運命
『また同じ想いをしたいのか?』
神々から落とされた言葉。苦しむアリシアと重なった綾乃の姿。
運命。
時空を越えて作用するもの。
もしこれからこの世界で綾乃と再会したしてもアリシアと同じ運命を辿るっていうのか。
『己自身と向き合え』
試練が始める度に、最初に浮んで来る言葉が再び響く。
俺は、綾乃を守れない運命を受け入れられるのか……。
嫌だ。
嫌だ。
嫌だ。嫌だ。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
嫌だ。
……嫌だっ!!
どんなことにも耐えてみせる。耐えるんじゃなくて、受け入れて、前に向って進もうて決めたんだ。でも、これだけは受け入れられない。
ハルトの意識がある空間から色が薄くなっていく。
色が消え、何も動かない。
時が止まった。
ハルトはまた虚無の空間にいた。
ハルトに宿っていた情熱の赤が燃え尽きて消し炭の黒に成り果て、内側から吹きすさぶ灼熱の溶岩に溶かされるような苦しみと激痛に悶る。
ハルトの身体が痙攣して呼吸が止まった。
「ハルトっー」
遠くでマティアスが呼ぶ声が聞こえる。
でも、もうどうでもいい。そう思えば楽になれる。
思考が停止しかけているハルトの中で、どうでもいい、という言葉が木霊する。なぜかその言葉がてハルトの意識を辛うじ繋ぎ留めた。
どうでもいい、この言葉の意味を散々考えた気がするな。
なんでだったっけ?
もうどうでもいいか。
ハルトを取り巻く世界から光が消えてゆく。
何でこんなことしてるんだろ? 俺は何してたんだっけ……、何かを真剣に考えていて、どうでもいい、の意味を考えていたんだ。
何だっけか?
もう殆ど力の入らない手を伸ばすようにして朧げな記憶を手繰り寄せる。
俺は何に真剣になってたんだっけ?
試練。
そうだ、試練だ。
無限のマナを扱う加護受けて上級騎士になるための。
上級騎士。
ハルトはこれまでに出会ってきた人々の姿を少しづつ思い浮かべる。
オーブに、ベンヤミン隊長に、キザイア様、マティス、グレース。
グレース。
そういえばグレースと対決するために試練をやってたんだった。それにマティス。マティアスさん。
「ハルトっ! 気を確かに持てっ!」
マティアスの声を聞いたハルトの意識が試練の間に戻ってくる。
思い浮かべた上級騎士達の姿がハルトの周囲を飛ぶ。
体と意識の芯に、かすかに残っていた熱が再び燃え始め、ハルトは再び時間が動き出したことを感じた。思考が明瞭になりはじめる。
乗り越えてきた人達がいるんだ。あの人達は乗り越えたんだ。俺だって、俺だって乗り越えてみせる。
思い出した。
どうでもいい、っていうのは自分がどう思ってるかなんてどうでもいい、だった。
自分らしく、あるがままに、そのまま行けばいい。そう思ったんだ。
ノーラ、焚哉、ノエルにカッツェ、珠絵、ミック、ハロルドにアルフリードの姿がハルトの周囲を飛ぶものに加わる。記憶の時間を遡るように続いて現れてくるジュノーとマリエールにマーガレット。
父さん、母さん、マーガレット。
家族たちの姿が転移した直後に連れて行かれた天使の館の記憶にハルトを連れゆく。視界いっぱいに乳白色の天使の羽が広がる。純白の中に金色の雫が流れる。
ベルダンティア様は次元を越えて転移した俺を心配していろいろ教えてくれた。
女神アストレイア様も館に呼んでくれた。
あのとき聞いた話。
運命は時空を超える。
でも自分の選択で未来は変えられる。
そうだ未来は確定してないはずだ。
前の世界とこの世界は繋がっているけど全く一緒じゃない。起こることが前の世界とこの世界で前後することもあるかもしれないってアストレイア様は言ってた。
だったら……。
『ふん、戻ってきおったか』
ハルトの周りを取り巻いて飛ぶ神々の球体が再びハルトに近づく。いつの間にか仲間達や家族の姿は消えていた。神々の球体だけがハルトの周りをゆっくりと飛んでいる。
今のハルトはそのひとつひとつの中に神々の姿をはっきりと見て取ることが出来た。
濃い髭をたくわえた北欧の神。ギリシャ彫刻のような胸板の厚い巻き髪の男。いばらの冠を頭にのせた男。象の鼻を垂らした四本の手を持つ神。赤子を胸に抱いた金髪の美女。丸い盾と長い槍を持った戦乙女。三つの顔が後頭部でつながった男。足元に蛇を捕まえた鷲。タテガミを広げたライオン。鳥の頭と翼を広げた若者。貝殻の中に立つ裸婦。ハープを弾く女。後光を放射状に広げる長い黒髪の女。太陽を背負った男。
主神の入った大きな球体の周りには、妖精や人魚、九尾の狐、カラスや鶏、白い蛇や鳩が入った小さな球体が取り巻くように飛んでいる。
『何度でも、戻ってきますよ……こんなところで終われないですから』
そうさ、こんなところで終われない。なら、やることはひとつだ。
『終われない? 諦めの悪い子ね』
諦められるわけがない。諦めるどころか腹をくくって前に向かって行くだけだ。踏み出してやる。
『ええ、諦めは悪いですよ。この世界でも生きていかなきゃですから。のうのうとしてでも俺は行きます』
『のうのう、とな』
「どうあがいたって、どんな風に格好つけたって俺は俺でしかない。俺は俺の思うようにやってやる。上級騎士になるのだって、アバターシュを作って飛びたいのだって、誰かを守りたいと思うのだって、俺のエゴだ。間違うこともあるだろうし、出来ないことだって、フラフラと揺れ動くこともあるでしょうよ。それでも俺は俺のままでいくしかないから」
『俺が、俺が、か』
『そんな俺の中には仲間がいます。一緒に行くんだ。自分と同じものとして』
『ふん、面白い。良かろう』
これまでは別々の神々から聞こえてきていた声が一つのものとして響いた。
『ハルベルト・ブロック。お前に加護を与えよう』
急激に世界が明るくなる。ただひとつの白い塊になった。この世の全てを純白に染めた強い光が少しずつ和らいで、色を持ち始める。うねるように形をつくってゆく色が、物の形を取り始める。気がつくと加護と試練の間の景色が、現実のものになっていた。ハルトが自分の体を自覚できるようになったときにはマティアスに抱きかかえられていることに気がついた。
「おめでとう、ハルト」
「マティアスさん。いえ、師マティアス」
口元や目の下に血が流れるハルトを一旦立ち上がらせ、そっと椅子に座らせたマティアスがコップに水を入れて持ってくる。生命の潤いを飲み干したハルトは身体が急激に回復してくるのを感じた。
「危なかったな。ギリギリだった。正直焦ったぞ」
ハルトの顔に流れる血を、湿られたハンカチで吹きながらマティアスは言った。
「そんな感じはしました。転移してきた時に、これは死んだな、って思ったことがあったんですけど、同じところまで行ってた気がします」
「……そのような経験をしていたのか。どおりで本当にギリギリのところまで行くはずだ。私も道連れにされるのを覚悟したぞ」
「えっ?」
「今回の試練は今日で最後だと思っていた。だから出来る限り止めたくなかった」
「――良い師を持って幸せです。本当にありがとうございました」
ハルトがまだおぼつかない体に力を入れて立ち上がりながら出した言葉にマティアスは
「キザイア様がお前に賭けたのだ。だったら私も乗るしかなかろう?」
そう言って笑みを浮かべた。
立ち上がったハルトは自分の体を触って確かめる。特に変わったような感じはしない。
「加護を得た、といっても如実に変わったと思うところはないんですね」
「そうだな、目に見えて体つきが変わるとか、感覚や感情も含めて特に変わるところはない。私が自覚したのは大量のマナを必要とする結界を張る魔道具を初めて扱ったときだった。フォルマージュを扱えるという事実に触れたときにも感じたが」
「そういうものなんですね」
「しかし数多くの優秀な騎士がどれほど懇願しても得られないものだ。その騎士達の気持ちを汲んだ上で人の前に立つ騎士になるのだぞ。ハルト」
「はい。師マティアス。これまでありがとうございました」
力強い握手を交わした二人が加護と試練の間を出ると神殿長と幾人かの司祭に出迎えられた。
「あらたな御加護が降りたようですね。おめでとうございます」
神殿長の優雅で壮麗な礼がハルトになされた。
司祭達に見送らた二人が神殿の外に出ると、夕立が通り過ぎたのか湿った路面に日差しが降りていた。キラキラと輝く石畳と王宮と神殿の間にある緑が眩しい。これまで騒がしく聞こえていた蝉の鳴き声はなくなり、夏が終わりを告げていた。
王宮の通用門を通りすぎ、城の入り口でハルトはマティアスと向き合った。金髪碧眼の王族の血を引く師に手を差し出したハルトとマティアスは再び握手を交わす。
「では承認式で、また」
ハルトとマティアスは別れ、ハルトは歩み出す。城内に入り、階段を昇ると別棟にある自室の前を通り過ぎてオーブの部屋の扉を叩いた。開かれた扉の中にはオーブにハロルド、カッツェにノエル、そしてノーラに珠絵とソフィーにミック、デニスまでもが集まっていた。
皆が無言で向けた心配そうな視線にハルトは拳を握って上げてみせた。
「やったのか?」
オーブの問いにハルトははっきりと言葉で返す。
「はい」
歓声が上がり、「おめでとうー」と言いながら、ノーラ、ノエル、珠絵、ソフィーが駆け寄る。少し遅れてハルトを取り囲んだカッツェがハルトを持ち上げ、胴上げが始まった。仲間達に揉みくちゃにされたハルトは床に足をつけてオーブとハロルドの前に進んだ。
「オーブ、皆の期待に応えることが出来ました」
「私は案じてなぞおらなかったが、うむ、よくやった」
「何を言うとるんじゃ。今日はそわそわしてろくに仕事もしとらんくせに」
ハロルドの物言いに笑い声が上がる。
「うほん、ともあれアントーラ騎士団にグランノルン王宮公認の上級騎士が生まれた。私以来の快挙だ」
「えっ、ベンヤミン団長も上級騎士ですよね?」
「ベンヤミンはアントナーラの試練の間で加護を受けたからな。王都の神殿で加護を受けるほうが難しいのだぞ」
「そんなぁー。だったらアントナーラで受けさせてくれればよかったのに……」
「なぁに、王都の試練を越えたのだから一層箔がつくというものだ。これでハルトのやることに異を唱えるが難しくなる。アバターシュの開発も何かと楽になるというもんだ」
「まぁ、そうですよね。けどぶっちゃけ辛かったです。本気で」
「それだけハルトが作り出すモノには価値があるということだ。しかし作るために通らねばならん回り道が険しいな、ハルトは。私が騎士になれ、と最初に言ったときには、自分の手で触れて飛甲機を作りたい、と断ってきたし、今回は騎士が通る中でも最も難しい関門を越えねば作る資格を与えられぬ、だ。大きな選択をしたり乗り越えねばならん状況におちいるのは運命なのかもしれないな。しかし私は何か意味があるのだと思う。お前が通ってきた道は、これからゆく道を照らしてくれるだろう。自分の思う道をゆけ、自分が納得できるモノを作れ」
「はい、ありがとうございます。オーブ」
ハルトとオーブが交わした抱擁がとけると、タイミングを見計らっていたノーラが近づき、両手でハルトの手を握り取った。
「おめでとう。ハルトぅん」
「ノーラ、サンキューな。試練を乗り越えられたのはノーラや焚哉達のお陰だ。もちろん、みんなにも感謝してる。心から」
ハルトが皆と握手を交わすの待ってノーラが続けた。
「承認式で正式にキザイアお姉さまやお父様からお祝いの言葉が送られるだろうけど、わたしはまだ未成年だからここで伝えるね」
満円の笑みを浮かべたノーラは真顔に戻って祝いの言葉を贈った。
「ノブリス・オブリージュ。今後もあなたが救世者たらんことを」
「ははは、それどっかで聞いたやつ」
「それは私も知ってますよぉ。テロリストが実は救世主でした、的なやつですよね」
珠絵がノーラに負けじと割って入りハルトの手を握る。
「珠絵って何気にアニメ見てるよな」
「私だって撃つことばっかり考えてるわけじゃないんですからね。撃ちますよ?」
再び笑い声が起こる中で、ソフィーがぴょんぴょんと近づいてくる。
「お兄さん達の世界のアニメというものお話ですか? それはどんな物語なのですか?」
教えて、教えてお兄さん、ノーラさん、ねぇ、ねぇ、教えて。ハルトとノーラの腕にまとわりついてせがむソフィー。
「それ、わたしも聞きたい」
調子に乗ったノエルも加わってのやんやんやになった。久しぶりに爽快な気分でハルトはみんなと騒いだ。
「じゃ夏休みだし今夜はわたしの部屋で物語大会だね」
「やったー」
大きなジャンプをしたソフィーが、がばっとノーラに抱きついた。ソフィーに抱きつかれたままノーラはノエルに向かって口を開く。
「ほら、ノエルちゃんもハルトぅんにご褒美をあげないと」
ハルトの前に一歩進んだノエルが、かぶっていた千鳥帽子を取ると桃色の髪の上には髪の毛と同じ色の猫耳がピクピクとしていた。
「うわ、すっげ。本物みたい」
「でしょでしょ。モフっていいってさ」
ノーラが自慢げに言いながらノエルの体をハルトの前に差し出す。
「マジで、ノエル?」
「う、うん。いいよ」
ノエルは少しうつむいて頭をハルトに向けた。ハルトはニヤケ顔で桃色の耳を思う存分モフると内側の白い毛並みに手を触れた。
「うぎゃー、くすぐったい。結構敏感に伝わってくるぅ。うう……」
「気持ちいいなぁ。やっぱご褒美はモフリングに限りますなぁ」
うりうり、とハルトにモフられるノエルの顔すでに真っ赤だ。
「はい、そこまでー。ここから先は有料になります」
「えー、ノーラお前は悪徳業者かよ!?くー、ここまでかぁ。――でも、ありがとうな、ノエル。それにノーラも」
「おめでとう。ハル」
ハルトと仲間達の笑顔と笑い声が溢れるオーブの部屋の階下、長い廊下の先の部屋にもハルトが上級騎士の資格を得たことが伝わっていた。
「グレース公、アントナーラのハルベルトが上級騎士の資格を得たようです」
「一度とはいえ私を倒した男だ。そうでなくては困る」
「しかしやっかいですな、あの男は。長い時間をかけて議会を掌握できるかというところまで築いてきた我々の立場が滅茶苦茶だ」
「ゲルバルト公とハシュタル領の立場は理解できる。しかし私もオプシディスの後継者として負けるわけにはいかない。あ奴をこれ以上騎士団の中で大きな存在にさせるつもりはない。ゲルバルト公はアンナ王女の陣営とも距離を縮めているとも聞く。私が信用出来ぬか?」
「政治とは動きを悟らせぬことにあります。ハシュタルはオプシディオスの後押しをいたしますよ。そこをお忘れなきように」
上級騎士の黒い軍服に身を包んだグレースは短く刈り込んだ黒髪の前髪を触りながら灰色の瞳を夕日が差し込む窓の外に向けた。
一夜が明け、ハルトとオーブは城の本塔の騎士団総長室からの呼び出しに応え、キザイアの部屋に向かった。白地に黄金の装飾が施された執務机に座るキザイアの後ろにはグレースよりも深い赤が装飾された鎧姿のマティスが控えている。両目を赤いバイザーで塞がれているがマティアスの優しい視線をそこにハルトは見たような気がした。
キザイアがプラチナブロンドの巻き髪を揺らしながら顔を上げる。
「ハルト、よくやった。まずはおめでとう、と言わせてもらおう」
「ありがとうございます」
手を腰の後ろで組んで背筋を伸ばしてキザイアの前に直立するハルト。落ち着きはらったオーブは一歩後ろでハルトの横にいる。
「しかしこれがスタートラインだ。グレースと勝負する前提条件を満たした。ということだな」
「はい、それも理解しています」
「ではグレースとのアバターシュ、対外的には新型フォルマージュということになっているが、そのテストパイロットの座をかけた対戦の内容を伝える」
緊張した様子のハルトを気にすることなくキザイアは淡々と告げた。
「できるだけ公平に、と思ってな。何で戦うのかをいろいろと考えたのだがグレースがフォルマージュに乗ると戦力的なバランスが取れん。アバターシュをハルトに使わせるわけにもいかぬ。そこで、だ」
にやり、キザイアは崇高さが漂う美貌を作りなす口の端を上げる。
「サジウス型に二人に乗ってもらい、ロッキ型二機を加えた団体戦を行おうと思う。私の飛甲機をハルトの陣営に貸し出そう。もう一機はオーブが乗ってきた単座の機体があるな。ハルトはサジウス型の開発者にたずさわっているが飛行時間はグレースの方が圧倒的に長い。操縦技術はグレースの方が長けているだろう。このハンデを埋めるために機体の改修や新たな武装の使用をハルトの陣営に許可する。技術力はハルトの武器だからな。期日は十日後。準備期間としてそれくらいが適当だろう。あまり時間があるとハルトが何か新しいものを作ってしまいそうだしな」
「了解しました。その間もアバターシュの開発を続けても良いでしょうか」
「もちろんアバターシュの開発を止める必要はない。そもそもアバターシュをハルトがテストパイロットを勤めながら開発することに反対しているのはハシュタルの政治的な勢力だ。騎士団内部の状況ではない。騎士団としてはアバターッシュの開発を遅らせる理由がない。グレースとハルトが対決するのだから彼らの言い分を飲んでやっていることにもなる」
「一つよろしいでしょうか?」
「良いぞ、オーブ・アントナーラ」
「ハルトは王都の騎士達と過ごした時間が短く、他のパイロットとの意思疎通に難があります。アントナーラの騎士を参加させても良いでしょうか?」
「ふふ、お前がロッキ型に乗るつもりなんだろう?」
ハルトは少し振り返り一歩後ろのオーブの顔を見る。オーブは真剣そのものの表情をしていた。
「そう言うだろうと思っていた。カッツェの搭乗も許可する。本当はうちのパイロットを一人鍛えてもらおうと思っていたのだがな。うちの騎士の中にもハルトを尊敬している騎士はいるのだぞ」
「教育も考えてのことしたか。しかし、ありがとうございます」
オーブの顔が輝いた。
「今回私が出ると少々ややこしいことになるのでな。グレース側のロッキ型には彼の部隊の副官達に搭乗させ、私とマティスはフォルマージュに乗って閲覧席をカバーする。爆発物を思い切り使ってもよいぞ。どうだ? 面白い勝負になるとは思わんか?」
普段は厳しい目をしてるキザイア様だけど、こういうイタズラっ子みたいな目をする時はかわいいな。厳しい系の綺麗な人がかわいいところを見せると魅力が倍増する。あれ? それツンデレっていうんだったわ。
「全力を尽くします」
ハルトが余計なことを考えているうちに、対戦が楽しみすぎるらしいオーブが挨拶を返してしまった。
「ではハルトの上級騎士承認式の場を借りて正式に発表することにしよう。期日は十日後。場所はコロシアムだ。レギュレーションの詳細は後で書類を届けさせよう」
「了解しました」
キザイアの部屋を辞したハルトは廊下でオーブが伸ばした手の平にハイタッチした。
ついに試練を越え、グレースとの対決をむかえるハルトに心強い援軍が加わりました。
次回「テストパイロットを賭けた戦い」
水曜日の投稿になります。




