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最近、黒い汚れがちょっと目立ってきたけど、便利な掃除用具もありますね

作者: 新垣加々良

 こ、殺される、一刻も早くこの場から逃げなければ。

 湖の反対側の村に辿り着けば、命は助かるだろう。

 母も、娘も、孫も、みんなあれに殺された。

 村の知り合いは突如現れた奴によって、みんな押しつぶされ、死んだ。

 村で一番物知りな大婆さまも、あんなものは見たことはないと言い残し、すぐに、奴が張った結界によって死んでしまった。

 私は走る、走る、奴によって殺されないように、先に死んでしまった皆の分も生きるために、湖の反対側の村に向かって。



 どれだけ奴から離れただろうか、私は、不定期に来る夜と朝を何度も過ごし、逃げてきた。

 大婆様の話によると、私たちは洪水に因って流されてきた民の末裔らしい。

 流されてきたということは当然元々居た場所があって、その元々居た場所が、今、私が目指している湖の反対側の村だ。

 湖を渡って、その村に行こうかと何度も考えた。なぜなら、湖の反対側の村はとてつもなく遠いからだ。

しかし、大婆様から小さい頃から教えられた言いつけがあったから、私は結局、陸路で行くことにした。

 その言いつけとは、「湖の底は死者の行くところだ、行ってしまえば二度と戻れない、命が惜しければ湖や洪水に近づいてはいけない。水が欲しければ、洪水が起きた後、洪水の水が通った跡に行きなさい。」

といったものだ。

 大婆様がいあったことは事実で、村の人数が増えた時、湖のそばに、もう一つ村を作ろうといった話が出た、大婆様の忠告も聞かずに、村の大人たちの話は進んでいき、村を湖のそばに作ることになった。

 結果から言うと、その村は一日も経たずに崩壊した。

 夜のうちに移転し、移転したはじめは、水が多くて皆喜んだ。しかし、朝が来て、洪水が来た。

 その日は、食料もたくさん手に入れられたが、洪水が、一日に何度も来た。

 洪水に因って、村の人たちは、何人も押し流され、湖の底へ流されていった。

 もう、二度と、あんなところに行きたくはないと、命からがら逃げだしてきた人は、湧水地の近くの村である私たちに言った。

 そんなことを思い出しながら陸路を進んでいくと、朝になり、湖の反対側に近くに来ていたことがわかった。


 その時、天から神の手によって大きな物体が地面に押し付けられ、『ぶにゅうぅぅ』と、いった音がふさわしいような感じで、奴は現れた。


 あぁぁ、奴が来てしまった、これで私の人生も終わった。

「大婆様、母さん、子供たち、ごめんなさい。私はここで、終わりのようだ」

と、嘆くように私は言い死んだ。


 死ぬ直前、私は神の声を聴いた。


『おかぁさぁぁん、トイレ掃除って、このへんなのをぶにゅううって、べんきにつけるだけでいいの?』




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