表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
甲殻の翼  作者: 月弓 陽
王都編
84/148

ノーラのたくらみ

「ほれほれー、もうちょっとだよお、がんばって、ハルトぅん」

 トレーニングに励むハルトにノーラが声援を送っている。

「うう、うおおおおお」

 ノーラが送る声援の声は、ブリッジの姿勢でぴくぴくと太ももを震わせるトレーニングウェアのハルトの腹の上に馬乗りになったノーラから送られたものだ。上級騎士候補としてハルトに与えられたプライベートなトレーニングルームには。ベンチプレスに石で出来たリフトに石アレイ、が並び筋トレグッズに囲まれた部屋でハルトは汗をかいている。

「はい、オーケー」

 するっと横をむいてハルトからノーラが降りるとハルトは大の字にマットに沈んだ。

「きっつー」

「まだだな。まだやれる」

 黙々と石アレイを上げるカッツェの隣にはノエルもいる。

「いや、もう無理っ」

「ちょっと休んだら次行くよん。腹筋50回、あとワンローテだからがんばろっ、おっーー!」

「ああーー、わかった。やるよ、やるってば」

 小刻みに震える体を酷使して再びハルトはトレーニングに励む。

「基礎体力向上が上級騎士になるかなめだとはな。守りの森でも基礎体力は付けさせられるけど」

「それだけじゃないらしいけどねぇ。基礎体力を高めた上でマナのコントロールを学ぶらしいよ」

 カッツェとノーラはハルトのトレーニングを通じてかなり打ち解けていた。

「ハル、がんばって」

「ハルトの呼び方が違うから分かるけど、今でもどっちがどっちだか分かんなくなるときがあるよ。大分慣れたけど」

「ほんと鏡に映したみたいだもんね。カッツェもありがとね。ノエルちゃんがわたしの代わりやってくれてるときに力になってくれて」

「女神様から第三王女様に鳥の人の警護が必要とされた、って説明があったからな。俺も出入りがしやすくなって助かってるよ」

「もう少ししたら向こうの世界の友達も着くからさ。そしたらもっとのんびり出来ると思うよ」

「ノーラとハルトの友達か。楽しみだな、突拍子がないのが集まりそうで」

「あはは、そうだねぇ。わたしも楽しみなの。ノエルちゃんの方はどーお?」

「はい、ここに次の開発に繋がるヒントがあるんじゃないかっていう記述は見つけました。もう少し文献を読み込んだら実験したいと思ってます」

「えらいなぁ。わたしより読書家だよ。頼もしい」

 腕立て、背筋、ブリッジ、腹筋、そしてスクアッド、ローテーションが終わるとベンチプレスを上げ、柔軟運動でめて本日のトレーニングメニューをこなしたハルトとは皆と開発工房に移動した。ノーラはベールを被り、ノエルとの似通った容姿を隠しての移動だ。

 王宮の敷地内を馬車で移動する。古代の女王スズメバチの巣だったガラスの螺旋に囲まれた王宮の城下には、元の世界で例えると中学校の区域ほどの敷地が城壁に囲まれている。その中にある第二開発工房にハルト達は入った。広々とした工房内は設備も充実しフォルマージュのサポート機となる中型機の素材が搬入され始めていた。

「かなり大きいな」

 巨大な木枠が四頭引きの馬車で運びこまれて来る。

「これよりもっと大きな素材も確保してあって、それは人員輸送用に割り当てられるんだろ」

 工房管理者の一員になったミックからの問いにハルトが答えた。

「ダイオウトンボとか言ってたよ。腹部が長くて収容人数が稼げるらしい」

「そっちも早く見てみたいな」

「王宮の保管庫から出される素材なら見に行けるんだろうけど、新規に森から運び込まれる素体らしいから搬入日が決まったら教えてもらおう」

 王都の蟲殻の保管庫はノーラの転移後大幅に増築され、マナの通った殻もマナを充満させた保管庫で活きた状態を保ったまま保管されていた。保管にかかるコストが膨大な開発費の理由のひとつでもあるということだった。ノーラの話からデニスが調べていた一時の蟲殻高騰の理由も判明していた。貴石の効力の研究は当初蟲を使って実験され、貴重な種や上位種の蟲殻が相当数集められて数々の実験が行われていのだ。しかし蟲の殻はマナがよく通る反面、その効力を増大させる媒体としては効果が薄く、フィレーネが指摘したように魔獣の骨の収集に移行した経緯があったのだ。その過程で収集された蟲殻のストックが今でも保管施設に数多く眠っている。

「しかしこれだけの人数の職人がかき集められてたらアントナーラの工房に空きもでるわけだ」

 人力で操作される大型クレーンに取り付く人々は皆腕の良い職人なのだという。

「第二工房だけでこの人数だと王宮の工房全体の人件費も凄いだろうな。開発費もかさむわけだよ」

「それに加えてフォルマージュのときは極秘中の極秘でやってたからね。機密保持にも大分お金がかかったみたい。破格の報酬を出してたみたいだよ」

「さすがは王族のプロジェクトってわけだ」

「ハルト、そろそろ行ってみよう。木枠が外れる」

 勇み足のミックに続いて素材に近づくハルト。中身を隠すように覆われた木枠が外されてゆく。大きな素体がその堂々とした姿を現した。

「ヘラクレスだ!!」

 白銀に輝く甲羅の羽、胸の上面からなめらかにつのとなる胸部、その下の頭部から伸びる長い角と対になって上下で挟む形の二本の巨大な角、白と深い茶色のコントラストが美しい素体だ。胸部から前と腹部の下側は深い茶色だが、金色こんじきの産毛が王者の気品を漂わすかのように輝いている。全長十五メートルを越えようかというヘラクレスオウカブトの体躯は圧巻としか言いようがなかった。

「次のが開くぞ」

 五体の素体が次々とその姿をあらわしてゆく。

「こっちはコーカサスか」

 胸の上部から伸びる二本の角を日本刀のようにしならせ、頭部の一本角を合わせて三本の角が鬼のように見える漆黒の甲殻には重量感がある。黒光りする素体に数十人の職人が取り付きロープがかけられてゆく。

「これはいかにも黒騎士専用って感じだ。振り分けは決まったようもんだな」

 ヘラクレスが一体、コーカサスが三、最後の木枠から姿を顕にしたのはハルトに馴染み深い姿のカブトムシ型だった。

「他のに比べるとかなり小さいけど俺はこのシルエット好きだな」

 ハルトは最後の日本のカブトムシ型の素材に近づきその甲羅に触れた。

 その横でヘラクレス、コーカサスがハルトの設計した開発作業用ハンガーに収められてゆく。

 白衣を着た技術者達がマナの計測機器などをハンガーに設置し始めた。


「これでちょっと時間あるよね。ニ階に行ってみようよ」

 ヘラクレスに取り付いたままのミックを残し、ノーラに先導されてハルト、カッツェ、ノエルが工房の端の廊下から階段を昇る。ドーム型の工房の二階部分は幾つかの区画に別れ、一区画に四つから五つの部屋がある。一行は一番奥の区画まで歩き、とある部屋に案内された。

「じゃーん!ここがグランノルン学園、工学部だよ!」

 ベールを外したノーラが、嬉しそうに黒板を背にした教壇に昇り、いかにも学校の机や椅子といった備品が並ぶ教室を指差した。

「おほん、あらためましてようこそ、グランノルン学園へ。わたくし生徒会のエレオノーラと申します。入学式はみんなが揃ってからになりますが宜しくお願いいたします」

 教壇から三人に頭を下げるノーラ。

「せいとかい?」

 ノエルとカッツェは不思議そうな顔をしている。

「ノエルとカッツェは向こうの知識がないもんな。勉強する人を生徒、教える人を先生とか教師っていうんだ。生徒会は生徒の取りまとめをする役目のことだよ」

「そうなんだ。いろいろ言葉を覚えなきゃだね」

 ハルトの説明に納得したようなそうでないようなノエル。

「みんなでワイワイやってればそのうち覚えるよ」

 壇上から降りたノーラがぽんぽんとノエルの肩を叩く。

「珠絵達が来るのは明後日あさってだよな」

「うん、焚哉くんと胤月さんも来るよ。ソフィーちゃん達もグランノルンに戻って来てるから明後日に入学式をやるの。連絡は行ってるよね?」

「予定は聞いてる。空けてあるから安心しろ」

「なんだか面白くなりそうだな」

 カッツェも乗り気なようだ。

「ところで先生はどうするんだ?先生がいなきゃ教室があってもただに部活になりそうだけど」

「だいじょーぶ。ちゃんとお願いしといたから。授業もやってもらうよ」

「そうなのか。楽しみにしてるよ」


「ハル、相談があるんだけど」

 ノエルはハルトの袖口をちょこちょこと引っ張った。

「お部屋からここまで毎回馬車をだしてもらうのもどうかと思って。モモちゃんと伊右衛門を連れてこない? カッツェのキスカも一緒に」

「確かにコボルがあった方が便利そうだな。自分用の乗り物があると気楽に移動できるし。それに伊右衛門達が近くにいてくれると嬉しい。陸オウムは可愛いからさ」

「オーブに連絡したら送ってくれるんじゃないか?俺は自分の守り鴉のレーズも呼んでおきたい」

「ノエル、俺が手紙を書くから伝書鳩を飛ばしてくれるか。」

「ハルからオーブに頼んでもらった方が早そうだもんね。うん、お願い。エレオノーラ様、わたしのモモちゃんはエレオノーラ様のコボルとよく似てるって商人が言ってました。同じ色で血統も近いって聞いてます」

「そうなんだ。コボルもお揃いなんだね」

「はい、嬉しいです」

「でもひとつお願いがあるんだぁ」

「なんでしょう?」

「もうちょっと話し方を姉妹っぽくしてくれると嬉しいな。ここでは」

 はにかみながらも、うん、とうなずいたノエルにノーラが破顔する。

「それでは、明後日の10時から入学式を行います。遅刻しないでくださいね!」

 うっきうきのノーラをあやしてハルトは工房に戻り、各素材の状態を確認し終えると工房の執務室で手紙を書いた。オーブに当てたものを書き終えると、ロダの家族にも伝えて良い範囲で近況報告を記した。

 みんな元気かな? 父さんは仕事忙しくしてるかな? 母さんは相変わらずそうだけど、怪我の治ったマーガレットが困らせてないかな? なんだか懐かしいな。そうだ。父さんから教えてもらった仕事が役に立ってることも書かなきゃ。こっちの世界に来てからの家族だけどやっぱり家族のことを思い出すと胸がジンとなる。元の世界の家族も元気なのかな? 真櫻はバスケ上手くなってるかな?

 入学式、というノーラの言葉がハルトを少しセンチメンタルにしていた。


 翌朝は五キロのランニングから始まる体力向上トレーニングを普段通りにこなし、ミック、ハロルドに王都を訪れているデニスを交えてサポート機の開発計画を話しているうちに日が落ちると、あっという間にノーラの提唱した入学式の時間になった。


 ハルトが筋肉痛に足を震わせながら10時少し前に教室に入ると焚哉と珠絵が待っていた。焚哉はキラナで会った時と同じく白い法衣に三つ巴の紋のついた袈裟姿だが、珠絵は紺がすりの作務衣さむえではなく立派な和装姿だ。艶やかな着物姿だはないが良家の娘さんといった雰囲気の珠恵をハルトが褒めると「特使になるのだからしっかりしなさい、って礼儀とかも叩き込まれました」と、うつな感じで答えた。

「しかしノーラちゃんって本当に王女様なんだね。昨日の夜に着いたんだけど晩餐会みたいな食事でびっくりしたよ。テーブルマナーを教えてもらっといてよかったぁ、って実はため息出まくりだった」

「悪かったな。顔を出せなくて」

「ハルトは忙しいんでしょ。気にしなくていいよ」

「珠絵の部屋は決まった?」

「はい、ちょー立派な部屋でした。お付きの女性も専属でついてくれるみたいです」

「なら良かった。胤月さんは?」

「保護者は後で来るってノーラちゃんに言われたよ」

「その言い出しっぺがまだ来ないか」

「まだ時間になってないし、もうちょい待とうよ」

 そうこう話しているうちに、ノエルとカッツェ、それにソフィーを伴ったノーラが教室の扉を開けて入ってきた。焚哉はノーラにそっくりのノエルを見て目を丸くしている。ノーラの後ろからは七台のカートを押したメイド姿の側使えがぞろぞろと入ってくる。側使え達がカートを置いて退出したことを見届けてから、ノーラが顔を隠していたベールを外して声を上げた。

「みなさん、おっはよー」

「ノーラ、入学式をやるんじゃなかったのか?」

「そうだよ。だからみんなこれに着替えて。自己紹介は入学式が始まったらオリエンテーションするからもう少しがまんしてね」

 カートに上に積まれた箱にはそれぞれの名前が書かれたのし紙が貼られている。ハルトは自分の名前の箱を取って開けてみた。

「学生服!」

 箱の中には黒い詰め襟に白いカラーまでがしっかり付けられた真新しい学生服が一揃え入っていた。ボタンは通っていた高校のものが取り付けられ、くすんだ銀色の中に桜とペンの意匠が浮んでいるところまで再現されている。下の箱には白いワイシャツにベルトや黒い革靴と学校で過ごす服装が一式揃っていた。

「あーっ、これ西高の制服ですよ!! でも夏服の長袖なんですね?」

 珠絵は白いセーラ服の胸元に小さな紺色のリボンが蝶々結びになった制服と紺色のスカートを広げている。

「あの制服は夏服が可愛かったからさ。衣替えにはちょっと早いからこのデザインにしたの。冬はこの上にカーディガンにしようと思う。高校生っぽいでしょ。同じデザインで半袖の夏服も作ってもらってあるよ」

「これは嬉しいですね。ノーラ、GJです」

 ぐっとグッジョブサインを差し出す珠絵。

「面白い服だな」

 背の高いカッツェがたくましい体格に学生服を背負った。

 カッツェが制服を着るとやっぱりまさるを思い出すな。

  

「焚哉もサイズぴったりだな」

「しばらく前に採寸されたのはこういうことだったのか。ナイスサプライズだね」

「でしょでしょ」

 やっとまともに会話が成立した。焚哉はそういって拳で目頭をこすりながら泣く素振りをしてみせてから顔を上げてノーラと笑い合う。

「焚哉くんには特別にもう一つ用意してあるよ」

「えっ、なになに?」

「はい。これ」

 ノーラのカートに残っていた無記名の小さな箱の中には色鮮やかなグリーンのニット帽が入っていた。三つ巴の紋が刺繍されたワッペンがついている

「制服に坊主じゃかわいそうだと思って。季節外れだけど、これを被ればおしゃれさんだよ」

「ありがとおおお。しかも紋まで作ってくれて」

 今度は本気で目を潤ませた焚哉だった。

「焚哉くんの空海さんのお話面白かったからさ。もっと詳しく教えてほしいな。これからいろいろ話そうよ」

「うん」


「みんな気に入ってくれた?」

「ああ、気に入ったっていうか凄いよ。ノーラのお陰で前の世界に戻ったみたいだ」

「わたしのコスプレ趣味も役にたったでしょ、 えへへ」

「制服だけじゃなくて学校の机や椅子とか教壇や黒板まで再現してあるのがまたな」

 遥斗はノーラがこだわりを持って用意した部屋を見回した。

「覚えてる限り出来るだけ近づけてみたよ。高校の椅子とか机は中学のときとそんなに変わらなかったし」

「ありがとうな」

 白いセーラー服を着たノーラが笑う。遥斗はそのセーラー服を見て綾乃を思い出していた。



「ではでは、女性陣は隣の部屋が更衣室になってるから着替えに行こう。ソフィーちゃんも行くよ」

「あの、こんなに高級で可愛らしい衣裳を頂いてしまっても良いのでしょーか?」

 ソフィーのセーラー服は髪の色に合わせて白地に紫色のラインとリボンになっている。中等部という設定らしい。

「これは制服っていってね、みんなと同じところに所属してますよぉ、っていう証でもあるからここに来る時は着てきてね。ニ着用意してあるからさ、洗濯してもらってるときも着てこられるよ」

「はい、わっかりましたぁ」

 慣れない場に緊張してガチガチだった様子のソフィーをノーラが和ませつつ女性陣が着替えに行った。


「ほんとノーラちゃんとノエルちゃんだっけ? そっくりだね」

「びっくりするよな」

「でもノエルちゃんとも幼なじみなんてズルくない?ハルトばっかさぁ」

「でもいろいろあったんだよ。おいおいゆっくり話す」

「分かった」

 セーラー服に着替えたノーラ、それに生き写しのノエルは白いソックスに短めスカートの丈もお揃いだ。ノエルの方はしっぽが外に出ていてピンク色のしっぽが強調されている。短いストレートの茶髪の珠絵に違和感は全く無く、小柄で活発な紫髪のソフィーは褐色肌がマスコット的な雰囲気に拍車をかけている。


「では入学式を始めます。整列して下さい」

 教壇の前で一列に並ぶとノーラが小走りに外に出てから戻ってきた。

「ほんとは音楽を演奏してもらいたいところだけど、事情があるので静粛に行います。先生方の入場です。拍手をもってお迎え下さい」

 パチパチパチ、拍手が鳴り出すと教壇側の扉が開いて白衣を着たハロルド、腰から黒い翼を広げた天使のウルデ、金髪縦ロールの騎士団長キザイア、キラナの高層胤月に続き、ソフィーと同じ紫色の髪の毛をまとめた吟遊詩人ナターシャが入ってくる。

「えーー、キザイア様が先生って……それにウルデ様!?」

「詳しいことは後で、だよ。続いて特別講師の方にもお越し頂きました」

 大人びた服を着た幼女姿のラフィーが入って来た。

「マジでか……」

 ほうけるハルトにニッコリ笑いかけてノーラが壇上に立った。

「ここにいるみなさんは全員、ハルトぅん、焚哉くん、タマちゃん、そしてわたしが別世界から来た人間だと知っている人たちです。ソフィーちゃんとナターシャさんにはわたしから事情を話してあります。ベルダンティア様とアルフリードさんにもお願いしたんだけど今は忙しいみたい。落ち着いたら来てくれるって」

 柔らかい笑顔を転移組にむけるノーラ。

「だからね、ここでは何も隠さなくていいんだよ。そういう場所と時間も必要でしょ」

 そういうことか……ちょっと、というか、かなり嬉しいかも。

「先生として紹介したけど、元の世界の学校みたいに毎日授業をしてもらえるわけじゃない。学園の開催は週に三回。一日二時限の授業だけど、それぞれの得意分野で色々と教えて頂く時間にしたいと思います。先生方、よろしくお願いします」

 「「「よろしくお願いします」」」

 ノーラの先導で生徒達が先生に挨拶をすると、ハロルドから順に自己紹介がなされた。ウルデが「ノルンのウルデだ」といった時にはソフィーは泡を吹いて倒れそうになった。しかしそれもいつしか笑い話しになる良い思い出だ。最後にラフィーが巨大な金色の狼の姿になって見せたときには「もう何があっても驚かないっ」そう言い切っていたソフィーだけではなく焚哉と珠絵も卒倒しそうになった。

「ちょ、ちょっとサプライズすぎ、かな?」

「でもこれがこの世界なんですね……」

「焚哉と珠絵は初めてだもんな、そりゃ驚くよな」 

 教師陣の自己紹介が終わると生徒がノーラから順に自己紹介をしてゆく。歌と踊りを披露したソフィーに拍手が湧いた。最後にカッツェが「ノルン様に仕える鳥の人族だ」と自己紹介をした後に腰の灰色の羽を広げてみせた。

「おおー、ちゃんと開くね。カッツェの制服をデザインするのは苦労したんだから」

 カッツェの学生服の背中はサイドベンツ仕様になっていた。

「それにね、前の世界のスーツのサイドベンツは騎士の服装の名残りなんだよ。腰に差した剣が邪魔にならないようにってことみたい」

「こだわるなぁ、ノーラ」

「カッチェはいざというときの警護でもあるからね。それで父上と母上をわたし達だけでここにいることを説得したのもあるし。この区画は区画の入り口に警護がいるだけにしてあるから教室に部外者は入ってこないよ。建物自体が厳重に警護されてるから特に問題ないんだけど」

「ある意味治外法権区域ってことだね。やるな、ノーラちゃん」

「ありがと。それとみなさん、この区画には書庫やお料理ができる設備なんかも用意してもらっています。各自が読みたい本を王宮図書館からここにに移動することも出来るようしておいたから利用してね。許可が出ない本もあるからそれは貸し出し手続きをする時に確認して下さい」

「さすがは元図書委員だな。小学校のときだけど」

「むー、中学のときもやってたよ。アメリカに帰るまでだけど……ハルトぅん覚えてないの?」

 ジトー……

「ごめん、ごめん」

 ノーラの図書委員といえば綾乃と仲良くなったときのイメージが強かったから、つい小学校って言っちゃったな。

「それでは入学式はしゅーりょー、懇親会に移行します」

 ノエルちゃんお願いねー、ノーラにいわれ、ノエルが教室の外に出てメイドや執事を連れて戻ってくる。

 丸いテーブルと椅子が用意され、お茶とお菓子を囲んで、和やかなような騒々しいような、生徒達にとってひたすら楽しい時間が流れた。パンツルックのスーツにパンプスを履いたキザイアが、嬉しそうな顔ではしゃぐ妹エレオノーラの姿を青く優しい瞳で見つめていた。

 


ノーラガオウジョノトッケンヲツカッタ、の巻でした。

もう週末かぁ、早いですね。

次回、「フォルマージュ支援機体」月曜日の投稿になります。

良い週末をです☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ