すべての人の心に花を-22
由起子が部屋に入ると、中は真っ暗だった。まだしのぶは帰っていないのかと思って、灯かりをつけると、ソファにしのぶはうっ伏していた。一瞬、由起子は驚いて、それでもそこにいるのがしのぶだとわかると、ほっとして近づいた。
「どうしたの、灯かりもつけないで」
由起子のその言葉にもしのぶは微動だにしなかった。そんなしのぶの気配を察して由起子は優しく囁いた。
「なにか、あったの?」
しのぶは俯いたまま何も答えなかった。由起子は、そう、と呟くと、そのまま床に腰を下ろした。
「ね、しのぶちゃん」
優しく諭すように由起子の声がしのぶに掛けられる。
「話してみて、ね」
そんな由起子の言葉に、呼応するように、しのぶは呟いた。
「あたし…、もう、やだ」
しのぶが応えたことに由起子はほっとして、そして、訊き返した。
「なに…が、あったの?」
「あたし、もう…学校行くの、やだ」
「どうして?みんなと仲良くなってきたんでしょ。なにか、嫌なことでもあったの?」
「……」
「いじめられたの?」
「……そんなじゃない」
「じゃあ、どうして?」
「だって…あたし、…生徒でもないのに、生徒のふりして学校の中うろうろしてる。ニセ学生だ。嘘つき学生だ。そんなの…やだ」
「でも、編入すれば、どうせ一緒よ」
「そんなの無理だ」
「どして?」
「あたし…、バカだもん。勉強なんて、できない。試験なんて、…受かりっこ…ない」
「だから、仮編入っていうのがあるの。仮編入して、とりあえず学校に通って、お勉強して、それから、正規の編入をすればいいのよ。わかる?」
由起子は、そっと、手を、しのぶの背に当て、撫でるように動かしながら、ゆっくりと説明を始めた。




