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甲殻の翼  作者: 月弓 陽
セントラル編
125/148

神気


 その後の王様ゲームは、王様が指名した生徒に聞きたいことを話してもらうパターンになった。

 ノエルがカッツェに、キラナとニンディタに行っていたときのよもやま話しを聞き。カッツェが焚哉にキラナの技術と文化を語ってもらい、これは転入してきたばかりのアヤノとマサルに気を使ってのことだろう、自分の舌足らずを自覚してのことかもしれない。ハルトがマサルに転移した仲間で共有しておいた方がいいことを話すように頼み。アヤノはソフィーに、これまでの学園の様子を語ってもらった。マサルはまじめな顔をして珠絵に防空対策設備の進捗を聞いた。

 ソフィーがノエルに獣人けものびとと守りの森の関係をお題に出すと、最後にくじ運の悪い珠絵の番になった。最後に残ったノーラに

「今年の夏の合宿はどこですか?」

 と、空気を読んだ質問をした。

「うん。全然考えてない!」

 きっぱりと言い切ったノーラは逆にアイデアを募った。

「今年はカナブンブンの観光バスがあるからね。結構選択の余地があるよ。みんな考えてみてよ」

 みなが納得して授業を受けるために席に着き始めると、綾乃がノーラとハルトに声をかけた。

「ノーラすごいわね。みんなをまとめて」

「そうかな? ちゃんと出来てるかな?」

「うん、しっかりしてるわ。みんな意見も聞いたりして。びっくりしちゃった」

「やったー! もっと褒めていいよ。綾乃ちゃん」

「そういうところは変わらないわね」

「むー……」

「はい、そこの幼なじみ三人組。授業がはじまるのです。席についてください」

「タマちゃん、ごめーん」

 アーヤが慣れるまで滞在する、という何度か予定されているベルダンティアの講義第一弾はソフィーが待ち望んでいたノルンと神々の話だった。

 アストレイア様ってベルダンティア様より高次の存在だったのか。宇宙っぽかったし体が透けてもんな。高貴なお方な感じがしたわけだ。王家の血筋で軍神ヴァルキュリア様の加護を受けた女性が機士団を統べる。これはキザイア様から聞いたことがある。

 アストレイアとヴァルキリアもベルダンティア所属する天使の位階、ノルンよりも高次の存在だった。けれどお互いに尊敬し合い、存在する次元が違ってもよい友人関係を結べているとのことだ。

「ハルトさんはアストレイアに、アーヤは二人ともにお会いしたことがあるわね」

「綾乃ちゃん、戦乙女いくさおとめヴァルキリア様に会ったんだ。どんな女神様だった?」

 ベルダンティアは綾乃に「話していいわよ」と促した。

「凛々しい方だったわ。私、弓道をやってたでしょ。祖父の神社での神事のためというのもあったのだけれど。弓矢が引けるノルン、ということで会いに来て下さって。弓矢の加護を頂いたの」

 そんなこともあったんだ。やっぱ一緒にいるといろいろ分かっていいな。

「ずるいのです。私もお会いしたいのです。射撃のご加護を頂きたいっ」

「あら、珠絵さんにもすでに降りてますよ」

「へっ?」

「コトヒラかにと意思疎通ができるようになっていますよね。あれにはヴァルキリアの承諾が必要なのです」

「そうだったのですか……船商会のボスが言うにはウルパ族以外の人でも訓練すれば乗れるようになるって聞いてたんで」

「普通は多大な時間をかけずに出来るようになるものではありませんよ」

「そうですよね。それじゃ益々仲良くしてあげないとですね!」

「是非そうして下さい」

 その後は土着神や、翼人族、お狐様などの神の眷属の話がされた。翼人族であり鳥の人であるカッツェが誇らしそうに聞いていた。

「では、今日の講義はこれで終わりにしましょう。最後に、後ほどキザイアから正式なお知らせがあると思いますけど、私からもお伝えしておきます。――転移してきたみなさんと、ノーラさんとゆかりの深いノエルにはアバターシュの順応訓練を行うということです。ヴァルキリアの神託がキザイアに降りているわ」

 教室がざわめいた。

「実は僕はもう聞いてたんだけどね。キラナに一機、貸与たいよされるから」

 焚哉とノーラには事前に話が伝わっていたようだ。ノーラはキザイアの機体、アバターシュ・イリスで訓練に臨むという。今では開発主任と言ってもいいノエルによるとカスタムタイプのアバターシュはハルトのファーストはさておき、キザイアと黒騎士二人の三機がロールアウト、続く三機の製作も順調とのこと。後続の機体は汎用性はんようせいが高いためノエルや珠絵でも扱えるということだ。量産型の素材比較実験が終わったらさらにもう一機組むことにことになっている。

 アバターシュも数が増えてきて分かりくくなってきたな。カスタム機だしコードで呼ぶよりネーミングの方が似合うよな。

「ノーラ、俺のアバターシュに名前を付けたい。ファーストって呼ぶのもなんかな、ってちょうど思っててさ。助けてネーミング番長」

「俺はもう考えてあるぜ、猟犬グレースもよかったけど、卒業したくて」

 マサルはいろいろあったし体外的な名前はグレースのままでも愛機のネーミングを変えたいのは分かるような気がする。

「で、何て名前にすんの?」

「オーレイ、って名付けようかと思ってる」

 ノーラが由来をたずねると「サッカーの神様、ペレの愛称だ」マサルは自信ありげに言った。「マサルらしいね」ノーラも納得して、オーレー、オレオレオレー、と歌い出した。

「ノーラ、その歌とはあんま関係ないかも。ところでさ、俺のアバターシュにいい名前ないかな?」

「どういうのがいい?」

「強そうでかっこいいの」

 うーん、ノーラにしばらく考えてから「オーディーンがいいんじゃないの」といいながらベルダンティアに桃色の瞳を向けた。

「主神の中の王の名ね」

「ダメですか? ベルダンティア様」

「神々の名前にあやかることは多いのでかわまないと思いますよ」

「じゃあ僕はインドの軍神にあやかってインドラにしようかな」

 焚哉も専用機になるので、名付けるのにやぶさかではない。

「アーヤもやってみる?」

「みんながやるのなら。ハルトくんたちが作ったものだし乗ってみようかしら」

 きゃー、パイロットスーツのデザインしなくちゃー。ノリノリなノーラだった。

 ノーラは正式にパイロット採用が決まったら装甲の塗装をそれぞれのイメージカラーに合わせる提案をし、放課後の時間は誰に何色が似合うのか? の話題で盛り上がっていった。

 帰り道の廊下でハルトはマサルに声をかけられた。

「グレース時代はとにかく王族とキザイア様を見上げる日々だったのに、もっと上の存在から授業を受けているなんて不思議な気分だ」

「そのうち慣れるよ。俺も最初わけ分かんなかったけど、みんないい人、じゃないや天使様だし」

 そういうもんかね。マサルは戸惑いながらもウルデに感謝していることを告げていた。


 その後しばらく量産型アバターシュの開発に集中したハルトは、量産型の基礎設計と実験に没頭し、一段落つくと騎士としての訓練の割合が増えた。非常事には上級騎士として戦線に出ねばならない。コロシアムでのキザイアと黒騎士のアバターシュへの順応訓練にも付き合いつつ、模擬戦を重ねた。


 グランノルン騎士団総長と側近の黒騎士二人が使う機体は三機ともファーストアバターシュを継承しつつも特徴的な機体になった。カスタムタイプのアバターシュは所属や配属先、パイロットの意向に合わせて体格や外観が異なる。

 総長機アバターシュ・イリスはフォルマージュの外観を引き継いで白金と黄金の機体になった。女性らしい細身のフォルムが美しい機体だ。盾にも繊細な装飾が施され荘厳なイメージはフォルマージュと遜色ない。近距離武装のむちも踏襲されている。女性らしさを強調しているのは足先に猛禽類を思わせる飛竜の爪がなくハイヒール型をしていることが大きい。ヒール部分は自動再装填機能を持ったパイルバンカーになっている。アバターシュは空中で上下感覚を喪失した場合を考慮して意図的に足元に荷重がかけられているため、破壊力が高く衝撃を吸収しやすい位置でもある。頭頂部はモヒカンのトサカではなく頭部両サイドから後ろにアンテナが延びるシルエットはどことなくツインテールを想像させなくもないのだが、指揮官機を示す頭部のブレードが大きく後方に延びる姿は空飛ぶ恐竜、翼竜の頭部を思わせる。女性型タイプは頭部のブレードと鞭の装備がオミットされた機体がもう一機製作されている。鞭を扱うのは余程愛着がないと難しいと聞いてハルトはビビった。

 黒騎士は二機ともどこか禍々しさを残している。マティスによるとキザイアの趣味も多分に入っているとのことだった。

 二体の魔物を従える聖戦士。ちょっと精神が分裂気味かも。キザイア様色っぽくて綺麗なのになぁ。仕事も出来る人なのに……ストレス溜めすぎなんじゃないの?

 全てに均整の取れたマティスに対してオーレイはファットな印象だ。下半身は太く、龍の爪もオーディーンよりも二割は大きい。頭部の形状は二機ともオーディーンとよく似ている。しかし頭頂部に違いがある。ギリシャ兜風のモヒカンはマナの光ではなく物理的に存在し、オーレイはサイドが短めの三段モヒカン。ノーズガードの両脇に赤く鋭い眼光が灯るのと第三の目に位置するひし形の貴石は各機共通。ここが弱点になることは解消されている。フォルマージュの機能がガード専用に組み込まれ、パイロットが危険を察知すると衝撃吸収機能が働く仕様になった。妖精の森でノーラが乗っていたキザイアの飛甲機の適時物質化キャノピー小型版といったところである。ひし形の貴石の形は機体によって異なる。イリスは細長く、その他はトランプのダイヤの形に近い。

 盾の大きさはパイロットの運用指向に左右される。両腕で大鎌を持つマティスは小型で縦長の盾だ。盾というよりアームガードを大きくしたようなスタイル。片手剣を振るうことを中心に据えるオーレイはオーディーンと同じく大型の盾だ。手持ちの盾を持たないマティスは大鎌の握り手のエンドにパイルバンカーを組み込んだ。

 カラーリングは黒騎士そのもの。黒をベースに赤い装飾が入っている。しかしあくまで黒地に赤の装飾にこだわるマティスに対して、マサルは金の装飾を多く入れている。オーレイ、という名前に「王」の意味があることを訓練にかける情熱が物語っていた。

 マサルは依然グレースとしての故郷オプシディスの期待を背負っている。キザイアとマティスはグレースの内面がマサルになったことに排他的な感じはなく、むしろ好意的に接しているようにハルトには見えた。狂犬マティスのネーミングは引き継がれ、パイロットの人柄からは想像できない大鎌による冷酷な攻撃と防御に磨きがかかっていく。

 

 アバターシュの訓練を重ねる中、ハルトは生身の体術の訓練も精力的に行った。

 剣術の訓練も受けているが、王都騎士団に新たに取り入れられた体術、カラテ・ジュードーの指導教官に任命されたのだ。焚哉とカッツェが副官を務め、素手での格闘になった場合でも生き延びることをキザイアは騎士たちに命じていた。妖精の森に入る前の戦闘で敵が使ったボウガンも騎士団に正式代用され射撃訓練は必須科目になっていた。

 キザイア様は対人戦闘を想定した訓練を強化しているように感じる。

 ハルトと焚哉の組み手は慣れたものだ。絶妙のコンビネーションでハルトの背負投げが決まった。焚哉もしっかり受け身が取れている。

 マサルは西洋的な剣術に日本の剣道を取り入れた。ハルトがキラナで覚えた居合斬りを披露すると、キラナのサムライソードの導入が検討されるようになり、外交官としての焚哉は新たな輸出産業の育成に余念がない。


 そうこうしているうちに後続のアバターシュが次々にロールアウトしていった。

 量産型フレームの比較検討実験を終えた素材も加工され、新規に四機が加わった。


 コロシアムに七機のアバターシュとフォルマージュ・イリスが集結している。

 ノーラ、綾乃、焚哉、珠絵のアバターシュ順応訓練がなされるのだ。

 ノーラが乗るアバターシュ・イリスの白い部分の装甲はピンク系のシャンパンゴールドのものに換装されている。新たにロールアウトした機体の特徴は手足が長めのスリムな機体や女性型に単眼の機体とバリエーションに富んでいる。武装は装着されておらず、装甲はまだ本塗装前の無地白色だ。

 パイロットスーツに着替えた転移組がフィールドに出て来た。迎えるハルトとマサルはすでに乗機しているので男は焚哉だけだ。女性陣にはパイロットスーツを着ていないソフィーが付き添い、そばには妖精フィレーネも舞っている。

 焚哉は紫をベースに黒に金の巴紋ともえもんが入った自身の袈裟をイメージさせるパイロットスーツ。正式な外交官となり胤月と同じ位についた焚哉の法衣は政治的な地位を示す紫色に変わったのだ。

 綾乃以外の女性のスーツは手足をつつむピッタリとした白い素材と水着のワンピースタイプが装着されている。ノーラとノエルはピンクと白が逆転したおそろいのジャパニメーションなデザイン、珠絵は胴体部がカーキを基調にしたミリタリー色の強いデザイン。四肢を包んでいるとはいっても水着と同じく下着をつけず、体にピッタリと張り付く色鮮やかな薄手の生地は体のラインを顕にしている。ノーラとノエルの豊満なボディを強調し、焚哉の細マッチョを強調し、珠絵の幼女体型を強調し。

 その中で綾乃のスーツだけは肌から離れる部分が多く、超ミニスカな巫女装束というのが分かりやすい。源九郎の姉、稲穂の話にインスパイアされた「綾乃ちゃんが持つ神気を引き出すデザイン」とノーラは言っていたのだが、ハルトは単にノーラの趣味な気がしている。初めてパイロットスーツで公の場に出た綾乃は顔を赤らめて恥ずかしがった。

「何だか落ち着かないわ。恥ずかしい……」

 物心ついてから初めてミニスカになったという綾乃はあらわになった太ももを隠すようにして、長い袖口を垂らしながら裾をひっぱってモジモジしている。

「そんなことないって。すんごいかわいいよ。綾乃ちゃんきれーなんだから」

「そ、そそそ、そうかしら?」


 フォルマージュのキザイアからハルトに通信が入った。

「私の妹はさすがだな。ノルン様もタジタジだ」

「キザイア様もたいがいすごい格好してますけどね」

「うん、仲間が出来てうれしいぞ」

 やっぱ恥ずかしいには恥ずかしいんだな。そりゃそうか。

 キザイアのフィルマージュ用パイロットスーツはマナの感応度を上げるため露出度が高い。白いレオタードを着た第二王女が肢体をあられもなく露出している。金髪の巻き髪と美貌が物質化した装甲の中に消えた。

「では始めようか。基本的な操作は屋内で覚えてきたと思うが今日は軽く飛んでみよう」

 サポート機のサジウスは湖上での合同訓練に出ているためカッツェはこの場にはいない。ノエルが少し不安そうだ。

 焚哉、ノーラ、ノエル、珠絵、綾乃、がそれぞれの機体についた担当官に導かれてコクピットに収まった。フィレーネが綾乃にくっついてコクピットに入っていったのがハルトには見えた。妖精の森での確執は無いようで、フィレーネは綾乃をアーヤと呼び、あっけらかんとしていて仲がいいのだ。

 綾乃の魂が宿っのは上位のフェルンだからな、お仲間意識があるみたいだ。そういえばフィレーネの赤い髪に白いレオタードは綾乃のイメージカラーになりつつある巫女服と一緒だな。


 アバターシュの目と頭部に火が入る。頭頂部の光は背中で羽を広げる飛行ユニットへの制御指示を出す役割をする。これは肉体的に人間には存在しない翼という器官への指示出しをパイロットと機体が混乱せず送受信させる苦肉の策の結果でもある。

 珠絵が乗り込んだのは実験的に単眼を採用した機体だ。珠絵が希望して選んだ機体の単眼が左右にスライドし視界を確認している。ノーズガードは短く、目つきが悪いヘルメットと言った方が似合う。

「珠絵、どうだ?」

「問題なさそうです。先輩」

「では全機、起立してみろ」

 キザイアの号令に、片膝を地につけ乗機姿勢だった四機のアバターシュが立ち上がった。

 焚哉の乗る機体は手足が長くスマートな印象。高速近接型を目指している。道幅が狭く家屋が密集しているキラナ首都での市街戦を想定しているのだ。ノエルと珠絵の搭乗機体は体型的には標準に近い。綾乃の女性型の足元は同じくヒール型。イリスとの大きな違いになる指揮官機を表す頭部のブレードがないことで、小さく見える顔の印象は凛々しく獰猛な感じは薄れていて神々しいとも言える。

「しばらく地上で自由に動かしていい。接触には気をつけてな」

 四機のアバターシュが恐る恐る動き出し、ぎこちない動きがなめらかになってくるとノーラとノエルがアバターシュでジャンケンをしだした。

「おーい、なにやってんだー」

「指の動きを確認するのも大事でしょ」

「そうだよ、ハル。繊細な動きを確認するのは大事」

 焚哉は柔軟性を調べたいのか前屈運動をして、綾乃の機体は腕を組んだバレエのポーズでつま先立ちに回った。

「焚哉は準備体操かよ」

「筋肉で動くんだからやっといた方がいいかなぁって」

「ま、まぁな」

 綾乃はある意味すごいけど、みんななんか違う!

「おもしろいことをするのだな。異世界の人間は……」

「すいません……」

 しばらく見守っていたキザイアが再び号令をかけて元の位置の戻ったアバターシュからイリスが前に出る。

「よし、初飛行といこう。エレオノーラ」

「はい、お姉さま」

 アバターシュ・イリスの背中にマナの光が集まる。青の中に赤や黄色が混じった光の粒がインテークに吸い込まれてゆく。排出口から青い光が走りハイヒール型の足元が浮いた。

「浮いた! なんかふわっとするぅ」

「もう少し高度を上げてみろ。そうだな、体の半分くらいまで」

 指示された位置でのホバリングも問題ないようだ。新たな指示で上空を一周するイリスには黒騎士マティスが付き添っている。再びホバリングの状態に戻ってゆっくりと着地した。

 焚哉のインドラが続き、ノエルも無事に初飛行をこなすと、珠絵は「うわっ、うわっ」と言いながらも上空に出て戻り、最後に綾乃の番になった。

 ホバリングまでは同じだった。優雅に空中で静止したかと思うど機敏な動作で高度を上げる。その挙動とスピードは他の機体と明らかに違う。ハルトは見たことがないのだが、天使として生身の体でも飛ぶことができる綾乃の適応力は群を抜いていた。

「さすがだな。アーヤ、そこで止まれるか」

「はい」

 まだ高度がある位置で静止した綾乃にキザイアは「何かやれるか?」と聞いた。

「あれやってみれば。出来ると思うよ」

 フィレーネの声が通信機から入ってくる。

「試してみたいことのがあるのですが、よろしいでしょうか」

「やってみろ」

 白色のアバターシュが発光したように見えた。次の瞬間には弓と矢を握ったアバターシュが空中にいた。足元にはくるぶしのあたりから二本、計四本の光の翅が伸びている。

「フォルマージュと似た機能を使える、ということだな」

「そうだねぇ。アーヤとこのアバターシュならこれぐらいは出来るよ」

「フィレーネ。大丈夫なのか?」

 ハルトはモヤモヤとした不安を抱えた。

「へーきへーき」

「アーヤ、地上に向けて打てるか?」

「はい」

「打ってみてくれ」

 足元の光の翅を水平に広げ、矢をつがえた弓を引くアバターシュ。右手の人差指と親指が離れると、光の矢が地上をえぐった。しばらくして地に刺さった矢は跡形もなく消えた。

 すごい。すごい可能性だ。綾乃やばい。

「うーん、これは機体の所属を考え直さねばならんかもしれんな。まぁいい。それは後だ。よし、本格的に飛行してみよう。私について来い。湖の上に出るぞ。サジウスがいるから心配するな。不安があったらすぐに伝えるように」

 イカルスに乗機したフォルマージュ・イリスを先頭に六人の転移組みとマティスを加えた七機のアバターシュが上空に飛んだ。


天使ノルンでもあり人でもある綾乃はアバターシュでフォルマージュの機能を使えました。

次回マサルの相談からあるプロジェクトが動き出します。

「実情と希望」

 明日の投稿になります。

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