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第3話 魔王と勇者……(6)
だから儂は更に、慌てふためきながら、勇者の容姿を探す。
う~ん、でも~? 儂の持つ紅の瞳には勇者の姿が映らないだ……。
と、儂が思ったと同時に。
「きゃ、あああ~」
と、幼い少女の絶叫が聞こえてきたのだ。
だから儂は、声の主へと視線を変える。
と、同時に。儂の紅の瞳には、勇者に喉元を握られて──。宙吊り状態になっている。真っ赤な甲冑を着込んだ我が娘の姿が映るのだよ。
だから儂は、慌てふためき二人へと詰め寄ろうと試みる。
と、同時に、今度は娘ではなく勇者が口を開く。
「そんなに母よりも先に~。あの世へといきたいのか~。小娘~?」
勇者は宙吊りにしている我が娘に、こんな台詞を告げるのだよ。
それも~? 我が娘を侮り、苦笑をしながら告げる。
「ううう~。殺せるものなら。殺してみなさい~。勇者~。妾達魔族は、侵略者達に対して、絶対に服従はしない~。最後の一人になっても戦ってみせますから~」
と、誰に似たのか? この世界最強の武士に対して、負けん気のない勇んだ台詞を告げるのだよ。