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甲殻の翼  作者: 月弓 陽
第2章 ロダ村編
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閑話 ノーラと珠絵のコスプレ撮影会

続きます。

ノーラに屈辱的な敗北をきした翌週の日曜日、私は指定された大型ショッピングモールの入り口でノーラを待っています。

 買い物客が変な人でも見るように私をチラ見して通り過ぎます。

 今日の私は迷彩のロンTにカーキ色のカーゴパンツにブーツと、サバゲーではお似合いでも買い物をするには不自然な格好をしています。

 私だって買い物に行く時は女の子らしい格好したりもするんですよ?普段は。

 マシンガンを買いに行った時は盛り上がってしまいアーミールックフル装備で街を歩いてたら職質されましたけど……お陰で次の日学校から呼び出しをくらってしましました。しかもあの日は午後から保守点検がどうのこうので朝から呼び出されるわ、進路相談に来ていたタクヤンにからかわれるわ、で大変でした。


 今日はノーラに「タマちゃんは出来るだけ自衛隊の人の格好して来てね」と言われているのでしょうがないのです。私は背が小さいので更に大きく見えがちな大容量のバックバックには自衛官のジャケットとナイトスコープ付きのヘルメットが入っています。

 ヘルメットは裕也に陸自のジャケットを借りにいった時にこれも持ってけ!と突き出されたものです。女心がわからんヤツなのです。でも先輩みたくさり気なく優しくしてくれるのを裕也に期待する方が無理なのです。


 黒いワゴン車が止まりました。運転席にシャークマウスさんの姿があります。

 シャークマウスさんとはあの後、香里さんと一緒に仲良くなりました。

「ノーラの友達の珠絵だっけ?お前最後まで諦なかったんだってな。機会があったら今度遊ぼう」

 とサバゲー界の有名人に誘われてしまったのです!本気で嬉しかったのです!!出会うキッカケをくれたノーラに感謝ですよ。

 そのノーラが降りてきました。遥斗先輩の妹の真櫻まおちゃんもいます。

「おっはよー、タマちゃん」

「おはようなのですノーラ、今日はこんなところでこんな格好させて何をするのです?」

「取り敢えず荷物運ぶよー」

 ノーラは大きなスーツケースを「うんしょ」と言いながら3つも車から降ろしました。

 他にも何リットル入るのそれ?なリュックにでっかいトートバックとちょっと引くレベルの量です。

「それじゃ、あたしは後で行くから。頑張れよー」

 何を頑張れば良いのか分からないままショークマウスさんはバンを運転して行ってしまいました。

 

 仕方がないのでノーラと真櫻ちゃんが持ちきれない荷物を持ってショッピングモールに入ります。

 64式小銃の電動ガンも持っているので大変です。

「ノーラ、そろそろ説明して欲しいんですけど。こんなところで撮影会なんてさせて貰えるのですか?」

「ほら、これこれ!」

 ノーラが壁に張られたポスターに近づいてポンポンと叩きます。

『アニメフェスタ開催! コスプレ撮影会も特別開催!』と書かれています。


「ええーー!!自分達で撮影し合うんじゃなくて撮影されるのですかっ!?」

「そうだよ、やり甲斐あるでしょ。うふふん。さっ、控え室行っくよー」

「ちょっ、恥ずかしいですよ!」

「だいじょーぶ、だいじょーぶ。タマちゃんのコスも持って来たから!」

「大丈夫じゃないですってばーー」

 

 結局、押し切られて控え室に入ってしまいました。テーブルに鏡が並び、布で仕切られた着替えをする所もあります。私達の他にも何グループかいて、派手な衣装を着てメイクを始めています。


 わたしはナイトスコープ付きのヘルメットと64式小銃を取り出しました。

「うわー完璧!タマちゃんわかってるぅ」

 依然として何のことだかよくわかりません。

「衣装はそれでオッケーだけど、私が用意してきたものがあるからマオマオから受け取ってね」

 ノーラが着替えに入りました。

「わたしは今日はピンクの地毛を活かして攻めるよ」

 訳のわからないまま事態が進んでゆきます。

 先輩の妹の真櫻ちゃんが何やら取り出しています。

「はい、これを着けて下さいね」

 にっこりと笑いながら差し出されたのは黒いブラでした。しかもEカップくらいありそうなカップにパッドが入っています。

「珠絵さんBくらいですよね。ちょうど良いパッド具合だと思いますよ」

 グイグイと押し付けられてついつい受け取ってしまいましたが本当はBだと少し大きいくらいなのです。少しですよ? 私はそれを隠しつつ尋ねます。

「自衛官なのになぜ巨乳を装わといけないのですか?」

「そういうキャラだから!髪の毛もセットするんで早く早く」

 何なんですかー!ちっぱいが好きな層もいるんですよ!?慎ましい胸中でそう叫びながらも着替えの仕切りに入ってブラを着けます。偽物の谷間だと分かりつつも、谷間のある人ってこんななんだ。重くないのですかね?肩こりそう、なんてついつい考えてしまいます。

 ぱっつんぱっつんになった迷彩Tシャツの上からジャケットを羽織り、カーテンを開けると真櫻ちゃんがメイク用に長机で手招きしています。

 慣れた手付きで髪の毛にワックスがつけられクセッ毛風にされると頭の左上でサイドポニーっぽく纏められます。

「これをジャケットに付けたら完成ですよ」

 渡されたのは二等陸曹のワッペンでした。こんなもの良く持ってますね。何のキャラなのかさっぱりわからないまま、どうやら私のコスプレというのが完成したらしいです。

 

 ノーラが着替えを終えて出てきました。魔法少女みたいなピンクの衣装を着込んでいます。これは私も知っています。見始めた時は「何この子供向けなアニメ。なんで名作とか言われてるの?」だったのですが、転校してきたほむらちゃんは実は親友でタイムリープを繰り返して何度も魔法少女を救おうとしていたことが分かった時にはジーンとしました。

 ノーラがメイクを始めます。真櫻ちゃんが「ばっちり可愛い系のメイクになってるよ」と言いながらノーラのメイクを手伝います。


「次の方お願いしまーす」

 係の人が呼びに来て廊下に出ます。

 ショッピングモールの広場に繋がる扉の前で待機です。

「たまちゃん。自信をもってポーズを決めるんだよ」

 真剣な表情のノーラに私は思わず頷いてしまいます。

 扉が開かれました。天井が吹き抜けの広場にはカメラを持った男の人が沢山いました。ほとんどがおっさんです。いやぁああああ。

 

 でも逃げる訳には行きません。

 女の意地を見せるのです。私はノーラに続いて歩きます。


 幸い今の私は私の勝負服の軍服です。負けるわけにはいきません。カメラを構えた男達の中に進むと「出来るだけ自衛隊の装備で」と言われて借りてきた64式小銃を構えます。


 フラッシュが目に痛いです。


「お兄ちゃんは行けたら行くって言ってたよ」

 そう真櫻ちゃんが言っていた遥斗先輩はいないようです。

 シャークマウスさんもスマホで私を撮っています。

 

 男たちのフラッシュが途絶えることはありません。

 ノーラは私の何倍も浴びています。ポーズを幾つも変えて余裕の表情です。

 負けてられませんね。私もポーズを変えてゆきます。眼鏡を外しているのでカメラのおっさんはよく見えません。もう何でも来い!です。


 ノーラが振り返って「おつかれ、着替えに行くよー」と連れられて、とてとてと控え室に戻りました。

「さすがはタマちゃん、様になってたよ!」

 私は褒められると調子に乗るのです。

「これくらいどんと来いです!」

「いいねー!!それじゃ次、これに着替えて!」

 ノーラに渡されたやけにフリフリした衣装に着替えます。ゴスロリって言うんでしょうか?こういうの。

 黒に赤いフリルがついたフリフリを着て出ると真櫻ちゃんに頭にウィッグを被されました。前髪ぱっつんの黒髪に赤いリボンと猫耳みたいなのがついています。

合点がいきました。自衛隊が異世界行っちゃうやつなのです。

それで自衛隊かぁ。何だか騙された気分。

短いスカートからガーターベルトがちらちら見えて恥ずかしいんですけどっ!

スカートを押さえてモジモジしてしまいました。


 ノーラは抜群のスタイルにピッタリ吸い付くような黒い生地のパイロットスーツみたいなのを着ています。

 ノーラって、どっちかというとぽっちゃり系で出るとこ出てるのにウエストがキュッってズルい。腕と脹脛ふくらはぎがぼわんと膨らんでいて蛍光グリーンの目のようなものがついたデザインになっています。ボディーはピッタリ系なのにフードもついたちょっと不思議なパイロットスーツです。片足だけオレンジ色でそこから胸にオレンジのラインが伸びています。


 「かっこいい系のメイクってこうやるのかぁ。勉強になるなぁ」

 ノーラのメイクを見ていた真櫻ちゃんが私にメイクをしてくれます。

 目が大きくなったような気がします。

 私がメイクをしてもらっている最中にメイクを終えたノーラが何やら組み立てています。長い槍の先に大きな斧がついてる武器です。それを受け取って先の細い赤いブーツに足を通して廊下に出ます。


 前のグループが出てきました。会場から大きな拍手が聞こえます。

 「やっぱ、いまだに人気だなぁ。あのコス」

 ノーラが見つめるのは白と赤の中世の騎士風の少女です。閃光のなんとかってやつですね。相方の男の方は黒いロングコートをひるがえして男性の控室に入っていきました。


 会場に入ると私の方が注目されました。

「自衛官から死神様か。流れ分かってるねぇ」

 怒涛のごとくフラッシュが光ります。ちょっ、足元から撮らないで下さい!

 小学校の時にバトンが得意だった私は、武器を回しドンッ!と床につけて威嚇しました。

「おおー」と逆に盛り上がってしまいおじさん達の視線が近いです。助けてーーーー。


 反応の鈍かったノーラは「これジ・エンドのパイロットスーツだ!しかもテレビ版!」

 そう言ったおじさんの言葉に触発された人達に囲まれて撮られています。

 ハアハア言いながら、黒いぴったりスーツの胸の頂点にある2つのオレンジ色の丸を接写してる人もいます。

 あんなの接写してどうするんですかね?あれはもうセクハラなんじゃ??


 やっと出番が終わって下がります。

「あんなに近くで撮られて恥ずかしくないんですか?」

「大丈夫だよ。ヌーブラしてるし」

 ノーラはスーツの隙間からペロンと肌色の物体を取り出しました。

 「それより次まで時間がないよ。急ぐよ!」

 

 早足のノーラに連れられてメイクを落としてまた着替えます。

 今度は普通の服でした。敢えて言うなら小学校の制服みたいな。白いブラウスに黒いスカート、黒い肩紐をかけます。ピンクのリボンを胸につけていると「これを履いてね」と差し入れられたビニール袋にはうさぎさんパンツが入っていました。

 下着まで変えるんですか??

 さすがに抗議しようとカーテンから顔をだしてノーラを探します。けれど真櫻ちゃんしか見当たりません。

「それ大事なポイントらしいから早く着替えて下さいね」

 にっこりと笑う真櫻ちゃんに逆らえず、渋々自前の黒いスポーツパンツから履き替えます。

 外に出ると真櫻ちゃんが尋常じゃない大きさピンク色のリュックに丸めた新聞紙をいれてふくらませていました。恐竜の足のモコモコスリッパがついています。

 ツインテールのウィッグを被せられ「演技指導するね」とノーラが近づいてきます。


 ノーラは赤くて短いチャイナドレスに黒いスパッツ、足の指が見えるくるぶしまでの黒い草履を履いています。太ももに忍者の武器がついています。どうやら忍者の里のヒロインのようです。


「これで最後だから気合い入れて行くよ」

 広場に入りました。

 私は「こういう風にやるんだよ」とノーラに言われた通りに頭をコツンと叩きます。

 その後「失礼、噛みました」と言わなければならないのですが、緊張してホントに噛んでしまいました。

 私は誤魔化しながら舌を出しました。てへぺろ。


 ノーラはおっさんというより子供達に大人気です。


 男達の舐めるような視線から開放されて、やっと撮影会が終わりました。

 ノーラは「最後ちょっと子供向けすぎたかなぁ」と不満そうです。

 「でも日本愛にあふれてるから自分的にはオッケー!」と勝手に納得しています。


 人気ひとけの無くなった広場に大量の荷物を持って出ます。

「よお、お疲れ。面白かったぞ」

 柱に背中を預けている遥斗先輩が手を上げました。


「み、見てたんですかっ!?」

「最初からいたよ。珠絵のロリっ子最高だったぞ」

「な、何言ってんですか!!撃ちますよ!!」

「あはは、タマちゃん好評だよ。ほら」

 ノーラがスマホのツイッタを見せてくれます。シャークマウスさんがアップした写真のコメントは英語です。外人さんが私の写真に、She 's so cute!とコメントしていました。


「タマちゃん国際デビューだね。わたしも念願のレイヤーデビューだよぉ!」

 ノーラが抱きついてきました。

「もー、ちょっとっおお」

「ノーラ、そうイジメてやるな。珠絵、今度はあたしと遊ぼう」

 シャークマウスさんが助け舟を出してくれました。

 ジーンズにパーカー姿のシャークマウスさんもとても格好いいのです。

 しょうがないですね。シャークマウスさんことブリジットさんを紹介してくれたこともありますし許してあげましょう。


 憧れになったブリジットさんの車に乗せてもらって、遥斗先輩に真櫻ちゃん、ノーラと一緒の帰り道。何だかみんなととても近い友達になったような気がします。


 これからもっと面白おかしい事が起こりそうですね。

 

 そんな予感に私は包まれていました。




IFルートの閑話でした。

珠絵の存在も忘れないで下さいねw

月曜日から本編に戻ります。飛甲機開発を軸にハルトとノエル、アリシアの三角関係が深まってゆく模様です。

良い週末を~です☆

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