始まりの朝
初心者です。
「あなただけがこの世界を救うことができる、勇者様なのです。」
また、あの声、あの言葉、
最近同じ夢をよく見る。その夢は、誰かが同じ声、一字一句同じ内容で、俺に話しかけてくる。
なんなんだ。あの声は、俺が勇者? 馬鹿馬鹿しい第一、俺は運動神経が鈍いんだぞ。
心の中で、夢の内容に愚痴を言って、自分を自虐している俺を現実に引き戻したのは、鼻から体内に広がる空気のにおいだ。
そのにおいには、木々や、花の自然のにおいがする。
おかしい。俺は真っ先にそう思った。俺が寝ているだろう寝室には、花はおろか、観葉植物もないのだから。
驚きと戸惑いで、俺は両眼を開けた。
眩しい光が差し込んできて、瞬きを数回する。そして、ゆっくりと上体を起こす。
俺はそこにあった光景をみて、驚きのあまり数秒膠着していた。
なぜなら、そこは木々が生い茂り、緑あふれる場所だから。
俺は、まだ眠っている脳をフル稼働し、今の状況を整理することにした。今、俺はたぶんどこかの森か林にいる。この状況になった可能性は、まず、誰かに連れ去られた可能性だが、それは非現実的だし、俺は組織や国の秘密なんかしらないしこんな所に放置はしないだろう。
天変地異などの可能性だが、俺の体は、傷ひとつついていないし、どんな鈍感なやつでも自分が吹っ飛ばされたら、さすがに気づくだろう。
今、一番可能性があると思う1つの可能性があるのが、俺が住んでいた世界とは違う世界つまり、異世界にきてしまった可能性だ。1番非現実的で、アニメみたいな話だが、起きたら、森の中にいた。夢の中の声も俺を呼んでいたなら、筋が通る。何しても、この辺りの情報がないといけない。
そこまで考えて、俺は立ち上がった。
しばらく歩いて行くと、野原に出た。
「きゃぁ-」
甲高い悲鳴が聞こえた。声が上がった方に顔を向けると、10歳ぐらいの少女が驚愕の顔をしている。その視線の先には、いかにも異世界らしい獣がいる。見た目は、猪に近いが俺が見上げるほど大きい。
俺は、反射的に駆け出し獣の前に立ち塞がる。
そして、少女に
「早く逃げろ!!」
だが、少女は動こうとしない
「何してる、早く逃げろ」俺がそう言う終わった瞬間、
獣が俺めがけて突進してきた。俺は全力で右に左に走った。そのつど獣が突進してくるので、全部は避け切れない。
獣が疲れたのか、森の中に消えていくころには、俺は体のいたるところが傷ついており、満身創痍だった。
俺は、疲れと緊張から解放された安心感で、気絶した。
薄れつつある意識で、助けた女の子の声が聞こえた。