第3話 魔王と勇者……(1)
〈カン! ガン! カン~! ガシャ~!〉
『う~ん、くっ、辛い……』
と、ついついと弱音を吐きそうになる儂だよ。この亜ノ国の女王なのに……。
我が民……。
そして、あの夫の形見となる娘を守護しなければいけない身分なのに、儂は敵の将の荒々しい攻撃の前に押され気味……。このままでは屈してしまいそうな様子なのだよ。
だから儂の口から弱音が漏れる。
また儂の口から弱音が漏れるということは?
敵の将であるあの者……。
そう~、只今、この魔王レヴィアタンと、荒々しい剣戟を交わし、交えている敵将──!
勇者──!
その者に、魔王である儂は、押され気味──。
このまま下手をすれば、儂の命の灯が消えてなくなりそうなのだ。
だから魔王である儂ですら弱音を吐きたくなる。
まあ、こんな様子の儂だから、只今対峙中の上に、剣戟を交わしている最中の勇者には。魔王である儂の魔力が落ちていることは、手に取るように分かる。
「魔王~。我に降伏をしなさい~。そして我が王に屈し~。この国と貴女の身を王へと捧げ~。慈悲を受けなさい~」
だから勇者は、魔王である儂に対して、こんな感じの台詞を苦笑しながら侮り、蔑みながら告げてくるよ。
儂はこの国……。亜ノ国の女王レヴィアタンなのに……。
自国の王が、儂の身を求めているから。敵国の王の性玩具になることを条件に、儂の身は助けてやってもよいと、ふざけた台詞を告げてくるのだ。
だから儂は笑止千万──!
儂のこの身は、我が姫の父である王の物──!
何人たりとも触れ指す訳にはいかぬ!
いくら儂と王とが、別居生活状態だとしても。この身は儂の主人の物であり。殿と別れた後も、儂は浮気などしていないのだ。
だから儂は、殿以外の男性(者)に、自身の身体を振れ触られるぐらいならば。この場で自害をして果てるつもりだと思っている。