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すべての人の心に花を-45

 由起子は目を見開いてしのぶの顔を見つめた。しのぶは涙を溢れさせながら、由起子の顔を見つめて、頷いた。

「…だから、…だから、あたしは、逃げ出したの。逃げるしかなかったの…」

震える唇でしのぶは、はっきりと語った。しのぶの目はしっかりと由起子を見つめていた。由起子は、その目から、目を逸らすことはできなかった。そして、恐る恐る訊ねた。

「…誰から?」

「……お母さん」

しのぶは、ぽつりとそう言うと、涙をぼろぼろと溢れさせた。由起子はひっしとしのぶを抱き締め、そして二人を睨んだ。

「あんたたちは、畜生だ!」

由起子の罵声に矢島は立ち上がった。

「なに、でたらめ言ってやがる。そんな、そんなガキの言うこと信用するってのか!」

矢島は立ち上がると、慌ただしくしのぶに詰め寄った。矢島の手が、由起子の胸の中で身を竦めるしのぶの腕に掛かった瞬間、由起子の左手が矢島の頭を掴んだ。そして、絶叫とともに矢島は吊るし上げられた。立ち上がった由起子は左手一本で矢島を宙に浮かせた。矢島は必死に両手で由起子の手を退けようとしたが、無駄だった。全身を痙攣させると、まもなく、矢島は、失神してしまい、釣り上げられた魚のように、由起子の左手にぶら下がってしまった。

 どさりと矢島の体が床に落とされると、しのぶを胸に抱いたまま仁王立ちした由起子は靖江を睨みつけた。靖江は、脅えながら由起子を見上げていた。由起子は、威圧するでもなく、淡と、怒りを抑えながら、言った。

「あんたに、親の資格はないよ」

靖江は震えながら頷いた。

「あんたは、鬼畜だ。自分の産んだ子には、親という肩書で何をしてもいいと思ってるのか。この子だって、人間だ。意思もある、自由もある、生きる権利もある……、生きる希望だってある。希望を奪って、生きるプライドも奪い取ったあんたに、親を名乗る資格なんてない。しのぶを、あんたに返すわけにはいかない。あたしが、引き取る。あたしが、親代わりになってやる。あたしが、人間として育ててやる」

由起子は感極まって涙を流した。流しながらも、靖江を見下ろし続けた。


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