すべての人の心に花を-13
しのぶは、いつになく淋しげな雰囲気の朝夢見に、つい見とれてしまっていた。憂いを帯びた朝夢見は、大人っぽくもあり、子供のようにも見えた。
「それで、今はここで独り暮らし」
「で…も、淋しくない?」
「まぁ、どうせ、お母さんもお父さんも死んじゃったし、今更、他に家族が欲しいなんて思わないわ」
「…そう」
「それに、お隣に、仙貴もいるし」
「センキ?」
「仙貴も、独り暮らしなの。三年生よ。あたしとおんなじで、由起子先生に、ここを紹介してもらったの」
「その人もアルバイトしてるの?」
「うん。新聞配達とか。仙貴は、孤児なの。施設にいたんだけど、逃げ出して、それで放浪しているのを、由起子先生が捕まえたってとこね」
しのぶは、言葉を失って感心していた。由起子が、まさか、そんなにも大勢の子供を拾っているとは思いもよらなかった。自分も?と思うと、自分が朝夢見のようになれるのかと思い、ドキドキしてきた。
「それで、ここ、あたしも、住めるのかな?」
しのぶは身を乗り出すように朝夢見に訊ねた。朝夢見は少し微笑んで、頷いた。しのぶはそれを見て花を咲かせたように笑みを見せた。しかし、朝夢見はゆっくりと応えた。
「しのぶちゃん、まだ、由起子先生に話してないこと沢山あるでしょ」
ドキリとしたしのぶが身を引くのを見て、朝夢見は続けた。
「言えないことはあるかもしれない。まだ、由起子先生のこと、信じてないかもしれない。でも、言わないままで、自分を隠したままで、由起子先生の前には立てないのよ。…あたし、何人も半殺しにした。売られたケンカってことになってるけどね、ホントはケンカが好きだったのよ。由起子先生も知ってる。怒られもしたわ。でも、最後には、受け入れてくれるの。由起子先生は、そんな人。だから、しのぶちゃん、信じて、ね。そうすれば」
「…ぅん」
「まだ、無理かもしれない。けど、わかる。きっと。由起子先生は、あたしたち…、んん、多分…淋しい想いをしている人のことは…わかってくれる、そういう先生…、んん、違う。先生、なんじゃないわ、人、なのよ」
知らず知らずのうちにしのぶは朝夢見の言葉に頷いていた。




