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すべての人の心に花を-15

 フライパンからは煙が上がっている。だが、由起子は何も起こっていないかのように、ただ、しのぶを抱き続けた。

 しのぶの嗚咽が次第に治まってくると、ゆっくりと由起子はしのぶを身から離し、

「もう、おさまった?」と訊ねた。しのぶは、瞼を押さえながら、こくりと頷いた。由起子はにっこりと微笑むと、

「あらあら、大変」と言いながら、焦げたフライパンを洗い始めた。しのぶは、横から覗き込むように、ごめんなさい、と神妙に言うと、

「大丈夫よ、このくらい」と軽く受け流してくれた。それも、しのぶには、心地よかった。

「さて、それじゃあ、代わりに、何を作ろうかな」

「あ…、…先生」

「なに?」

「あたしの、話、聞いてくれます?」

「うん、いいわよ。でも、先にご飯済ませましょ」

「でも、今、聞いて欲しいんです」

切迫したしのぶの表情に、由起子は微笑みながら静かに頷くと、しのぶをリビングに招き入れた。


 ソファに身を竦めながら座っているしのぶは頼りなげに、由起子の様子を伺っていた。由起子は、しのぶに向き合って座っていたが、テーブルを拭いたり物を動かしたりして、しのぶに目線を合わせなかった。しのぶの視線は、そんな由起子に集まっていった。そして、ついに堪えきれずに口を開いた。

「あ…たし、家出したくて、家出したんじゃないんです。…家にいたくないから、んん、家にいれないから、家を出たんです。そんな、悪い意味に取らないで。別に、不良なんかじゃない。わがまま、言ってるわけじゃない。家にいたくなかった…、いる所が…なかったの……」

「そう…」

由起子は言葉少なに頷いた。しのぶは、その由起子の表情を見て、ほっとした。

「信じてくれるの?」

「ん。いまは」

「いまは?」

「だって、家の人の言い分も聞かないと、正しい判断はできないものよ。でも、いまは、あなたの言うことを信じてあげる」

「…ん。いい…、それでも、いい。少しでも…信じてくれる…なら、聞いて欲しい」


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