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知勇の士達  作者: Yuri
第六章 二人の少年(異世界・ウィルデアルヌス編)

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37、丘の上

エルヴィンは店が立ち並ぶ道から出ると、左側の細道を指し示す。この先、暫く坂道が続くが十五分ほど歩くと、コレットが言っていた『草原の丘』にたどり着くらしい。

「『草原の丘』って、どういうところ?」

 道幅が狭くなって人一人しか通れなくなると、エルヴィンが先導し夏美が後ろを歩いた。彼は夏美の質問に、ちょっと後ろを振り返りながら答えてくれる。

「行けば分かるよ。草原って言うと、ちょっと壮大な名前だから本当は原っぱの丘くらいがちょうどいい名前だと、僕は思うけどね」

「そうなんだ」

「でも、見晴らしのいい気持ちのいい場所だよ」

「それは楽しみ」

 丘の中腹までくると、舗装された道が途切れ土がむき出しになった道に代わる。私はコレットに買ってもらった、真新しいブーツに歩きにくさを感じつつもも、なだらかな坂道を淡々と上ってゆく。

 そしてようやく丘の上に辿り着く。

 エルヴィンが言った通り、『草原』というよりも『原っぱ』という方があっているかもしれなかったが、そこは背丈の短い草が丘の上、一面を覆っていた。

 夏美が丘の上に立つと、そこは気持ちのいい風が吹き抜ける場所で、街も一望できる。東京に長くいた夏美にとって、大して高くもない丘の上に立ち、町を一望できるのが不思議な感覚だった。東京はビルが多すぎる。街を一望するには、スカイツリーにでも上らなければ見ることはできない。

 だが、ここはこの小さな丘でも遠くにある港まで見える。建物の大きさを競い合っているところがないお陰で、遠くまで見渡すことができた。

「気持ちいい」

 夏美は両腕を青い空に向かって、ぐっと伸ばした。

「でしょ?」

 エルヴィンは得意げに言った。

「僕もこの場所はお気に入りなんだ」

「そう思う気持ち分かるな。いい場所だね」

 エルヴィンは、深く息を吸うとその場に足を抱えて座る。彼は気持ちよさそうに、流れてくる風を感じているようだった。

 夏美はエルヴィンをその場に残し、丘の上をぐるりと一周することにする。港町が見える場所は東の方角。そこから南、そして西の方へ歩く。少し大きな建物は、学校だろうか。それから住宅地が広がり、遠くの方には畑とゴツゴツした岩山が見える。

 そして夏美が北側の方へ歩を進めると、北側から緩やかに下の方に落ちるように洞窟があった。

 しかし、洞窟とは言っても出入り口の高さは一・二メートルくらいで、幅はそれより少し大きいくらいである。子供がかくれんぼするのに入るには丁度いいくらいな場所だ。夏美は中がどうなっているのか気になって、屈んで中を覗いてみた。

「…ん?」

 夏美は首を傾げる。

(今、何か見えたような気がする)

 目を瞬かせ、首を捻る。

(人?)

 夏美はもう一度、洞窟の中を覗いてみる。すると、洞窟の中にわずかに入り込んだ光で、そこにいたものが見えた。

「人だ…」

 その人は、洞窟の岩に背を預け、目をつむっていた。

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