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知勇の士達  作者: Yuri
第一章 突然の訪問者(地球編)
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1、微睡

 大学の夏休みが近づいていた。今年は梅雨の時期があったのかすら分からないほど雨季が短く、あっという間に夏が来た。七月に入ってからは連日猛暑が続いている。

 有瀬夏美は、大学三年生だ。そろそろ就職のことも考えなくてはいけない時期に差し掛かっているが、どうしたいのか自分の中で定まっていない。親が暗に「公務員になれ」というプレッシャーをかけてくるので、とりあえず社会の教師になるための過程はとっているが、やる気はまるでない。

(社会の先生の需要って、少ないよなあ…)

 主要三科目である、国語、数学、英語と比較すると、「社会」という科目は受験科目において必要性は低く、内容も政治・経済・歴史という風に分かれている為、授業の中身によっては好きだと思う子は少ないだろう、と夏美は自分の経験上そのように思っていた。それに小学生から高校生まで、社会は「暗記科目」というイメージが固定されている。

 夏美の勝手な判断だが、「社会」という科目の必要性は子供たちにとって低いと思っていた。

「―世の中は『善』と『悪』という風に分けられますね」

 講壇に立っている教授が、ようやく授業の内容を話始めた。お昼を挟んだ後の授業は哲学なのだが、最初に他愛もない雑談をしてから先週の続きを説明するのが、この先生の特徴だった。確か今はニーチェの話だったはずだ、と夏美はぼんやりと思う。

「『善』とは大抵の人が思うには、成功しても謙虚であることやボランティア活動をするような人、つまり報酬を求めないで労力を惜しみなく使えることなどが挙げられそうですよね。一方で人の財産を奪ったり、権利を抑圧したりすることは『悪』とされています。しかし、それは人それぞれの自分の価値観で物事を見ているに過ぎない。そう言ったのがニーチェなのです」

 夏美は単位取得のために、哲学の授業を受けていたのだが、これが中々理解できない。バークリーとか、ゲーテとか、聞いたような聞いたことがないような人の名前が出てきたと思ったら、「部屋を離れたとき、その部屋は存在するか。存在するためにはどのようにして証明できるか」というちんぷんかんぷんな問題まで出てくる。

(哲学を習っていて、役に立つときはくるのかな…)

 そんなことを思いながら、夏美はお昼ご飯を食べた後に来る特有の眠気に負けて、結局今日の講義も最後まで聞けそうにない。

(眠い…)

 そうするうちに夏美は微睡の中、夢を見ていた。


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