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甲殻の翼  作者: 月弓 陽
セントラル編
129/148

海岸キャンプ

 昇ったばかりの朝日に水滴を輝かせて、鮮やかなブルーや紫苑しおん色、薄紅色の朝顔が花を開いている。花壇や足元の石畳の隙間から土の匂いを含んだ湿気が上がってくる。

 盛夏を迎えたコロシアムの前でハルトは立ち止まる。「今日は暑くなりそうだな」昨日までとは打って変わって雲ひとつない空を見上げてから、控え室に通じる廊下に入った。

 ブリーフィングが行わるコロシアムの控え室には既に生徒達が集まっていた。

「おはよう」

「おはようーハルトぅん! 」

 返ってくる返事の中でひときわ元気な声を響かせたのはノーラだ。セントラル調査、という名目の夏合宿が始まろうとしている。

「綾乃は、戻ってるんだよな?」

「昨日の夜帰ってきたからコス渡しといたよ」

 合宿に参加するメンバーでまだ来ていないのは綾乃だけだ。珠絵はキラナから出発するため現地で合流することになっている。

 控室の扉が開いて綾乃が入ってきた。ポップにアレンジされた巫女服を着ている。ノースリーブの肩先からほっそりとした白い二の腕をあらわにして、別パーツになった長い袖口をたたみながら綾乃はハルトの隣の席に座った。

「ごめんなさい。朝は弱くて」

 透けるような白い肌の綾乃だが、今はどちらかというと血色がよくない。

「大丈夫か。顔色がよくないけど」

「ごめんなさい。朝が苦手なの、低血圧で……」

 自分の居場所を探しているように飛んでいた妖精フィレーネがあくびをしながら綾乃の袖の中に入っていった。

 前世のときは全く気がつかなかった、ずっと同じ学校だったのに。と言ったハルトに。

「みっともない所を見せないように、早起きをして登校していたから」

 綾乃が人に見えないところで努力していたことをまたひとつ知ったハルトだったが、今日の綾乃が隠せないのも無理もない。まだ5時半になったばかりの早朝なのだから。

 キラナから出発する珠絵とハロルド以外の全員が揃うとマティスを伴ってキザイアが入ってきた。しっかりと化粧が施された美貌、皴ひとつない女流騎士の制服姿には微塵のすきもない。最後に幼女が入って来る。今回の引率の先生である人の姿をまとった金狼ラフィーだ。キザイアが気が強そうな金髪幼女に先を譲り、小さな体が演壇に立った。

「みな久しいな。息災でなによりじゃ」

 森の守護者たる、うら若き狼の獣神。今は人の姿、幼女の姿をしていてもラフィーは二百歳を越えている。尊大な話しぶりのラフィーが日程と主な活動内容を伝えた。

「今回の目的はセントラルの状況把握と生態調査になる。四泊五日の予定はなんとかこなせるじゃろう」

 予定に「なんとか」が付いたのは、大方の予想とは裏腹に三日前からセントラル方面の嵐雲らんうんが消えたという観測報告が入っているからだ。例年よりも三日早く`神々の息抜き`が始まったのだが、出発を早められてはいない。綾乃が戻っておらず、アバターシュで出る焚哉の機体の最終調整も終わっていなかった。

 続いてキザイアから真の目的、竜の骨の回収についてが説明がなされた。蟲の殻と同様に生きた竜を殺して利用することは固く禁じられている。ノルンの加護によって創世記を迎えたと謂われるグランノルンに、強制力はなくとも天使であるノルンから警告された禁忌を破ろうという不埒な者はいない。

「古龍の許しを得られた場合にのみ捜索を許可し回収任務にあたる輸送機が出動する。お前達の任務は交渉と捜索、回収作業の監視だ。長い年だと十日は晴れる、神々の気まぐれに期待しよう」

 キザイアが締めて、一同は機体が待機しているコロシアムに出た。

 ハルトのアバターシュ・オーディーン、マサルのアバターシュ・オーレイ、そして焚哉のアバターシュ・インドラがそれぞれのサポート機の横で乗騎姿勢を取っている。三人のパイロットが乗り込んでアバターシュが起動する。特に目を引くのは朱色の鎧姿の侍。和の趣向が取り入れられた焚哉のインドラだ。

 法衣の色が位階を示すキラナでは、緋色が最高位の色とされている。何かと揉めつつ、大僧正のまとう法衣が緋色なのに準じての色使いになった。関節部やマニピュレーターなどの下地は極めて黒に近いグレー。その上に朱色の装甲が被せられた機体は『武田の赤備え』を彷彿させる。

 コクピットハッチを含む胸部は鮮やかな赤。他の機体と同じく金色こんじきの装飾が入っているが紋が流れるようなオリエンタルな燐粉細工である。手足や肩の装甲の朱色は鈍く深みがあり手足が長いスリムな機体に重厚感を醸し出ている。両の肩にはキラナの職人達が作り上げた、矢から侍の肩を守る大袖おおそでがなびき、威圧感を感じる双眸が乗る。その上部には侍兜を思わせる鍬形くわがた型のブレードと側面には侍らしい吹返ふきかえしが装着されている。これは女性型の後方になびく小型のツインテールにも見える部分と同じく飛行ユニットとの意思伝達機能にあたる。

 黒の縁取りと細かい金細工が入った鎧兜よろいかぶとが手に持つ武装は長槍である。刃元の両側に刀受けが付いた上鎌十文字槍あがりがまじゅうもんじやりは、接続分解可能な三節棍さんせつこんであり、腰に付帯するの三連ケースに収納される。

 両肩に二本の剣の鞘が後方に伸びるのは各機体共通の仕様である。

「いかつくなったなぁ。インドラ」

 はじめて完成形インドラの姿をみるハルトに焚哉から通信が返ってくる。

「赤備えっぽいよね。サポート機のヴィマーナも顔がイカツイっしょ」

 近接特化、高機動型インドラの横に控えるサポート機はサジウスのコーカサス型ではなく頭部に五本のツノがあるゴホンヅノカブト型になる。頭部は黒光りして羽の部分はナチュラルな木目のような色合いの機体だ。頭部下に二門のガトリングの先端が覗き、腹の下にアバターシュが使う冷却ライフルと火炎放射機の長物が装着される仕様は同じくなのだか、今日はカッツェが駆るサジウス三号機にのみ冷却ライフルが装着されている。蟲との戦闘は予想されず、古龍から許可が出た場合にアバターシュのフレームになる竜の骨を少しでも多く持ち帰るために収容スペースを空けてある。しかし、何かあったときのために一丁だけ冷却ライフルを持っていくことになったのはマサルの進言によってだった。ならばオーレイのサジウスに装着されていても良さそうなものだが今回のサジウス・ツーの操縦者はノーラなのだ。これにノエルが同乗する。訓練は問題なく行われていても全長が極端に伸びた機体の取り回しはカッツェの方が慣れている。カッツェの隣に綾乃が乗り、インドラのサポート機、ヴィマーナを操る胤月の隣にソフィーが乗り込んだ。

 

「準備はよいか? ではゆくぞ」

 それそれのサポート機にアバターシュが乗機したことを確認したラフィーが空に上がった。三頭の白狼に続いて、三機の飛行体が浮上する。コロシアム上空から果てなき泉の湖上に出て東を目指す。

 真夏の太陽が照りつけて、穏やかにいだ湖面に光が揺れている。ノーラは時々湖面を擦るまでサジウスの高度を下げ、水しぶきを上げては、きゃーーー、と騒いだりした。

 飛甲機に乗り込んだ面々は分厚い飛行服を着ていない。一応積み込んではあるのだが、真夏の湖上を低空で飛行するには必要がない。ノーラにいたってはシャツを脱いで上半身ビキニの水着でピンク色の髪をなびかせながらサジウスを飛行させている。後部甲板上のアバターシュのコクピットに収まったマサルは特に何も言わない。またノーラが高度を下げた。

 あーあ、遊園地のアトラクションと化してるわ。

「あっ、島が見えてきたよー」

 定位置にサジウスを戻したノーラが前方を差した。ヤシの木のシルエットが並ぶ小島は休憩予定地点になる。王宮からセントラルの上陸予定地点まで距離は王宮から見て逆端になるロダの森までとそう変わらない。日が長いこの季節でも丸一日の所要時間を見込んでいる。予定通り太陽がまだ東側にあるうちに一行は小島に着陸した。お待ちかねの休憩と昼食の時間である。

 タープを広げて屋根を作り、砂浜にパラソルを差す。女子用のタープのポールを立てるハルトに手を貸す綾乃の顔が輝いている。頭にはノーラが用意した白い花の造花が付いた麦わら帽子。巫女服にとってつけたような麦わら帽子をタープの下に出来た日陰に座った綾乃は大切そうに胸にかかえた。

 ハルトは横に座って綾乃に声をかけた。

「体調、大丈夫?」

「大丈夫。問題ないわよ」

 どさくさに紛れて聞けずじまいだった天使の館に帰っていた理由を聞いてみた。「合宿がとても楽しみだったから興奮しすぎないように気持ちを整えていたの」と綾乃は答えた。

 男女に分かれ、サジウスの影で水着に着替えてひと泳ぎすることになった。

「ねっ、ハルトぅんも行こーよ」

 いつもより露出度が高い紐ビキニのノーラがハルトの腕を取り、白く柔い肌を密着させて水辺に誘う。お互いの鼻がつきそうなくらい身を乗り出して、上目遣いに桃色の瞳を潤ませて、透明感のあるヌーディーピンクのルージュを引いた唇の端を楽しげに、優しげに。

「お、おおう」

 笑顔全開ながらもつやっぽいノーラに手を引かれてハルトは焼けた砂浜を歩く。

「あの、ノーラさん?」

「最高だね。ハルトぅん」

 豊かな胸の感触を腕に感じつつ、ストロベリーブロンドの髪からは甘い香りが漂ってくる。

 水に入れば「うわー、きゃー」とはしゃいだノーラの柔らかい双丘がぽよんと揺れて。一緒に軽く泳いで砂浜に上がると、桃色と白が濡れた水着が肉感的に。太ももに続く曲線と緩やかなラインの健康的な足運びに揺れるビキニの紐に目のやり場に困りつつタープまで戻った。待ってましたとばかりにノエルとカッツェがサジウス・ツーの後部に装着されたクーラーボックスから食材を出してきた。肉や野菜を網の上にならべてバーベキュー開始。

「糧食だと味気ないでしょ。合宿なんだし」

 大食漢のマサルとカッツェはグランノルン王家の徽章が染めなかれた更紗さらさを羽織ったノーラを褒め称えた。

「冷凍のお肉もあるから食事は結構豪華だよ。炭も持って来てるし」

 今ではすっかりリケジョになったノエルも抜かりなかった。ノーラと相談してちゃっかりサジウスを改造していたのだ。サジウス・ツーには冷却ライフルの冷却液を利用した簡易冷蔵庫が設置されていた。

 腹ごなしのビーチバレーを終えた男子が砂浜に腰を下ろして水辺でたわむれる女子を見ている。

「ノーラちゃんとノエルちゃんは豊満バディー。神宮路さんはバランスがよくて理想的な形だねぇ。おみ足もお美しい。いやぁ福眼、福眼」

 双眼鏡をのぞく焚哉の呟きは女子に聞こえていない。

 綾乃はノーラが用意した白いビキニを着ている。ノーラとノエルはピンクと白が入れ子になったお揃いのデザインなのだかノーラはビキニ、ノエルはワンピースだ。

 あれ? 綾乃は白に赤ラインのいつも色合いじゃないな。あんなに綾乃ちゃんの巫女服、巫女服、言ってくせに。ノーラとノエルが二人お揃いじゃないっていうのもめずらしい。

 と、ハルトが不思議に思っていると。

「おい、あれ」

 マサルがハルトの肩を叩いて女子がたわむれる先の沖合を指差した。水中から出てきた何かが伸びて柱のように隆起している。それが二本、三本、と増えてこちらに向かってくるようにも見える。

 立ち上がって駆け出した男子の背後から白狼が一頭上空を越えてゆく。女子も水から上がって駆けてきた。

「ハルトぅーん、ネッシー出たーー」

 ハルトの背中から落ち着いたラフィーの声がした。

「あれは水竜じゃ。案ずるな。シンにセントラルの東側のうみを護る古龍への面会を頼みに行ってもらった。出発の準備をせい」

 焚き木の火を消して、搭乗を終えると長い首を水面から出して進む水竜を追って上空を飛んだ。

「首長竜だな。プレシオサウルスだっけ?」

『胴体に四つのヒレとしっぽがあって甲羅のない亀みたいにも見えるね』

 焚哉のからの返信に「亀は果てなき泉の主だとされている」アルフリードから聞いた話をハルトは思い出した。ノエルがハルトから聞いた話を物語にまとめようとしていた頃の話だ。今はソフィーが胤月の隣から身を乗り出して四頭の水竜をスケッチしている。ノエルも興奮気味に顔を乗り出しては水面を見下ろし、操縦するノーラに話しかけていた。綾乃は爬虫類が苦手のようでおとなしい。

 これが水竜か。壮観だな。うーん、やっぱ動画撮影機能が欲しい。でもそんな魔道具はないんだよなぁ。惜しい。そのうち出来んのかな? ノーラあたりが「こんなの欲しい!」とか言って。せめて静止画が取れれば……

 一頭の水竜が水に潜ってスピードを上げた。かなりのスピードを出す水竜を追ってしばらく飛ぶと、十五メートルはありそうな水竜の前方に新たな影が水面に上がってきた。

 先導した水竜の倍はありそうだ。水面から顔を出したのは’水棲のドラゴン’というのが相応ふさわしい風格の白い龍。一行は空中で静止し、ラフィーが近寄って話しかける。

ほまれ高き古龍よ。セントラルに上陸させてもらいたい。出来るならば神殿を調べさせてもらえるとありがたいのじゃが」ラフィーは上陸の許可の他に神殿の調査を願った。ラフィーに神殿調査を願い出たのノーラだった。渋い顔をしていたラフィーは最終的に受け入れてくれたようだ。金狼は命をついえた竜の骨を人の世に役立てたいと時間をかけて伝えた。

「森の守護者たる狼に連れられた人間か。それに」 

 ゆっくりと深みのある声が頭の中に直接伝わってくる。

「生まれたてのノルンもいる。不思議な感じがする魂だが何をしに来た?」

 綾乃は答えなかったが、水龍は機嫌を損ねている感じではない。

「それにしてもめずらしい物に乗っている」

 じろり。めつけるような視線をサジウスの綾乃からオーディーンに移してハルトの眼前大きな顔が近づいてくる。

 アバターシュのコックピット前面は全てモニタースクリーンになっている。白い内壁に映し出される映像は光学式ではなく、視覚に直接投影される視覚情報を見えやすくする背景スクリーンのようなものだ。アバターシュのカメラ機能はパイロットの生体機能と直接リンクしているから画像保存ができないのだが、コックピットから見る風景は実際に自分の目で見ている感覚に近い。距離感や臨場感もそのままに白い髭を蓄えた巨大な龍の顔が近づいてくる。ハルトには水龍の碧く丸い目は温厚そうに見えた。

「どうやら、竜の骨も、蟲の殻も天寿を全うしたもののようだ。この先の島で無駄な殺生をしないと約束できるかい? 」 

「はい」

 頭の中に直接響いてくる声にハルトは答えた。みなにも声が聞こえいるのが同時に返事をしたことから分かる。古龍がオーレイとインドラにのんびりと顔を向けてゆく。

「悪さをする人間ではなさそうだ。私の仲間だった者の骨が浜辺にあるかもしれない。朽ち果ててしまう前に役に立つのなら持っていきなさい。陸にあるものは飛龍に聞くといいだろう。神殿の周りに時計塔がある。そこにいるはずだ。それから自分達が食べるものなら狩りをしてもいい」

 飛竜の骨の回収と神殿調査は飛龍の判断に委ねられたが、古の水龍は上陸するまでの安全を約束して水の中に消えていった。


「龍と話した。龍と話したぁーー」

 上半身ビキニのまま盛大にバンザイしたノーラのサジウスが姿勢を崩した。オーレイが甲板のレールを掴む。ノエルが慌ててコントロール・ユニットに両手を入れた。

「さすがに今のはビビったぞ、ノーラ」

「ごめんねぇ、マサル」

 全く反省してなさそうなノーラが操縦席に戻り、再びセントラルを目指して東へ飛んだ。

 

 波に揺られた悠久の時を越えゆくと陸地の予感がした。

 生命の瞬きの振動が水平線の向こう側にあるような気がする。

 見えた。

 この世界の中心。


 日が傾き始めた空の下、たどり着いたいたのは真っ白な砂浜。高い崖の上は広大な森だ。ざっと辺りを見回しながら着陸したが周囲に水竜の骨らしきものは見当たらなかった。

 浜に降りると合宿リーダーのノーラが「テントの設置を優先するよ。その後はご飯の準備。男子は釣りに行ってきて」

 空には一筋の雲もない。しかし日差しが弱まり始めているのでタープを張らずにテントの設置を優先した。意外と早く男子用と女子用のテントが二つ張られた。騎士団で訓練を受けているマサルが慣れた手付きでペグを打ち込んでいく。森林公園のキャンプでマサルが手を打ったことを思いしたハルトがマサルに言うと「変なことばっか覚えてんじゃねーよ」ハルトに余所よそ見をして指を打った。ノーラがお腹をかかえて笑った。

 男子が食料調達に出ようとすると。

「胤月さんは女の子チームで」

「あら、それもいいわねぇ」

「フィレーネ、あんま遠くに行くなよ。陽が登る前には戻ってくるんだぞ」

 あいよー、食事準備チームの力仕事担当になった胤月を置いてオーレイを降ろしたサジウス・ツーの操縦席に座ったのはカッツェだ。「おー痛て」マサルは親指に絆創膏を巻いた左手をまだ振っている。ハルトと焚哉も乗り込んでしばし飛んだ。

 真っ青な水面にせり出した岩場に昇って、堅焼きのパンをちぎって釣り針にかけてみた。水の透明度は高い。色とりどりの魚が群れをなして泳いでいるの見える。中には大物もいる。元水泳部の焚哉が岩場から飛び込んだ。「この辺やっぱしょっぱいよ。ほんとに海みたいだ」

 海藻みたいのも生えてるし、ミネラルみたいな香りがするからもしかして、と思ったけどやっぱか。

「なぜだかは分からないけど海水と全く変わらないね」

 言ってから、水中メガネをした焚哉は潜って足元の岩場の中に消えていった

 最初に獲物をゲットしたのは焚哉だった。片手で持つのが難しいくらいの大物ロブスターを岩場に投げ上げてきた。それを見て手袋をつけたカッツェも飛び込んだ。

「見えてる魚は釣れないの法則がこの世界にもあるのかも」

 釣りの方はさっぱりだ。マサルががんがん上がってくるロブスターの肉を餌にするとすぐにかかった。餌がパンではダメらしい。マサルが釣り上げた魚は黄色い鯛のような魚だった。エビで鯛を釣った形だがエビの大きかった。

 人数分の伊勢海老っぽいロブスターと、四人前はありそうな鯛を三匹、サジウスの簡易冷蔵庫に入れて戻ると女子チームから歓声があがった。

 坊主だったハルトも魚をさばくナイフさばきで名誉挽回。キラナでの経験に救われつつ、わいわいと生命いのちの恵みを頂いた。

 焚き火を囲んで星を眺める。ラフィーと白狼は崖の下で寝入ってしまった。相撲対決に激しく盛り上がったカッツェとマサルは船を漕ぎ、ノーラもノエルの膝に頭をうづめて寝息を立て始めた。

 星空の下で平和な初日の夜が更けていく。

「夢がひとつ叶ったわ」

 しんみりと綾乃がハルトにささやいた



ノーラが猛烈アピール開始。けどボクネン人!

前世の切実な夢が叶った綾乃ちゃんがヤンデレを癒やしつつ星降る夜が更けていきます。

けれどここにはお騒がせの二人が足りません。

次回「合流」

明日17時の投稿です。

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