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すべての人の心に花を-37

 靖江は、矢島の手招きに合わせて、三人を招き入れようとした。しかし、矢島の姿を認めたしのぶは、突如、全身を硬直させて、そして、わなないて、叫んだ。

 ―――ぃゃ…いや、いやあぁぁ!

 その叫びが時間を止めた。誰もが、由起子すらも、しのぶを見つめたまま、硬直してしまった。しのぶは朝夢見にしがみついて、一歩も動こうとしなかった。靖江も、あまりのことに、身動きできなくなっていた。矢島も驚いて、笑みを失っていた。しのぶは、朝夢見にしがみついたまま、うずくまって、動けなくなった。

「ど、どうしたの…しのぶ」

靖江が近づこうとしたとき、由起子がそれを制した。靖江は由起子の顔を見つめた。由起子は、朝夢見の顔をじっと見つめて、外へ連れ出すように、促した。

 朝夢見としのぶが外に出ると、由起子は靖江と矢島に向き直り、静かに頭を下げた。

「今日のところは、これで失礼させて頂きます」

「ち、ちょっと、待ってよ。どうしたっていうのよ、一体。しのぶ、しのぶは、どうしたの?」

「どうしたのかは、あなたたちの方が、よくご存じじゃないですか?」

「そ、そんなこと言ったって」

靖江は慌てて矢島を見た。矢島は、ゆっくりと近づいてきて、そして靖江に目配せしながら言った。

「先生…なんだろ、あんた。人ンちの子を連れていって、失礼します、はないんじゃないの」

頭を下げていた由起子はゆっくりと、顔を上げ、そして、きっと睨んだ。その視線に矢島は怯んだ。

「ふ。じゃあ、あの子はどうして、あんなに、怯えてるのさ。只事じゃないわ。そうじゃない?」

「何が言いたいんだ」

「まさか。あたしに、何が言えると思うの。もっとも、あの子も言いたくはないんだろうけど」

「ナニィ?」

「今日は、帰ります。でも、これで、はっきりしました」

「何だ」

「少しは迷いがあったんですけど、もう、いいです。あの子は、あたしが引き取ります」

「何をォ?」

「ちょっと、待ってよ。あの子は、あたしの子よ。あたしの大事な子よ」

「大事?まぁ、そうかもしれないけど。ただ、あの子も、人間なんです。あの子にも、意思があるんです。あの子が、あんだけ嫌がってるのに、こんなとこに帰せる訳ないだろ!」

由起子の一喝に、二人は気押され黙ってしまった。由起子は居住まいを正しながら続けた。

「それでは、また、お伺いします。今日はこれで、失礼します」

深々と頭を下げて由起子は家を出た。


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