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甲殻の翼  作者: 月弓 陽
セントラル編
133/148

アカシックレコード

 まだ朝の光が、風にそよぐ木の緑の間から降りてくる。小さな青い実りを下げた木を見上げながら焚哉は言った。

「この木は菩提樹なんだ。僕たちの世界ではルドラクシャだったけど、それって菩提樹のことなんだよ」

 ほう。ラフィーが感心している。

「それにルドラって言葉がルドラクシアに入ってますよね。思い出しました」

「ルドラがなんのか分かるのか?」

 いつになく鋭くなる幼女の金眼。

「ルドラとは――破壊神です。赤い褐色の体に金色の装飾を着て、弓矢を持つ女神です。昨夜の話と一致しますね」

 そう言われてみれば。昨夜の『使い魔』とラフィーが呼んだ女のほのおの赤と黄色は確かに赤い女が金色の装飾をまとっているようにハルトには思えた。

 弓矢と赤い体? 綾乃と何か関係あるのか?

 ハルトの思考を重い霧が覆う。飛び散る火の粉がハルトの胸の中で暴れ、小さな穴を穿うがつようにチクチクと刺さってくる。

 そんなハルトを置いて焚哉は続ける。

咆哮ほうこうする者とか、アスラっていう別名を持っています。僕達には阿修羅っていった方が分かりやすいよね。悪魔を指す言葉だよ」

「悪魔……破壊神か、あながち違ってはおらんじゃろう……」

 あごに手を持っていった幼女にハルトが歩み寄る。

「綾乃と関係はありませんよね。弓矢っていうのがちょっと気になって。使い魔が狙ったのも女子が寝ている部屋だったし」

「全くないとは言い切れんがほぼないと言っていい。特に神殿の中では気にすることではない。神殿の術式は昨夜とは比べものにならない力が働いている。時計塔の壁から内側にも術は働いておるじゃろう。逆に言えば、昨夜も使い魔しか出せなんだ、とうことでもある。使い魔は夜しか動けん。安心していい」

「ラフィー様」

 ノエルがラフィーに意見した。獣神であるラフィーを格別に尊敬している獣人けものびとのノエルにはまれなことだ。

「神殿の全体を見ながら中心に行ってみたいです。術式を調べる時間ができるだけ欲しいんです」

「貴石の回収はいいのか?」

 ハルトはノエルがいかに貴石を大切に思っているのかを一番よく知っている。

「貴石の色や配置に何かに意味があると思うの。それが分かってからの方がいいと思って」

「でも、この水晶を持っていった奴がまだいるかも知れない」

 現実的な判断を求めたマサルに、ラフィーは「なら外周を一周してみれば良い」

とアドバイスした。誰もいないことを確認してから戻ろうというのだ。

 三機のアバターシュが小隊を組んで外周を一周するのにそう時間はかからなかった。その間にサポート機チームは上に戻って食料や寝袋などの探索グッズを降ろして準備していた。


 アバターシュとサポート機を着地させた神殿上部の床には中心につながる線はない。「白い大理石に降ろせ、色を変える線と貴石は絶対に踏むな」ラフィーに念を押された床には色を変える直線の両側にひし形の貴石が埋め込まれている。外周の壁に埋まっていたひし形の貴石は立体的にカットがされたものだったが、床と完全にフラットのその貴石はダイヤモンドの輝きを放っていた。裏でカットされているようでひし形の中で立体的な光を放っている。

 遥か彼方まで続く白い床には東西南北をさらに二分割する八本の直線が中央に向かって伸びている。

「誰か来ればシンとラングが気づく。中心に向かおう」

 バックパックを背負い、定期的に色を変える一本の線に沿って中央に向かう。引率の幼女に続いて歩いた。

 床の直線とその両脇にあるひし形の貴石を踏まないように少し離れて歩みを進める。直線の両側には人の足の大きさくらいの貴石が誘導灯のように一定間隔で埋まっているのだ。十歩ほど歩くごとに現れるひし形は、赤が七つ続くとひとつ別の色を挟んでまた赤に戻った。七つの赤い貴石の間に配置されている別の色の貴石の順にも規則性があった。オレンジ、黄色、グリーン、ブルー、紺色、紫、そしてダイヤモンドの白の順で現れる。

 直線自体も一定時間で色を変える。ハルトが懐中時計を出して時間を測るとちょうど三秒だった。ノエルは直線の色の変化と床の貴石の並び順が同じなのに気がついた。だが違いがひとつある。直線には光らない時間があるのだ。貴石の順ではダイヤになるところで光が消え、赤、オレンジ、黄色、の順でまた光る。上空から見ると八と十二の分割は違うが、白い時計が八本の線の色を変えて動いているように見えるだろう。

 床に埋め込まれた貴石は中心に近づくほど少しずつ間隔が狭まっていった。

 二十分ほど歩くと床のひし形が直線から両サイドに離れて行き、大きなダイヤモンドのひし形の周りを八つの小さなひし形の宝石が取り囲む模様になった。ノエルは周囲の貴石の色の配置をメモし始めた。

「絨毯の模様みたいだね」

 ノーラがそう言うそばでソフィーも写生をしている。

「でもこの線と貴石がなかったら、ちょっとおかしくなるよな」

 マサルがそう言うのも無理はない。ひたすら真っ平らな床が続いている。ただそれだけの空間。線と貴石に沿って歩かなければ、白い大理石の床が延々と続くだけなのだ。磨き込まれた大理石の床は強い日差しを反射して遠目には貴石が埋め込まれているようには見えない。陽炎が正面の空を揺らしている。

「終わったか」

 幼女の姿のラフィーがノエルとソフィーの写生が終わったのを見て全員を集めた。

「ここから先に進むには少々手間がかかる」

 目には見えない壁が、そこにはあった。ノーラが絨毯の模様といった上に何かがある。「試しに進んでみろ」言われたカッツェが模様を避けて進もうとすると何かに当たって進めなかったのだ。しかしラフィーには壁の色まで見えているらしい。

 ラフィーが胤月とソフィーを呼んで進ませると二人なんなく模様を越えた。見た目には何もなく普通に会話もできる。

「マナ酔いがする」と綾乃の巫女服の袂に入って寝ていたフィレーネが起こされて出てきた。フラフラと飛ぶフィレーネは綾乃の肩にちょこんと乗って、赤い髪と白いレオタードの妖精は綾乃の夏用何ちゃって巫女と同化した。肌が露出している綾乃のほっそりとした腕には日焼け止めが塗られていようでいい匂いがするらしい。

 胤月とソフィーを見えない壁の内側にして、ぞろぞろと東回りに移動する。ハルト達が連なって移動する様子は幼女に引率される遠足の生徒のようだ。白い床に掘られた水路を跨いで次の模様と直線に到着。模様の形は同じだが赤い貴石が中心になっていた。

「ここでよいじゃろう」

 カッツェとノエルを内側に入れてまた同じように移動する。「床の貴石の色か方位が関係あるんですか?」ノエルがラフィーに尋ねると「必ずしもそうではない」ラフィーは明確に答えずにはぐらかす。床の模様と侵入を阻止する結界はまた別の魔術で多層的な術式になっているという。ラフィーは術式を理解しておらず「妾には壁が見えるだけじゃ」で話が切れた。神殿上部に昇る時に魔法陣の紋を開かせたことでこの中間部から先に入れるようになったのだという。

 今度は色が変わる直線を二本またいでグリーンの貴石の模様の位置でラフィーとフィレーネが入った。また移動し「どうせじゃから」と約一周して元の位置の西隣まで歩くと転移組が紫の貴石の側を中心に向かってひとりづつ進んだ。

 最後に綾乃が進もうとすると途中までは進めたのだが何かが引っかかっているようで進めない。ラフィーは「案ずるな」と綾乃を下がらせると、もと来た道を引き返してラフィーとフィレーネが入った位置とのちょうど半分の位置で綾乃に横を向きながら入るように指示を出す。綾乃が進行方向に横を向いたまま横歩きをしようとすると「そうではない逆じゃ」と振り返らせた。

「それでいい。もう一歩、いや半歩前に出ようか」

 微妙な位置調整をしながらゆっくりと綾乃を横に歩かせ「もうよいぞ、普通に歩ける」と言ってから説明を始めた。

「どうせ訊かれるじゃろうから話しておくとしよう。アーヤの背中には羽がある。お前達には見えておらんじゃろうが天使の羽の部分は妾と同じ属性になる。しかし体は転移してきた人間として反応していた。だからこういうことになった。ちなみ妾は物理的に变化へんげしておるぞ」

 綾乃の天使の羽が見えていないだけという事実を知ったハルトだった。

 でも体は人だって言ってたよな。

 微妙なハルトにまた別の事実が告げられる。

「昨日『神気』とお前達が呼んでいる力を使ったから、ノルンの属性が強くなってるのもあるんじゃよ」

「ラフィー様、それじぁ綾乃はアバターシュに乗って神気を使うとノルンに近づいていくってことですか」

「そういうことになるの。あんなことは普通の人間には出来はすまい」

 ノルン様のご加護を持ったアバターシュっていいわよね。呑気に言う胤月に賛成はできない。一昨日「アバターシュに乗るわ」綾乃の言った言葉の意味をあらためて考えてしまうハルトを残してラフィーとノエル達が先を進み始め、ハルトは一旦考えるのを保留にして中心に向かって歩いた。

 しかし幼女の歩みは遅い。

「カッツェ、だっこ」

 カッツェにコアラだっこをされたラフィーを先頭に進んだ。どうやら狼の姿にはなれないようだ。

 再び色を変える直線に沿って進む。ひし形の貴石は色の変化の順番は同じでも形が少し変わっていた。少し斜めにひしゃげたひし形が線を挟んで前を向くように変形している。

「貴石の形が変わったよ」

 神殿の術式を理解しようと必死のノエルに綾乃が言う。

「ひし形ではなくて平行四辺形になったわね」

 綾乃が言うところ、ひし形とは四辺が等しいものなので正確には今見えている図形は平行四辺形になるということだ。

 引き続き7つ赤の間に配置される貴石の色の順序は変わらなかったのだが、どんどん角度が変わっていった意味が中心にほど近いところまで進んで分かった。侵入阻止結界にあったように模様が直線から離れて、最後に大きく複雑な模様になっていた。そ同じ角度と大きさの平行四辺形が組み合わさったどこかで見たことがあるような模様。色は赤、ダイヤ、紫の三色

 

 見方を変えると中心に向かって次第に大きくなる三角形が上下左右から重なってる出来た模様に見える。一片に7つのひし形を並べた正方形が45度回転しダイヤ型になっているとも言える図形は確かに見覚えのあるものだ。

「アメカジとかにありそうな模様だな」

「ネイティブ・アメリカンの模様だよ。オルテガ模様っていうんだよこれ」

 マサルとノーラの会話に焚哉が入ってゆく。

「ネイティブ・アメリカンはモンゴロイドだからね。日本人とルーツは一緒かもよ」

 みんな博学だな。オルテガって聞いたら黒い三連星にしか結びつかないんだけど……。

 写生を始めようと、スケッチブックと色鉛筆を出そうとするノエルをラフィーが制した。

「まずは中心まで行ってみよう。中心を見てから誰が何をするのか決めた方がよいじゃろう」

 中心はもうそう遠くない。オルテガ模様から先には黒くて細い縁取りがある。白いドーナツ状の床は色とりどりの丸い宝石をちりばめたようで、まさに白いドーナツという感じ。貴石を踏まないように大理石の上を歩く。ソフィーがケンケンパな感じで跳ね歩いて、ラフィーに睨まれて、おとなしく歩いた。

 貴石がなくなるとルドラクシアの中心、ひいてはセントラル、この世界の中心にあたる位置にたどり着いた。そこは黒曜石の黒い円と赤い正三角形が組み合わさったシンプルな円盤だった。面積は歩いて一周するのに三分ほど。水泳部だった焚哉によると円盤の直径は競技用プールと同じ五十メートルくらい、とのことだ。

「円に頂点を接する正三角形の一辺は直径の約85%だから50メートルだと仮定すると42.5メートルくらいになるわね。本来はルート記号を使う計算だからざっくりだけど」

 数学マニアの綾乃によって三角形の一辺の長さが判明した。

 巨大な円盤はこれまでの色の変わる直線や水路はなく独立している。円周と接する赤い正三角形。その外側にはわずかな隙間。赤い三角形の方位は分からない。円形の床はゆっくりと右回り回転しているのだ。

 赤い三角形の中には模様が彫られている。細長いひし形の中にある正円の溝は人の眼に見える。それが正三角形の中になるのはピラミッドの中に一つ眼があるように見える。

「プロビデンスの眼だ。神の意思って取ればいいかな。三角形は神曲からかなあ」

 ポツリ、言ったノーラに綾乃が続く。

「ダンテの神曲ね。地獄篇が有名な。そうでなくとも三は聖なる数字よ。陰陽道でもそうだし」

「陰陽道もそうなんだ。神曲は文の構造で三位一体さんみいったいを現してるの。詩の形式は1行が三十三音節、3行で1セットの韻踏詩が33歌。それが三部ある構成で出来てるんだよ。3だらけ古典だよね」

「あの一つ眼のひし形の比率も1対3だと思うわ」

 ワケガワカラナイヨ。

 ハルトは「三が重要」それは覚えた。

 ゆっくりと回転する巨大なレコード盤。その中の赤い三角形の三つ辺と円周の間にある黒いスペースには四角い穴が空いている。

「巨大なターンテーブルだね」

 焚哉がDJを気取って耳と肩でヘッドフォンをおさえる仕草をしながらエアスクラッチをした。ラフィーが「乗っていい」というので円盤に乗って長方形の穴に近づいてみると地下に下る階段があった。

 

「行ってくるがよい」

「ラフィー様は行かないんですか?」

「妾が案内あないできるのはここまでじゃ。中で何をするのかの指示も出しゃあせん。自分達で考えるが良かろう。くれぐれも黒い石以外の石には絶対に触れてはんらんぞ」

 黒曜石の床と同じ素材の階段に足をかける。人が横に二人並べるかどうか、という地下に続く階段には手摺てすりはなく、石の階段だけが宙に続いている。光石の懐中電灯をリュックから出して恐る恐る階段を降りてゆくと地下の空間には予想もしていなかった光景が広がっていた。


 そこは巨大な黒いシリンダーの空間だった。

 レコード盤の正三角形の下には三つの正三角形の面が合わせている。

 赤い貴石三角錐。

 一辺が40数メートの。

 それが円筒形の空洞に納められていた。

 

 頂点を下にして、吊り下げられたような三角錐がスポットライトを浴びている。透明度のある赤を透かして向こう側からも光が当っているのが分かる。黒曜石の外壁に埋め込まれた貴石から七色の光が発せられた空洞の中は薄ら明るかった。

 遥か下にある三角錐の頂点に向かって三本の階段が螺旋を描いて降りている。細く手摺りのない螺旋階段が壁から離れて宙に浮いているように思えた。何しろ底までは少なくとも40メートルはあるのだ。

 遠く聞こえていた鳥の声や耳を触る風の音が消え、コツコツと石の階段を下る靴底の音だけが石の空間に響く。洞窟の中に入ったように冷んやりとした空間をひたすら下った。

 ゆっくりと回転する三角錐を取り巻く螺旋階段自体も回転している。只でさえスケール感が狂っているのにその上回転していることを自覚できなくなって感覚がおかしくなった。酔うような感覚に男子が脂汗を流しながら何とか全員が最下段まで降り切ると、階段と三角錐の頂点は床についておらず動いていないシリンダーの黒い床に降りた。その時点では床の方が回っているように思えて感覚が戻るまでにしばらくかかった。


 黒曜石の円筒の底と赤い正三角錐の頂点は人の背丈ほど離れてるようだ。ようだというのは、周囲を金色のドーナツ状の物体が浮遊して回転しているので真横からは頂点が見えないからだ。人に目線の高さで地上の円盤よりも速く左に回転する金色のそれは、黄金の中に七つの宝石を並べた巨大な指輪に見えた。直径約三メートル、高さが50センチほど金色の中に丸い貴石が埋まっている。七つ石の直径は30センチほど。赤、オレンジ、黄色……の見慣れた順に宝石を見せて金色が回っている。その下の床には黒い空間の中で唯一白い部分がある。白いドーナツ型をした床にはダイヤモンドの透明を含んだ八つの丸い貴石が配置されていた。

 ノーラは前世のお菓子にその床を例えた。

「メガネ型をしたパッケージのマーブルなチョコレートの半分みたいだね。ちっちゃい頃好きだったなぁ」

「みんなっ、これを見て」

 手招きする綾乃のところに集まると、空中に青い文字が浮かんでいた。

「裏側からは見えないんだ」

 綾乃の前に立った焚哉が言ったとおり、ハルトが正面から綾乃を見るとアレンジ巫女服を着た綾乃がただそこにいる。

「そんなに見つめないでよ、恥ずかしいから」

 綾乃はミニスカ巫女服の裾を下げるように引き下げる。「ごめんごめん」ハルトは綾乃の後ろに回って何が書いてあるのかを見に戻った。ノーラがにししと綾乃の後ろで笑っていた。

「ん? 読めない」

 ハルトの呟きに答えたのはノーラだ。

「これ古代語だもん」

「ノエルは読めるか?」

 ロダ村の教会の地下にあった飛甲機の壁画や古文書を読み解解く過程でノエルは古代語を学んでいる。

 綾乃が下がると青い光の文字は薄くなりノエルが元の位置に立つと復活した。

 ノーラとノエルが協力して解読を始めた。

「えっと……この名は……アガル、タ。父と子、妖精の力によりて、ルドラを捕らえし、牢なり。でいいかな? お姉ちゃん」

「妖精のとこは精霊なんじゃないかな」

「そうか、その意味のときもあるよね」

 ルドラ。やっぱり気になる。

「ってことはパンゲアもあるのかな」

 アガルタと聞いて焚哉には思うところがあるようだ。

 ノーラは「父と子と精霊は三位一体のことだろうね。やっぱり三が大事なんだ。それとあれはあれかな……」とぶつぶつ言っている。


 自分が興味のない事柄にはあまり知識がないハルトが、考えるのに夢中のノーラ達から離れて外壁に近づくと計器のような円盤が浮かび上がった。

「何だ? 何かの管制室なのかここは」

 三つ浮かび上がったのは計器のようなアナログ表示。

 計器の針は、三つとも一本で全て十二時を差している。中心に大きく、左からⅠ、Ⅱ、Ⅲと表示された青い光だけの計器だ。丸いアナログ表示の下にはデジタル表示が二段ある。

 上段は左から12437、13721、12049

 下段は左から12437、13721、12048になっている。


 ハルトが振り向くと他にも空中に浮かぶ文字があるらしく、ノーラとノエルが焚哉やカッツェ、胤月が発見した文字列の前を駆け回っている。ハルトはリュックから、何のためにとは思わずに入れてきた白いテプルを出して、文字が出た床にばつ印を貼った。

「ナイスだよハルトぅん! これなら離れてもまた探さなくていいね。みんなどんどん動いて探してみて」 

 目印になるものは床には何もなく丸い床の上でアガルタはゆっくり回転しているのだ。どこに自分がいるのかさえ分からなくなりそうな空間にバツの印を貼ってゆく。

 空中に浮かぶ光の文字は何処にでも在るというわけではなかった。だがある程度密集しているようだ。ひとつ見つかると次々に見つかった。


「これは詩かな。意味を汲み取るのが大変かも」

 ノーラがそう言う近くで、綾乃が別の表示の前で指を走らせながらなにかを読んでいる。ハルトが近づいてみる。

「何かしらこの数列」

 綾乃が見入っているのは二つの数列だった。

 

 38.63.16.41.74.27.52.85=30.63.16.41.74.27.52.05=30

 30×7>0


 綾乃は巫女服のたもとからメモ帳と鉛筆を出して自分でメモを取り出した。

 体に文房具が詰まってるんですね。さすがはメインヒロイン。

 と、馬鹿なことを考えながら数字を追って頭をひねってみた。

 ――30×7>0は当たり前だし、長い方の列は破綻してるよな? なんの式なんだ?

 ハルトにはさっぱり分からない。強いて言えば、一行目と二行目の最初と最後の二桁の数字以外は同じ、ということくらいだ。

 だた綾乃の顔が生き生きとしていように見えてちょっと嬉しくなった。


 ソフィーはメモを取りすぎて混乱しかけている模様。色紙をハサミで切って作った即席の付箋を挟みながら必死になって記録している。

 シリンダーの底を一周して文字が出現する場所を当たり切ると、ノーラが集合をかけた。

「ちょっと早いけどお昼にしようか。地上に出てご飯を食べならがら誰が何をするのか相談しよう」

 陽の光が入ってくる天井の長方形に向かって、赤い貴石の三角錐をぐるりと巡る階段を昇った。



神殿という名の地下空間。

あまりにも巨大な赤い貴石の三角錐と光の文字が意味するところは?

次回 「詩と数列」

週明け月曜の投稿になります。

本当はそこまで週内に行きたかったのですが……もう暫しおつきあいを。

一話が長くてすいません……

良い週末をです☆



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