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すべての人の心に花を-36

由起子の言葉に靖江は不思議そうな顔を向けた。

「話って、何?」

しのぶは、身を竦めたまま、上目遣いに、靖江の様子を伺っている。靖江は、無垢な表情で、しのぶを見つめている。しのぶは、言葉を失ったかのように、ただ、黙っている。

「何?どうしたの、しのぶ?」

優しい語調に、しのぶは敏感に反応して身を硬くした。それを認めた由起子は、静かに、言った。

「しのぶさんは、独りで暮らしたいと言ってます」

「はい?」

「しのぶさんは、家と、いえ、あなたと、縁を切りたい、と言ってます」

「…まさか」

両手で顔を覆いながら、靖江は、悲壮な声を上げた。

「なんて…なんてことでしょう。ここまで、育ててきたのに…」

「あたしは、理由は知りません。ただ、家出したのも、それが、理由だったようです。今日、しのぶさんは、その話をするためにここに来たんです」

「まさか…、そんな、そんなこと…なにかの間違いよ。ね、しのぶ、間違いだと言って」

 靖江がしのぶの腕を掴もうとすると、またしてもしのぶは身を翻して逃げた。靖江は、空手を食って、やり場のない手をしのぶに差し出したまま、じっと、しのぶを見つめた。しのぶは、目線を合わせるでもなく、上目遣いで、靖江を見ながら、ぽつりと言った。

「本当よ」

靖江は、身を硬直させて、じっとしのぶの反応を見つめた。

「あたし、もう、家にいたくない。…独りで暮らしたい」

「そんなこと…できるわけないじゃない」

「そのことで、ご相談に伺ったんです」

由起子の言葉に呼応するように、靖江は振り向き、きっと睨んだ。

「あなたね。あなたが、しのぶをそそのかしたのね」

「いえ。全て、しのぶさんの意思です」

「いいわ。はっきりさせましょう。ここじゃなんですから、中へ入って下さい」

靖江は三人を招き入れた。しのぶは、ためらっていたが、朝夢見に促されて、足を踏み入れた。すると、奥の間から、矢島が姿を現した。一部始終を聞いていた様子で、にやにや笑いを浮かべながら、歓迎の言葉を投げかけた。

「まぁ、ようこそ。よく、しのぶちゃんを連れて帰って来てくれました。まぁ、ゆっくりとお話しましょう」


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