「元の世界に!」
クリスが最後の呪文を唱えると、勇者がいやだ帰りたくない! と側にいた女性に縋り付きます。
白い光が床からあふれ出します。絨毯の下に陣を仕込んでいたのですわ。
「帰れ! お前のハーレムなどに入りたくなかったんだよ!」
縋り付かれたお胸が立派な剣士とみられるお姉さんが勇者を蹴り飛ばしました。
そして勇者は白い光とともに……元の世界へと帰されたのです。
「やりましたわね」
「召還の陣を何とか構築したんだ。そして元の世界へ帰したけど成功してよかったよ」
クリスは魔法の天才でした。その専門は召喚でした。
クリスの力添えで実は我が国は勇者召還を成しえたのですわ。
ハーレム要員の女性たちはやっとあれから解放されたと私たちに感謝を述べ、故郷に帰って行かれましたわ。
仲間のひとたちも褒美を受け取ったし帰るかといって散り散りに。
私は、帰ってこいとあのバカ殿下に言われましたが、隣国に今まだいます。
「ルーリ姉さま、僕、今度婚約者を決めるんだけど」
「はい?」
「姉さま、僕の婚約者になってくれない?」
「……はい喜んで!」
「ありがとう!」
この従弟とともに過ごすうちに私は弟のように思っていた彼を愛し始め、そして……。
私は彼と婚約し、末永く幸せに暮らしましたわ。
あ、あのバカ殿下、いまだに婚約者が決まらないそうです。
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