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甲殻の翼  作者: 月弓 陽
王都編
74/148

交流

 フォルマージュとの対決を終えたハルトは、宿舎の自室に戻ると航空部隊の鎧を取り上腕の肩の部分に描かれた徽章を見つめた。兜のクレストと同じ天使の羽と蟲の後ろばねがクロスした航空部隊の徽章。それに恥じない働きができたことに安堵するハルトに側使えが着替えを運んでくる。長ズボンを履いて、白いシャツの胸元に白いクラヴァットのスカーフをつけるとベスト代わりの丈の短い内コートを重ねてゆく。

 最後に黒く長いロングテールの上着を羽織り、ガントレットカフスの袖口に腕を通す。それを見守っていた服装のチェックに余念がない側使えに「よろしいようですね。行ってらっしゃいまし」と見送られた。航空運用部の一員として懇親会という名のパーティー会場に向かうのだ。本来は騎士達同士の交流会なのだが今回は特例としてアントナーラの騎士ではないハロルド、ノエル、ミックにデニスも招かれている。ハルトはジョナサン隊長を先頭にユージン、カッツェらと共に城に入った。何重いくえかに城を囲うガラスの螺旋構造物の階段を昇り入場する。王城の最下階は屋根が白く天井が高いアーチ状になった廊下だった。

 うわっ、ザ・王宮って感じ。

 古式ゆかしいというよりも、格式高いゴシック建築そのものの廊下を歩く。複雑なデザインの白い柱には金色の装飾が施され、数え切れないくらの蝋燭に火が灯った幾つものシャンデリアがホールといってよいほどの道幅の廊下を照らしている。赤い絨毯の脇にはフィレーネが見たら我を忘れて飛び出しそうな生け花が光沢を放つ純白の陶器の花器に活けられ並んでいる。アーチそのものも惜しげもなくつたを這わされた赤い薔薇が所狭しと彩り、華やかな雰囲気に拍車をかけている。

 フィレーネが見たら興奮するだろうな。 

 しかしさすがに今夜はフィレーネはお留守番だ。一足先に進むマントにつつまれたオーブの背中が見える。アントナーラでマントをまとっているのはオーブだけだ。

「本当は爺さんもマントつけなきゃいけないんじゃないの?」

 オーブに続くハロルドにハルトは声をかけた。

「わしは隠居じゃ、と言うておろうが。面倒なことには首をつっこみとうない」

「でも話が込み入って大変なことになったら助けてくれるから心配するな。ハルト」

「カッツェは余計なことを言わんでええ」

「ハロルド様は優しいもんねぇ」

 念入りに化粧を施され、透明感のある桃色に色付けされた瑞々しくぷるんとしたノエルの唇が張りのある声を出した。赤いロングドレスを着込み、桃色の髪を結い上げた淑女然としたノエルにそう言われると「まぁな」と、ハロルドが諦めたように折れた。

 コルセットに締め上げられ、ほっそりとした腰の上にのる豊満な胸元はハートシェイプに開き、ストラップのないバックリボンまで背中が大きく開かれた白い肌にふんわりと純白の鳥の羽のストールを巻く夜会服姿のノエルは一夜にして大人になったようだ。

 すけべ爺じいの面目躍如だな、ノエルに言い返せてないし。でもそれには納得、今夜のノエルは貴族のご令嬢が社交界にデビューする時みたに綺麗だ。

 スカートを膨らませる下着のパニエが、元々ヒップが豊かなノエルをさらにズドン、キュン、ボンッのスリーサイズを強調している。足首に巻かれた白いパンプスから繋がるレースを運んで、ノエルが真紅の絨毯に足元を沈めながら歩く。

「王族からお呼ばれになる可能性があるですって!?」コロシアムでのやり取りを聞き、慌てた側仕え達はドレスを探して走りまわった。しっかりと化粧を施され、幾通りもドレス着替えて決められたドレスに合わせた宝飾品が掻き集められたのだ。あーでもない、こーでもないと仕上げられたノエルには専属の女性の側使えが1人付いている。

 姫様のいないアントナーラで側使えの念願が叶いましたわ!って側使えさん達は喜んでたみたいだけどそれにしても。

 女の子から女性になったノエルに見蕩れるハルト。

「今夜のノエルは本当にお姫さまみたいだな」

「だよねぇ。こんなことになるとは思ってもみなかったよぉ。舞踏会に行くみたい」

 にしし、当のノエルはご機嫌な様子だ。

 やっぱり女の子なんだな。最近は自分の夢に向かってなりふり構わず頑張ってるイメージが強かったけど。継ぎ接ぎのついた作業ズボンでノエルが除虫菊の藁束を運んでくれたのが遥か昔に思える。

 細かい編み目模様の白いレースの手袋が覆う指先でワンピースのスカートの端をちょこんとつまみ上げて広い階段を一歩一歩上がるノエル。一行が三階に上がるとモノトーンの執事服姿の男に導かれて会場に入った。

 舞踏会、ノエルの使った言葉はあながち間違ってはいなかった。会場のダンスホールは吹き抜けの高い純白の天井から趣味の良いシャンデリアが吊り下げられ、精巧なステンドグラスの大きな窓の前でバイオリニスト達が優雅に音楽を奏でている。シャンパングラスが置かれた幾つもの丸テーブルがホールを囲み、ニ階にはバルコニーと貴賓席の窓が見える。ゆったりと流れる音楽に緊張がとけたハルトは給仕に勧めらて飲み物を手に取った。酒類ではないところに並んでいたものだがシャンパングラスに泡がたっている。飲んでみるほのかに果物の香りがする炭酸水だった。アントナーラの騎士達を迎える王都の騎士達も正装だ。普段は武骨なアントナーラの騎士達も借りてきた猫のように紳士に振る舞っている。

 グラスを片手にその様子を見つめるハルトにジョナサンが近づいた。

「この雰囲気も最初だけだ。場が砕けてくると騎士同士の会話と口調になる。ハルトは私に付いていろ。きっとものすごい数の挨拶が来るぞ」


 しばらく雑談が続くと、騎士達が一段高く据えられた舞台に注目した。騎士団総長のキザイアが壇上に上がる。第二王女であるキザイアだがドレスではなく鎧とマントをまとっている。貴賓席のバルコニーからそれを見下ろす王と王妃、オーブが姿をあらわす。隣のバルコニーには第一王女、その隣の窓には2人の王子の姿も見える。キザイアが金髪の巻き毛を揺らして舞台の前面に立った。

「アントナーラの騎士をここに迎えることが出来て嬉しく思う。今宵はざっくばらんに交流を温めて欲しい。よく食べる騎士のことだ、食事は多めに用意してある。まずは腹を満たしてからゆっくりと交流すれば良い。くれぐれも飲みすぎないように」

 厳しい口調から一転して最後に笑みを浮かべたキザイア。それを合図に騎士達の懇親会が始まった。

 立食形式にもかかわらず両陣営の騎士たちの腹ごなしにみるみる料理が消えてゆく。酒をついで回る給仕達が忙しそうに立ち回り、何度も追加される料理の減り方が落ち着いた頃に両陣営が少しずつ混ざり始めた。旧知の間柄であるらしい騎士同士が話を始めたのをきっかけに懇親会が本格的に動き出す。

 自ら挨拶に向かう相手のいないハルトをはじめとした航空運用部のメンバーと若手のユージンにはジョナサンがついて来客を紹介し、自己紹介が進む。次から次へと絶え間なく挨拶に訪れる来客。

 言って良いことと悪いことは叩き込まれてるけどやっぱ大変だな。知り合いがいるわけでもないし。

 人あたりというのだろうか、酒に酔うよりも人に酔いそうな空気に圧倒されるハルト。

 ノエルも覚えたばかりのカテーシーをくり返して必死に挨拶をしている。

「これもそう長くは続かない。もう少しだ、頑張れ」

 ジョナサンに励まされ、何とか挨拶タイムを終えた航空隊メンバーがほっと一息をついた。

「一杯だけ飲もうかな」

「俺も」

「俺も……」

 カッツェにハルトとミックが続いてシャンパンで喉を潤す。

「うまいな!」

 カッツェでなくともそう言いたくなるような甘味と苦味、酸味のバランスが取れたさらりとした喉ごしの果実の恵みはいくらでも飲めてしまいそうだ。

「非常に飲みやすいですがアルコール度数はワインとかわりません。お気をつけてくださいね」

 燕尾服に蝶ネクタイ姿のデニスの顔はすでに赤くなっていた。

 ハルト達の挨拶が一段落するのを見計らっていたのか、キザイアと黒騎士が航空隊に向かって歩んで来た。

「あらためてよろしく。ジョナサン隊長、ハロルド様、それにハルベルトにカッツェ、ノエル」

 ハルトはジョナサンに倣って背筋を伸ばし、胸を叩く敬礼を返した。ウィスキーグラスを置いたハロルドは敬意のこもった頷きをもって返答とした。

「私の側近、マティスとグレースだ」

 黒い鎧の精悍な2人の男が鎧の音をたてて機敏な敬礼をする。

「しかしグレースを落とすとはな。紫色の初号機に乗っていたのはハルベルトとカッツェだな」

「はい」

「奇遇なことにこマティスはカッツェと、グレースはハルベルトと同い年だ。今日の手合わせでは敵であったが現実的には協力して対処にあたる場面もあるだろう。よろしく頼む」

「「はっ」」

「ノエル」

「はいっ!」

「エレオノーラが話をしたいと言っていた。妹は本ばかり読んでいて友人といえる者がいなくてな。よい機会だ、親交をあたためてくれると嬉しい」

「もったいないお言葉、ありがとうございます」

「では、また後ほど」

 マントと金髪縦ロールを翻したキザイアに黒騎士達が付き従って背を向けた。


「ひ、姫さまがお友達だって」

「ノエルが大出世だ」

「念願叶ってよかったじゃん」

 からかう様なカッツェとハルトの反応をノエルの側使えがたしなめた。

「姫様とお会いするなんて!!これはそんな簡単なことではございませんよ!ああー、お洋服を新調しないと。ノエル様、これが終わったらお体を採寸してドレスを仕立てます!」

「すいません。よろしくお願いします」

 ペコリと頭を下げるノエル。

「姫様のご友人らしく振る舞って下さい。ノエル様はアントナーラの貴族なのですよ。頭をお上げ下さい」

 そういえばクスノキ・パッカードの役員になってるからノエルもアントナーラの準貴族なんだよな。

「貴族教育、厳しいかもだけど頑張れよ」

「ほえ~、名前だけかと思ってたのに大変なことになっちゃった」

「明日からビシバシ覚えて頂きます。お覚悟をお決めになって下さいね」

 にっこりとノエルに微笑む側使え。

「よろしくお願いします」

「本日は私がつきますのでご安心下さい」

 ああ、アントナーラに姫さまがお生まれになったようだわ、本人よりも側使えの方が舞い上がってしまったようだ。


「ハルト、オーブがお呼びだ」

 そこにベンヤミン団長がハルトを呼びに来た。正装の軍服に勲章を下げた如何にも将軍という装いのベンヤミン。ニ人が連れだって階段の下にたどり着くと衛兵に敬礼をされ階段を昇る。ベンヤミンに案内された部屋には王と王妃にマントを外したオーブが向かい合い、それぞれの陣営に付いている三人の執事が壁際に控えている。

「失礼します」

 ベンヤミは部屋には入らず、ハルトは一礼をして促されたオーブの隣の席に座った。開かれた窓からは階下の音楽と話し声が聞こえてくる。一人の執事が窓とカーテンを閉めると外の音が遮断された空間にロウソクの明かりが揺れる。部屋の壁にも臙脂えんじ色をした厚手のビロードのカーテンが引が引かれ、それが視覚的に高貴な人が使用する部屋であることを主張し、音を吸い込む様は密室であることを強調しているようにハルトには思えた。


 思いのほか距離感が近づいた王の口が開く。短い銀髪の下の目つきは鋭い。

「本日の手合わせ、見事であった。我が方の切り札の弱点をあの短時間で見切るとは、さすがは飛甲機の開発者だと思った」

「皆の努力と知恵、そして観測から得た情報から導いた予測が偶然当てはまった結果なだけです」

「観測から得た予測ですか」

 ハルトの言葉に答えたのは燃えるような赤い髪をまとめた王妃だった。

「そうですね。それは意識していました。対フォルマージユ戦は地上に縛られています。ならば三次元、つまるところ空中ですね、そこからなら安全かつ客観的に観測と分析ができます。今回の飛甲機の主な役割は負傷者の後送と共に、客観的な観測と迅速な報告でした。グレースを攻略できたのはそこから導いた予測がたまたま当った結果に過ぎません」

「理解しました。しかしそう謙遜せずとも良いでしょう。フォルマージユを倒した、という結果を出したのですから。それは価値のあることです。そしてハルベルトが言うように飛甲機による後送、観測、連絡こそが奥森との境においてその有効性を発揮する任務となるでしょう。飛甲機の存在は蟲からの防衛任務を大きく変えます。人の移動がこれまで数倍楽になることを加えれば量産するに値するものだと考えます。議会で飛甲機の量産を推し進める説得材料として、今日のフォルマージュを倒したという結果は価値を持つことでしょう」

「その説得は協議会での審議内容を元に議会で進めることになるのだが、その前に個人的に飛甲機とその発案者について知っておきたくてな。発案に至った経緯を話してもらえるか?個人的なことも含めて」

「はい」 

 ハルトはオーブと事前に打ち合わせ済の経緯を述べてゆく。転生者だということはふせつつも自然な流れで語っていった。

「なるほど、イクリスの祝福か。それで貴重な通信魔道具であるTバードを授けられた、というわけだな」

 そうか、当然王族もTバードを持ってるよんだよな。俺のアカウントがあるのも知られてて当たり前か。

「ハルト、王とマリア王妃とは大型飛甲機の共同開発という方向で意見の一致をみた。これからの協議で政治的にその方向に持ってゆくことになる。それと共に現行のロッキ型の量産体制の確立を目指す。その政治的な進行と歩調を合わせて技術交流の場で飛甲機の機密を随時公開してもらいたい」

「分かりました。公開レベルには政治的判断が必要だということですね」

「ほう、良く分かっておるではないか?貴族の家系でもないのだろう?」

「はい、職人のせがれですが、オーブに息子同様にかわいがってもらってますので」

「よい男と出会ったな。オーブ」

「いや、その、」

「照れなくてもよいのですよ。オーブがいつまでも独身なので後継者がどうなるのか案じていたのですから」

「伴侶のご紹介を無下に断ってしまった無礼をお許し下さい」

 オーブ、王族からの紹介を断ってたのか。でも後継者って……。まぁ、それは後でいいか、絶対に断るし。もしかしてこれもオーブの政治? 王族から言質取っとこうみたいな? いやいや、考えすぎはやめとこう。――そうだな、いい機会だし今度はこっちからもちょっと突っついてみようか。

「フォルマージュには驚かされました。あのような巨大な騎士がマナから生まれるなんて」

 俺が知ってるのはもっとデカイけどね。アニメとかの世界での話だけど。

「確かにフォルマージュは局所的には非常に大きな戦力となるでしょう。しかしマナの消費も非常識に大きいのです」

 やっぱりか。

「費用対効果の面では飛甲機に大きな優位性があると考えます。これを政治的に伝えてゆかなければなりません。そして政治とは複雑なものなのです。オーブ、その辺りもハルベルトにレクチャーをよろしくお願いしますね」

 ハルトはオーブの顔をうかがった。

「そう心配するなハルト。何もお前に政治をやらせようというわけではない。理解はして欲しいが。そういう背景があることを知った上で技術交流に望めば良い」

「はい」

「ではあらためて長女を紹介しておきましょう。アンナを呼んで貰えますか」

 王都の執事の一人が退出し、しばしの時をおいて第一王女を連れて戻ってくる。

「第一王女のアンナ・ローレン・グランノルンと申します。よろしくお願いいたします」

 優雅なカテーシーと柔らかい物腰。優しさがにじみ出るような姫の挨拶にハルトは騎士の礼で返礼し自己紹介をした。

「アンナも座りなさい」

 歓迎の式典と同じベージュ色のドレスだがアンナも夜会用の装いだ。均整の取れた美しい身体のラインが出るマーメイドスタイルのドレスの胸元を真珠のネックレスが彩り、エンジェルスリープの半袖から伸びるしなやかな腕はレースのオペラグローブが肘先までを覆っている。小さくも気品漂うティアラが乗った頭から流れる長いサンディーブロンド。背が高いことを考慮したのか足元はハイヒールではなくドレスと同色のオペラシューズを履いている。

 さすがは王女さま、綺麗な人だなぁ。キザイア様もお美しいけどキツめだ。この方はおっとりとしてる感じで、大人だけどかわいい系だな。

 優しげな面持ちのアンナ王女が席につく。

「それでだ。飛甲機についての王族からの担当をアンナに担ってもらおうと思っている。もちろん騎士団総長であるキザイアも関わるがキザイアは騎士団の代表という立場になるのでな」

「承知いたしました。アンナ様、よろしくお願い致します」

 ハルトはオーブに続き手を膝において頭を下げた。

「何かとお世話になると思いますがよろしくお願いします」

「あら、しっかりした方ね。アントナーラの騎士の方だと聞いていましたので、もっと猛々しい方かと思っておりました。私も安心いたしましたわ」

 アンナの柔らかさを体現したような口調にハルトも内心安堵した。

「アンナ王女。ハルト、失礼、我々はハルトと呼んでいるものですから。ハルベルトは騎士団に入団したばかりの技術畑の人間なのです。ご指導をよろしくお願いいたします」

「ご指導だなんて。わたくしに出来るのは政治です。技術のことは専門外ですのでで協力して進めて参りましょう」

「はい」

「でも今日の模擬戦と手合わせでは操縦をなさっていたのでしょう?騎士との連携も見事でした。フォルマージュとの模擬戦では指示を出していたようにも見受けられましたし、とても入団したての新人には見えませんでしたが」

「オーブや騎士団長の指導と皆との訓練の賜物です。王都の方々に恥ずかしいところを見せないようにしごかれましたから」

 誤魔化をかけるハルトと、あら、うふふふ、口を手で隠して笑みを溢すアンナ。

 おっとりしてるけど気は抜けないな。けっこういいジャブが飛んでくる。かわいい顔してるけど相当出来る人だ。この人。

「顔合わせも済んだようですし、そろそろよろしいでしょうか?」

 オーブの助け船だ。本気で助かる。

「そうですね。それではまた」

 下がるアンナを見送り、オーブに続いて席を立つハルト。

 王と握手を交し、王妃の手の甲に口づけをして敬意を示したオーブと共にハルトは退出した。


 オーブに割り当てられた個室にアントナーラの執事と共に入ると執事がドアを閉める。それを確認した瞬間にオーブはソファーに沈み込んで足を投げ出した。

「水を一杯くれんか。あー緊張した。俺には向かないだよなぁ、こういうのは」

「そうなんですか?そんな風に思ってるなんて微塵も思いませんでしたけど」

「そりゃそうだ。態度に出すほど素人じゃない。しかし得意か? と聞かれれば苦手だ! と迷わず答えるだろうな。ハロルド様は付き合ってくれんし」

「隠居が夢じゃった、って言っちゃう人ですからね。もしかして似てるんじゃないですか?オーブとハロルド様って」

「そうかもしれんな。ハロルド様も嫌というほど似たような経験をしてこられているのだろうし」

「それはそうと僕は後継者にはならないですからね」

「そう言われると思った。マリア様があれを言ったときに、言われるだろうなぁこれは、と思っていた」

 そうだったのか。疑ってごめんなさい。

「でも頑張りますよ。アンナ様も手強そうですし」

「あの短時間で分かったか。お前はさとい。しかしハルトも聞いた通り、飛甲機に関しては王族はどちらかというと味方だと分かった。アンナ様の件は俺達にどうこうというよりも後継争いをキザイア様に極端に傾けたくないという配慮だろう。詳しいことは追々話す。今日はここまでいい。降りて懇親会を楽しんで来い」

「分かりました。ありがとうございます」

 さっきは抜けられて良かった、と思ってたのに今は早くノエルやカッツェ達のところに戻りたい。現金なもんだ。

 足早に階段を降りたハルトは仲間達のいるフロアに戻った。

飛甲機量産体制を確立するために『政治』に巻き込まれてゆくハルト。

次は意外なところから情報がもたらされます。

次回「光射す」金曜日の投稿になります。

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