光射す
懇親会で親交を温めたアントナーラと王都の騎士達がコロシアムで対峙している。翌日は飛甲機とフォルマージュが参加しない騎士同士の模擬戦となった。
閲覧席でハルトがオーブに尋ねる。
「騎士同士の模擬戦といっても剣で切り合う、とかそういう訳でもないんですね」
フィールドでは百対百の鎧姿の両軍が陣を展開し始めている。
「個人の技量を測る手合せはこれから順次行われるが、今日は軍としての練度を見せ合う、というのが主な目的だからな」
こうやって見てると今どちらが攻撃で防御なのかがよく分かるな。両軍ともよく統制が取れてる。
状況に応じて次々と陣を変化させていく両軍の騎士達。
これは今の俺には無理だ。オーブが技術畑の人間だって言ってたのにも納得する。カッツェでさえ参加してないんだから当たり前っていえば当たり前なんだけど。でも、もし人同士の本当の戦いに飛甲機やフォルマージュが入ったら……。いや、嫌なことを考えるのよそう。俺は人同士が争うためのモノを作りたいわけじゃない。
騎士達にとっての閲兵式が王都騎士団との合同訓練に移ってゆく中、ハルトの役割は飛甲機の有用性を説く書類作成が主なものとなっていた。その合間に議会に呼ばれる、という日々が続く。
オーブが王族は味方、とか、政治だ、って言ってた意味が解ってきた。王家は世襲制の大統領みたいなもので、議会の中にはいろんな考え方、というか欲望? が渦巻いてる。つまるところ予算の取り合いだ。議会を説得する立場である王族の中にも王女の後継者問題が絡んでるし複雑だ。でもまぁ俺は飛甲機の生産体制を整えるための書類を作ったり説明したりするくらしか出来ないんだけど。
ハルトは鉛筆を握った人差し指を弾いて鉛筆を回しながら考える。しかし目の前にある書類を時間までに仕上げなければならない。
もうちょっとだ。頑張ろう。
「とりあえずいっちょあがり。あー、疲れたぁ」
航空運用部執務室、と呼ばれているが実際には宿舎に設けられた事務室内のデスクに向かって書類作成に明け暮れるハルトは、椅子の背もたれに背中を預けて両手を上げた。
「一息入れますか?」
「そうですね。お茶を入れてきます」
「私も少し休みます」
隣のデスクのデニスと共に席を立つハルト。毎日のように合同訓練で汗をかく騎士達の衣類の洗濯や食事の用意で航空運用部の事務仕事にまで側使えの手が回っていない。機密保持の観点もあるようで人の出入りが厳しく制限されている。
「まるで箱詰状態ですよ」
鉄のないこの世界に缶はなく、当然のように缶詰という言葉はないだった。
「ハルトさんは書類仕事が多いですからね」
春光が採光のためにしつらえられている大きな窓から入り込み、温かい部屋の中でも二人はワイシャツにベスト姿だ。ハルトは白いシャツの袖口を汚さないように腕抜きでカバーしている。
「しょうがないですね。デニスさんのように情報を集められるわけではないし。オーブが助かってる、って言ってましたよ」
「模擬戦の時に聞こえてきた声に気になったことがあったもので」
「王都の議会の中にもニンディタの勢力があるなんて思ってもみませんでした」
「政治とはそういうものです。平和や人権を! と訴えながら、実は自分の祖国の利益のために動いているという人間も多いですから」
「ほんと玉ねぎみたいですよね」
「玉ねぎ?」
「剥けば剥くほど別の顔が出てくる、ってことですよ」
「それは上手い例えですな! いや面白い。使わさせてもらいます」
そうかなぁ?俺にとってはフツーな感じなんだけど。やっぱ日本にいた時の感覚とこの世界の人の感覚ってちょっと違うところがあるんだよなぁ。その上ここは王宮だ。アンナ王女、あの方の本心なんて幾つセコム外したら見えるんだろ? な感じだし。可愛くて柔らかい物腰の鉄の女。この世界に鉄はないんだけどそんな感じ。飛甲機の件では公に社会的貢献を主張しているけど、それが本心なのか何か別の目的があるのか見えてこない。そういう本心を見せない所が王族として持って生まれた天性のものなのか、後天的に身につけたものなのか、もし後天的なら環境がそうさせたのか能動的に得たものなのかも全く分からない。
その存在を際立たせてる外見の美しさと霧のような内面。そのギャップを埋めても有り余るおおらかな物言いと優しげな所作をまざまざと見たハルトの実直な感想だ。
でもそれすら作られたものかもしれない。迷路のような王宮に住まう王族。あからさまな伏魔殿にひそむ魔物。そしてそれを模してコピーしたような政治家たち。裏に潜む利権、欲望、建前と本音。それにまとわり付いてまわる感情ーーそうだな、感情だ。ここで戦わせてるのは感情だ。それを裏にひそめて論理的に、倫理的に、法と言う名の道理を決める政治。ある意味本心が全く見えないアンナ様はスペシャリストなのかも。達観してる、とか、悟りを開いた、とか、そんな言葉が似合うような人だ。そう言えば焚哉は坊さんだって言ってたよな。欲望、欲情? かな、そういうのが丸出しの焚哉には全く感じなかったけど。でも焚哉の愛嬌のあるあの感じ、懐かしいな。
取り留めのないハルトの思考が流れ出て止まらない。
「それはそうと進み具合はどうですか?」
いけね。また余計なこと考えちゃってた。気をつけようっと。
「模擬戦で見せたところまでの飛甲機の有用性をアピールする書類はなんとかなりそうです。技術的なことはミックがまとめてくれてますし、オーブや王族の議会の説得状況次第で技術交流に入れそうです」
「しかしオーブも苦戦しているようですな」
「飛甲機量産の方が厳しいみたいですからね」
共同開発の方向で一致をみた中・大型機の新規開発は特に問題なく承認された。しかし肝心の飛甲機量産の予算折衝が難航していた。フォルマージュの開発予算を削られたくない勢力に阻まれているのだ。中型機はファルマージュのサポート機として運用され、大型機は奥森との境への派兵輸送が目的のためすんなりと通ったのだった。
王都の権威。そしてアントナーラが大きな力を持つことを懸念する他領地の思惑。それらがハルト達にとって大きな障壁になっていた。
「射出機が開発できていて、飛甲機単独で蟲を鎮められることが見せらればもっとスムーズなんでしょうけど」
「射出機はそれだけでも大きな波紋を呼びそうですからな。特許をどこで持つのかなど、大きな揉め事の種になるのが目に見えています。繊細な配慮が必要でしょうから、ここはハロルド様におまかせしましょう」
「結局ハロルド爺さんもオーブに連れ回されてますからね」
「全くだ。お陰で俺のアントナーラへ帰還も延びてしまった」
ミックがカップを片手に立ち話をするハルトとデニスに入ってきた。
「お疲れミック。ミックと爺さんは先に帰って射出機開発の準備をするはずだったのにな」
「それにこちらの技術を公開する準備ばかりでフォルマージュの話を聞く機会がない。不公平だ」
フォルマージュの構造や作動原理に興味がつきない様子のミックの欲求不満は爆発寸前のようだ。
「あれは国家機密クラスでしょうからな。おいそれとは教えられないでしょう」
「ノエルと第三王女様の面会もまだみたいですしね」
「王都の威厳と技術の象徴であるフォルマージュの発案者とアントナーラの人間が私的に会うということにも政治的配慮がなされているのでしょう。それに第三王女様が第一王女様と第ニ王女様のどちらにつくのか?それとも後継者争いに名乗りを上げるのか?これは後援組織にとっては大きな関心ごとでしょうからな。迂闊に動いてもらっては困る、というのもあると思いますよ」
「いろいろ難しいのね」
もう後継者争いなんてアーカイヴに接続して魔導書かなんかに決めて貰えばいいのに。
「しかしノエルさんが持つ赤い貴石の知識は向こうも知りたがっていると思いますよ。フォルマージュを実際に目にしたアントナーラがノエルさんの知識を元に独自開発する可能性も探っておきたいはずですから。そのうち動きがあると思います」
「詳しく知らされていないですけど、おそらく膨大なマナを消費する兵器をアントナーラが独自に開発する財力は無いんじゃないでしょうか?」
「俺もミックのいう通りだと思います。僕たちには無理ですよ。それよりも飛甲機の量産体制を整えるが現実的だと思います。実はひとつアイデアがあって、オーブには伝えてあるんですけど、もう一度蟲との模擬戦を申請して貰おうと思ってて」
「初耳だぞ、それ」
「ごめん。その話は昨日の夜まとまったんだ。爺さんやカッツェが守りの森に連絡を取ってくれてさ」
「まだ話せないのか?」
「いや、もう大丈夫。今夜の会議で正式に話すけど、夜間の有用性ってやつ」
「夜間、ですか」
「虫って夜行性なのも多くて光に集まるでしょ。甲虫とか特に。オオキバハサミムシの習性を詳しく調べてもらってたんですけど、やっぱり暗いところでは光に引き寄せられる習性があるって分かったんです。それなら飛甲機のライトにおびき寄せて鎮めれば騎士があんなに苦労することなく鎮められるんじゃないかと思って」
「なるほど」
「だったら光源を別に用意して三機の飛甲機を全部鎮める役割にすればより効果的なんじゃないか?」
「用意出来る?っていうか作る時間ある?」
「材料があれば出来る。書類仕事ばかりで手を動かしたくしょうがなくなってたところだ」
「俺も手を動かして作業がしたいよ」
「そういえば、ノエルさんが午後からライトの材料の鏡椀を譲ってもらった狐人のところにお礼に行くと言っていました。お椀を作る職人の工房も近いですし、どうですか?気分転換がてらに外出してみては」
「そうですね。書類仕事を一段落させて行ってみようかな」
「俺は書類仕事を先に終わらせてしまいたい。材料を確保してきてくれ」
「では、ノエルさんにハルトさんが同行することを伝えてきます。私もご一緒しますよ」
ハルトとノエル、デニスの乗った馬車が王宮を出て王都の街に入る。馬車が幾つもの水路に渡された橋を越える度に街並みが見せる風景が変わるのも王都の特徴だ。巨大な湖、果てなき泉に接した王都は水路でごとに特徴のある街づくりがされている。繁華街を抜け、下町で降りた3人は狐人族の露店がならぶ通りを歩いた。
「普段着で街を歩くって落ち着くぅ。おめかしして待ってるのに王女様から全然お声がかかんないんだもん」
王女様のお友達に!? 色めきだった側使え達にノエルはてんてこ舞いだったようだ。
「着せ替え人形になったみたいだったんだよ。綺麗なお洋服を着られるのは嬉しいけど、姫さまに会うって大変なことなんだなぁ、って実感したよ」
「嬉しい悲鳴ってやつだな。お声がかからないってことはないと思うから頑張ってみれば?」
「うん!あたし姫さまに会える女になる!」
うっしゃ、と気合を入れるノエル。
「相変わらずだな。ノエルの姫さま好きは」
「女の子の憧れだもん、当然だよぉ」
そういうノエルの向こうにある露店の店先にならべられているあるものがハルトの目にとまった。足早に露店に近づくハルト。
これ徳利じゃん!! 置いてある皿も和柄みたいだし! 「いらっしゃいませ~」手を揉みながら近づく狐人の店主。
「どうかした?ハル」
「ノエル、今から行くのは狐人族のまとめ役だって言ってたよな?」
「うん、そうだよ。グランノルンでは見ない不思議なお家に住んでるの。元々はキラナの島の人なんだって」
「俺も一緒に行ってもいいかな?」
「もちろんいいと思うよ」
「何か思いついたようですね。では私は職人の方に在庫を確認しに行ってきますね。あそこのカフェでお待ちしてます。私の方が遅いようでしたらそこで待っていてください」
次にハルトの目に入ってきたのは曲がり角にある祠だ。
お稲荷さん!
それにこの先の道の松並木。完全に日本文化だ。一体どういう事なんだ!?
動揺しながら歩くハルト。
「あそこだよ。島狐さんのお宅は」
ノエルが指差した先には三本の鳥居が鎮座している。
神社だ。
「ちょっと待って!」
立ち止まるノエル。
「いや。思わず声になって出ちゃったんだ。でも本当にちょっと待って」
不思議そうな顔をしてハルトを見やるノエルをよそにハルトは辺りをキョロキョロと見わたした。
「この松の並木も、あの鳥居、赤い門も俺のいた前の世界で住んでた国のものなんだ。こっちに来てから初めて見た。日本、っていう国なんだけど文化が独特でそれらしいものを今まで見たことがない。だから驚いてる」
「…………」
「と、とにかく話しを聞きに行こう。でもどうやって話せばいいんだろう?」
「――最初はわたしが話すから、ハルは聞きたいことを考えてから話をしてみれば? ハルを紹介するときにキラナのことに話題をもっていくから」
「そうだな。うん、とにかく行ってみよう」
屋根瓦に軒下、それに縁側。狐人のまとめ役のお宅は神社の社屋に日本家屋が続いているものだった。
日本文化があるんなら何で俺はそこに転移しなかったんだ? とにかくキラナがどんなとこか聞いて行ってみないと。
「こんにちは。以前お邪魔したノエルです。マイさんはいらっしゃいますか?」
ノエルが玄関を叩いてからしばらくして。曇りガラスのはまった扉がガラガラと音をたてて横に開いた。前回と同じく顔を出したのは小さな女の子だ。
「おばぁちゃーん。ノエルさんが来たよー。男の人も一緒ー」
とてとてと廊下を走り去る女の子。
「マイさんのお孫さんだよ」
やっぱり靴を脱いで上がるんだ。襖に障子。懐かしい木の家の匂い。
「いらっしゃい。ノエルさん」
「先日はどうもありがとうございました。お陰様で作っていたものを作り上げることができました」
「お役に立ててよかったわ」
菓子折りと共に風呂敷を取り出すノエル。
「今日はこれはお返ししようと思って」
「あら、それは返して頂かなくてもよい物なのをお伝えしていなかったかしら?」
風呂敷。見るからに風呂敷! これをもっと早く見てれば、ここに至るまでの時間に大きな変化があったのかもしれない。でも俺が今ここにいる、そのことにも何か意味があるのかもしれない。とにかく何とか話を聞きたい。
「お返ししなくても結構ですよってお聞きしてたような気もするんですけど、お礼の気持ちをお伝えしたいのもあって訪ねさせて頂きました。それと彼はハルベルトというのですけれど、彼が天使様からお言葉を頂いた本人なんです。キラナに興味があるらしいのでお時間があったらお話を聞かせて頂けないでしょうか?」
「はじめましてハルベルト・ブロックと申します」
「島狐舞衣と申します。遠いところをようこそ。どうぞお上がり下さい」
名字が先の名前。それに巫女服っぽい和服。
巫女服によく似た着物姿のマイに続いて部屋に入るノエルとハルト。
畳、座卓、急須に湯呑、座布団、そして掛け軸に神棚。部屋の各所を見ながらノエルとマイの会話に耳を傾けるハルト。
ニンディタに子供?臭うな。でもそれはまだ後だ。
マイとノエルの会話が一段落つく頃にはハルトが話す自分の設定が固まっていた。
「ハルベルトさんはキラナにご興味がおありなんですね?私にわかることならお話いたしますよ」
丸メガネをかけた柔和な顔を傾けるマイ。
「マイさんのお陰で天使様の導きで作っているモノを完成させることが出来ました。まずはお礼を言わせて下さい」
ハルトは正座をし、膝に手をつき平頭した。
「キラナの作法ですね。お気持ちは理解いたしました。お顔をお上げ下さい」
ハルトはマイと向き合った。
「ハルベルトさんはキラナで暮らしたことがおありなのですか?」
「いえ、僕はロダというグランノルンの西の端にある小さな村の出身で、キラナを訪れたことはありません。僕の村ではイクリスの夜に祝福を授かって大人になるのですが……」
「それはキラナでも同じです。我が家は聖地を守っていた家系です。無下に口外はいたしません。よろしければお話しください」
それでもまだ転生者だとは明かせないかな。
「僕の祝福は普通の人より大きなものだったようです。その時に森に迷い込んで失いかけた命を鳥の人に救って頂きました。守りの森で儀式が行われ、自分の知らない所で暮らす人の記憶を共有しました。その人の記憶が今でも僕の中にあります。けれどこれまではその記憶の中にあるものや建物を見たことがありませんでした。通りの露店から祠、松の木やこのお宅と数多くそれらがあったので」
「ではこの家がどいう意味を持つのかもお分かりですか?」
「はい。三つの赤い門、鳥居の先のあるものは神社。神を祀る聖域です。マイさんが着てる服は神に仕える女性が着るものですよね」
「そこまで解っているのですね。――その通りです。私は巫女でもあるのです」
「やっぱり」
こんなことなら綾乃の組紐を持ってくればよかった。神社繋がりで何かが繋がったかもしれない。繋がる? 綾乃と? いやいやいや。この世界に来たのは俺一人だけだと思ってたけどもしかして。いや、やっぱりまだ解らない。変な期待をするのはよそう。
ハルトは服の上からベルダンディアからもらったお守りを触った。
「ハルベルトさん、ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「はい」
「鏡のお椀を使って何をお作りになったのでしょうか?」
「失礼しました。それをお伝えしてなかったですね」
この人ならある程度話しても大丈夫だ、ハルトはそう判断した。
「マナの通った蟲の殻を使った空を飛ぶ乗り物です。僕たちは飛甲機と呼んでいるものなのですが、それに取り付ける明かりを作る部分に使わさせてもらいました」
「そのようなものを」
大きけ目を開いて丸くするマイ。
「少しお待ち下さい」
席を立ち、部屋を出たマイが小箱を持って戻ってくると座卓の上で箱を開いた。
「本家から託されたものです」
その中に入っていたものは赤い羽の意匠が象られたペンダントだった。ハルトの胸にあるものと色違いのものだ。
「色違いのものを僕も持っています」
白い羽のペンダントがハルトの胸から取り出さると二つの天使の羽が呼応するように淡く光を放った。
「マイさんの一族も天使さまとの繋がりがあったんですね」
「ハルトさんもそうなのですね。これを持っている人と巡り合う日が来ようとは。私の知る限りのことをお話ししましょう」
キラナとは「光射す地」という意味で、神社と共に仏閣もあり、この世界の天界信仰と融合した宗教観であること、国を治めるのは僧侶であること、日本とよく似た一般的な文化についてなどハルトにとって貴重な話が続く。
舞衣の話が一通り終わると、ハルトは聖地の地下に導かれて飛甲機の開発に至った経緯を話した。しかしスクルディアと思われる天使の導きであることは一応伏せておいた。
確定していないことを話すのはまだにしておこう。どこで何がどうなるかわからない。
自戒しながらも舞衣の話に合わせて情報を開示してゆくハルト。
「守りの森は天界への扉を守っていますね。本家が守るものも同じものです。キラナの政治とは独立していますのでグランノルンにおける鳥の人と同じ立ち位置だと思って頂いて構いません」
その言葉を聞いてハルトは自身が転生者であることを除いて全てを打ち明けた。この選択が後々大きな影響を及ぼすものだったことを知るのは時を経てからのことだ。転移者であることを告げていた場合、ハルトはキラナの舞衣の本家に招待され、オーブ達を説得して直行することになるはずだった。それはこの後にハルトに訪れる状況に巡り合う機会を失うことを意味するのだが、それは、もしも、の話である。
「私の方でも本家と連絡を取って、なにか関わりがありそうなことはないか聞いてみます。今の時点ではハルベルトさんにお知らせすべきようなことがあったとは聞いておりませんが、お知らせすることが出来たらご連絡を差し上げます」
「よろしくお願いします」
「これも何かのご縁です。キラナを訪ねることがあれば声をおかけください」
「今日は本当にありがとうございました」
「こちらこそ。貴重なお話をありがとうございました。どうぞこれをお持ち下さい。ノエルさんもどうぞ」
マイから手渡された御守を丁寧にしまい、ハルトとノエルはマイの家を辞した。
キラナの国名「光射す」はサンスクリット語から拝借しました。本来は「光」「輝き」「光の筋」という意味の言葉です。
もう週末ですね。時間が経つのが早い……。
次回「第三王女」月曜日の投稿になります。




