表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
甲殻の翼  作者: 月弓 陽
第2章 ロダ村編
22/148

ノエル先生 お買い物編

 二人は教会を出て水車小屋の前のバザールに向かった。

 少しコボルのスピードを上げてみた。ショコラが走ってついて来る。大丈夫そうだ。

 スピードを落としてまたのんびりと田舎道を進んでゆく。


「ハルは何を買うの?」

「野菜と果物、後は食器だって。ノエルの分じゃないかな?」

「後でマリーお母さんにお金渡さなきゃ」

「ノエルはお金を持ってるの?」

「貯めてたお小遣いもあるけど、アルフリード様からカルドを預かってきたよ」

「カルド?」

「燐貨みたいに使える札だよ。わたしがバザールで使う所を見てて。説明は使う所を見てからの方が分かりやすいと思う。大人は必ずカルドを持ってるしハルも成人式の時に貰うよ」

「それじゃカルドは一旦置いといて、コインの種類なんだけどさ、何種類かあっただろ。それに燐貨りんかって何で出来てんの?」

「えっへん。コインの種類ついてはまとめてありまぁす。燐貨は奥森の燐窟りんくつっていう所で採れる蟲の燐粉りんぷんで出来てるよ。だから光るの」

 ノエルは伊右衛門にエルーを寄せた。

 腰のベルトに付いた皮の小物入れから紙を取り出してハルトに手渡す。

 紙には『コインの種類と一枚で買えるもの、大体』が表になっていた。


「えーと、錆燐貨さびりんか茶燐貨ちゃりんか白燐貨しろりんか青燐貨あおりんかの順で価値が上がっていく、と」

 ハルトは表を見て大体の価値を換算してゆく。


 錆燐貨=  小銭  =  10円

 茶燐貨=ジュース1杯= 100円=銅貨に相当

 白燐貨= 外食一食 =1000円=銀貨に相当

 青燐貨=一泊二食付 =  1万円=金貨に相当


 って考えればいいか。今持ってる銀色のが白燐貨ってことだよな。

 ちゃりーんが100円、しろ1000円。まずこれを覚えよう。

 やっぱ金属は無いんだろうか?


「商人は白2に茶燐5、みたいな言い方するよ」

「なぁ、この世界に金色とか銀色って言葉はある?」

「あるよ。王都の神殿に古の神具があって、黄色っぽく光るのを金色、白く光るのを銀色、茶色く光るのを銅色って呼ぶところから来てる。お金っていうのも大昔は金色のコインを使ってたからなんだって。見たことないけど」

 いにしえの時代には金属があったってこと?うん、また謎が増えた。考えるの止めよ。

 

 水車小屋が見えてきた。バザールは人が増えていて盛況のようだ。

 楽師がカントリーのような音楽を奏でていて賑やかだ。

 

 ハルトとノエルは繋ぎ場にコボルを繋ぎ、鞍から皮のバッグを取り外してテントに向かう。

「野菜と果物の種類や良し悪しは分かる?」

「メモを見たけど野菜は大体見当がつく。良し悪しも分かると思うよ。果物は自信ないな」

「じゃ、まず野菜から買おう。ハルが買ってみて」

「了解」

 ハルトは周りの様子を伺いながらピーマルにトメト、レタルに紫芋、とメモを読みながら見繕みつくろってバックに入れてゆく。ノエルに間違いがないか確認して貰うとオッケーが出た。

 店主に「これ下さい」と声を掛ける。

「まいど!白1、茶燐8ね」

 ハルトが革袋から燐貨を出そうとするとノエルに制された。

「白1茶燐3」

「嬢ちゃん、それはちょっとキツイなぁ」

「じゃあ、茶燐5でどうかな?」

「今日は品物もいいから茶燐6でよろしく!」

「そうだね。いい品だもんね。ありがと」

 もう払っていいよ、とノエルから目配せを貰ったハルトは白燐貨を2枚渡して4枚の茶燐貨のお釣りを貰う。

へーえ、交渉するのかぁ。面白そうだけど面倒だな。慣れないと一人で買い物は難しいかも。


「果物はわたしが買うね、お財布を貸して。ハルは見ててね」

 果物が並ぶ隣のテントにはスイカにバナナと見慣れたものから、見たことがない南国風の果物も並んでいる。ノエルはバナナとピンク色のリンゴのような果物を取った。

 試食用に小さく切られたそれを食べるとリンゴの食感から桃の甘みが染み出してくる。 

 美味い!

 ノエルは茶燐4と言われたのを茶燐3錆5で決めて移動する。

 次に食器と籠や蝋燭などが置いてある雑貨屋のテントで白い皿を2枚と紺色の模様のついたスープ皿一つを白3で買った。3000円だ。


「食器って結構高いんだな。皿1枚茶燐1くらいかと思った」

「この値段なら普通だよ。ハルトの世界では安いんだね」

 そう言えば100均の感覚で考えてたわ。普通そんなもんか。ちょっと高いかな?


「次は本屋さん行こう!マーちゃんの漫画は値段が決まってるからハルが買ってね」

 本が並ぶテントに入ると一番手前の平置きコーナーに『別冊ひまわり9月号』を見つけた。ちなみに週刊誌はないらしい。別ま、を手にとってテントを見て回ろうとすると

「若者向けの本はこっちだよ」

 とノエルに手を引かれた。本棚の一角に入ると文庫本サイズの本が並んでいる。「店主の一押し!⇩」と書かれた紙の下に美少女のイラストが表紙の本が積んである。

 

 青春蟲野郎は機械人形の夢を見るか?

 

 ハルトは思わず声を出して笑ってしまった。タイトルが壺にハマった。

 青春シリーズ好きだったなぁ。映画も見に行ったし。円盤出たら小遣い貯めてでもポチろうと思ってたくらいだったのに。あーポッチとな、したい! けどラノベっぽいのあったからお買い物っと。でもお金持ってないや。


「俺も小遣い持ってくれば良かったよ。納得のお値段だし」

 値段は茶燐6。600円だ。

「わたしが立て替えてあげるよ。カルドの使い方を見せるからわたしのと一緒に買うね」

 ノエルは『二人だけど三角形の恋」という本を取って入り口に戻る。

 まんまラノベだな。ひゃっほい!この世界にもラノベありました。神に感謝を!って両手を上げたい気分だわ!


 ハルトは茶燐を5枚渡して漫画を受け取った。ノエルは2冊の本を店主に渡すと

「カルドでお願いします。これが依頼書です」

 店主はノエルが見せた紙を確認すると目を丸くした。それから机の中から何かの道具を取り出して紙の右下に当てた。

「かしこまりました。ありがとうございます。0コンマ12マナリーになります」

 机の上には30センチ程の石で出来た四角柱が立っている。

 そう言えばこれ、どこのテントにもあったな。

「どうぞ」

 店主が言うと石柱の中心が光った。そこにノエルがカードをかざすと、ピッと鳴ってカルドと石柱がホワンと光った。

「確かに頂きました。控えはご入用ですか?」

「お願いします」

 電子マネーかよ。それともクレジットカード?っていうかマナリーってコインと単位が違うんですけど。白1茶燐2の本がコンマ12ってことは1マナリー1万円って事だな。結構単位が大きい。

 領収書のようなものと紙袋に入れられた本をノエルが受け取ってテントを出た。


「カルドの使い方は大体分かったよ。あの見せてた紙は何?」

「カルドは大人しか使えないの。それに持ち主にしか動かせないんだよ。お使いでカルドを使わせます、っていう証明書を見せると使えるようになるの。証明書にはカルドの持ち主のサインと有効期限が魔術のこももったインクで書いてあって、それにあの道具が反応したからお買い物が出来たんだよ」

 魔道具だけじゃなくて魔術もあるんだな。

「マナリーって言うのは?」

「マナリーはマナの単位。カルドはマナをやり取りするものなの。大きい買い物や税はマナで払うんだよ。税で集められたマナはほとんどが奥森から危ない蟲が出て来ないように張ってる結界に使われるんだって」


 マナには貨幣価値も有って税として徴収されて防衛に使われる、と。よし覚えた。


「マナのことはまた話すね。今日はもう一つやらなきゃいけないことがあるから」


ノエルは食品のテントの列びから少し離れたテントに向かった。そのテントには物は並んでおらず、幾つかの机にそれぞれ商人が座っていた。

 ノエルは入り口の案内で、家畜を扱う商人は何処ですか?、と尋ねると案内された机の前の椅子に座った。

「本日はどのようなご用件でしょうか?」

「コボルを2羽買いたいんです。半月くらいで用意できますか?」

「2つ先のバザールが20日後になりますからその時で如何でしょう。年齢や色、オスメスのご希望はありますか?雛なら次のバザールに持ってこれます」

「4歳から5歳のグレーのオスと白とピンク系のメスをお願いしたいんですど」

「4歳から5歳だと一番値が張りますがよろしいですか?色や相性は何羽か連れてくるので選んで頂けるようにします」

「よろしくお願いします」

「今日は半金を頂きます。気に入ったコボルがいなければお返し致します」

「お幾らですか?」

「2羽で200マナリーの半分で100マナリーになります」

 えーーっ!ノエル200万の買い物するの!?

「180になりませんか?」

「鞍をお付けしますので190で如何でしょう?これで精一杯です。お願いします」

 商人が頭を下げた。

「カルドでお願いします」

「かしこまりました」

 商人が本屋よりもしっかりした道具で念入りに証明書をチェックした後に石柱が光った。ノエルは普通にカルドを当ててから領収書を受け取る。


「では20日後のバザールに来ますね」

「出来るだけ良いコボルを連れてお待ちしております。本日はありがとうございました」

 深々と礼をする商人を後にテントを出た。テントを出ると「やったぞ!大商いだ!」と言う商人の声と拍手が聞こえた。


「おい大丈夫なのか?金額が大き過ぎない?」

「アルフリード様に言われたことだから全然大丈夫。一羽はカッツェのだし。まだ他にも予算の決済権を貰ってきたよ」ニッコリ

「ノエル様についてゆきますぅ」

「うむ、苦しゅうない」

 二人で笑い合って繋ぎ場に戻った。ノエルのアドバイスに従ってハルトは買った物を一旦バックから出して鞍に付けてから両側のバッグに重さのバランスが取れるように荷物を入れ直す。今日は大して重くないけど癖をつけた方がいいとのノエルのアドバイスに従ってのことだ。


 ショコラが牧草地に走り去ってコボルを小屋に入れた。

 家に入り、食材と食器をリビングに置いてからマーガレットに漫画を届けに行こうとすると吹き抜けの廊下の下の工房からハルトを呼ぶ声がした。ハルトとノエルが降りるとジュノーが松明たいまつの棒を持って待っていた。


「お前、あの夜松明抜いただろ。直しに行くぞ。スコップ持ってついて来い」

 ハルトは手渡された細身のシャベルのようなスコップを担いで、3人は森の堺にある柵に向かった。

「松明は森を監視するのと小さな羽虫を出来るだけ集めて家に近づかせない為に必要なものだ。それが無いままだと困るからな」

「あの時は混乱してて……ごめんなさい」

「無事に戻って来たんだ。それだけで良い」


 ハルトは松明を抜いた穴を深く掘り直して棒を立てた。

 森のきわを見ると立派に腕を延ばして生えている木は皆同じ木だ。


「父さん、あの木は植えたの?」


「あの木は蟲除けだ。わざわざ蟲の出る森の際に住むなんて蟲殻の加工職人くらいだからな。あの木は蟲を寄せ付けない臭いを出してる。家の中で蚊除けに焚く粉はこの木の木屑だ」

「なんていう木だっけ?」



「楠の木だよ。我が家の御神木だ」



 父さんとノエルと一緒に立派にたたずむ楠の木を見つめた。




ノエルにお金の使い方を教えて貰いました。

今の家族と元の世界との繋がりが一つ。

燐貨とマナの価値は設定にまとめておきます。

次は、ノエルの誕生会と友達、です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ