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すべての人の心に花を-28

 すると、奥の間から音がして扉が開くと男が現れた。薄笑いを浮かべた目つきの悪い男だった。

「まぁ、靖江、静かにしろ。こちらは、しのぶちゃんの世話をしてくれてるんだ。少しは情も入ってくるさ。なぁ、先生。あ、はじめまして、ですね。わたし、矢島と言います。まぁ、こいつとこういう仲でね、しのぶちゃんのことも心配だったんですが、あんまり、心配しすぎて、こいつが心労にでもなって倒れたりしたら大事なんで、あまり気を使わないようにさせてたんですよ。全然悪気はないし、心配してたのは本当ですよ」

 矢島は値踏みするかのように由起子を眺めていた。由起子は凛とした姿勢を崩さず、矢島を見据えた。しかし、矢島は意に介さず薄笑いを浮かべながら由起子を見ている。

「で、どこ、どこにいるの?しのぶは?」

 靖江の言葉に由起子は反応せずに静かに目を閉じた。そしてゆっくりと開いた瞳で靖江を見据えた。その仕草に靖江は少し怯み、口を噤んだ。由起子は、ゆっくりと、静かな声で、応えた。

「しのぶさんは、あたしのところにいます。でも、お教えする訳にはいきません」

その言葉を聞くと、靖江は激しく反応した。

「どうして。あたしの子よ。どうして、教えてくれないの」

激しく怒鳴り立てる靖江にも由起子は全く静かなままだった。じっと靖江を見据えたまま、言った。

「あなたは、親であることを放棄しています。だから、お教えできません」

「な、なに…」

靖江は口を噤んで、由起子を見つめた。由起子は凛としたまま、そして、少し、微笑みながら二人を見ていた。そして、静かに頭を下げた。

「どうも、お邪魔しました。これで、失礼させていただきます」

「ま、待ってよ。あんた、しのぶを返してよ」

「また、後日、訪問させていただきます。今日は、これで」

慌てふためく靖江は矢島をけしかけて由起子を引き止めさせようとした。しかし、矢島はにやにやしながら由起子を追って玄関に出ると、出て行こうとする由起子の背に向かって言った。

「悪いね、しのぶ…ちゃんの世話させて」

由起子はゆっくりと振り向きながら答えた。

「いえ、あたしは、構いませんから」

矢島は、ふふんと鼻を鳴らすように笑った。

「では、失礼いたします」

 由起子が深々と頭を下げて出ていった。靖江はそれを追おうとしたが、矢島はそれを引き止めた。

「なんで、あんた」

「いいんだ、放っておけ。それより、あの女、なんて言った?」

「え?」

「学校だよ、ミ…」

「緑ヶ丘…」

「あぁ、そうか、緑ヶ丘ね…。いいさ、そんだけ、わかってりゃ、なんとでもなるさ」

「あんた…、連れ戻してくれるの、しのぶを?」

「あぁ…、任しておきな」

矢島は部屋の奥に入るとスマホを手にした。靖江が見つめるその前で、矢島は目配せをしながら電話がつながるのを待っていた。


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