それなりに強い
初めて見たときはとても綺麗な神様かと思った。
この子なら俺を助けてくれるってそう思ったんだ。
時は進み時代は変わったらしい、昔々突然上々様が現れた。上々様は神様みたいなものだ、でも唯一の存在ではない結構いる。俺たちのことを下々の人間と呼ぶ、お気に入りには甘いなどちょっと人間臭いところもあるらしい。
何で曖昧かと言われても上々様には滅多な事がないと会えない、昔々の話だがらこれが本当かはわからないでも確かに上々様は存在している。
「ねえ、上の友の君今暇?ちょっと助けてくれない?」
助けてくれる確信はあった、彼女は上の友、美しく慈悲深く心が清らかな存在。困っている人を見捨てるわけない。
「誰だお前、何でここに居るんだ。話しかけるな不審者だろ、吹っ飛ばすぞ」
シンプルに口が悪いなびっくりした。これが乙女ゲームだったらおもしれー女って言って恋が始まっていたかもしれないが現実では始まらない。
「ちょっと待って!俺は不審者じゃない、実は相模の友達で君を紹介されて来てるんだ、声が出ないんだ頼む助けてくれ」
彼女は目をかっぴらいて僕を見ている、そしてこう言った。
「相模が私を友達に紹介するわけないだろ、あの野郎僕の友人に近づかないでくれたまえ!本当は信濃くんのことだって認めていないのだからとか言うやつだぞ、それも毎回」
相模お前嘘だろ、上の友に失礼すぎる。
「まあここにいるってことは相模の友達ってところは本当だろ。でも普通に話している声出てるよな、しかも名前も名乗らない何なんだお前、今のところお前は不審者だ。私が上の友って事は知っているんだろ?お前も名乗れ今の状態はフェアじゃない」
うん、結構はっきりと言うんだな。でも確かにその通りだ、よし。
「浜名郡!26歳!実力派ソロアイドルです!歌よし!バラエティよし、顔よし!CDは6枚出していてこの前リリースした恋と呼ぶにはまだ早いはオリコンランキング1位を取りました!よろしくお願いします!」
どうだ?!ここまで言ったらテレビを観ている人ならわかるはずだ。
「へーアイドルなんだすごいね、信濃なら知ってるかも」
リアクションは薄いが効果はあったらしい、そう言った後彼女のずっと開いていた目は閉じられた。
ドドドドバンッ!勢いよく扉が開いた。
「利根川!貴様いつまで控え室にこもっているんだ。毎度毎度会への参加をさぼっているが上々様の代弁者としての自覚はあるのか!」
まるで運動会で沢山の子供に指示を送る時に使う拡声機を使ったかのような大きな声が響いた。
「相模うるさい、毎回サボっているみたいに言わないでくれる?こっちには様々な事情があるんだけど」
本当に鬱陶しそうな顔で相模を見ている。
「どこがだ!サボっているだろう儀式には出るがその後が問題だ。上々様のお言葉を伝え感謝をする会にいつも出ていないだろう、議事録だけ提出し参加しないなど会を開催している意味がない。上の友が居てこその会だ、皆滅多にない機会のために貴様に決して安くない援助をしている!貴様は最低限の役割も果たしていない!」
相模の顔は真っ赤でリンゴみたいだ、いつもはもっと冷静なのにこんな相模見たことない。
「それは上の奴が信濃の話しかしないから話をしても意味ないし会に行っても金持ちが自分は特別選ばれた存在って言うアピールしかしてこないから嫌、あと今日はサボってるわけじゃないアンタの大切な友人の悩みを聞いてあげてたの、声が出ないんだとさ」
その時初めて相模がこっちを見た。真っ赤なリンゴから赤みが引いた。
「郡、何故ここに居るんだ。声の件は以前話をした通り僕のお抱えの優秀な医者を紹介すると言ったじゃないか」
そう実は実力派ソロアイドル浜名郡は2週間前から声が出ない、日常生活では支障はない何故なら出ない声は歌声のみ普通の人はそこまで問題ではない。だがアイドルとしては致命的だ。
「2週間前まで歌えた、歌えたんだ!どこの医者に行ってもストレスだ声が戻るまで休んだ方がいいと言われた!でも無理なんだ、休んでいる間に俺に似た新人がすぐ出てくる、休んで声がすぐ戻る保証はない俺の居場所はすぐなくなる!もう時間はない!」
「郡…」
「ものすごくシリアスな感じのところ悪いんだけどちょっと歌ってみてくんない?」