エピローグ
このお話はフィクションです、実在の人物団体等とは一切関係ありません。一応推理小説です。後半格闘シーンがありますし、人死にが出ます。ご注意ください。これで、とりあえず完結です。
エピローグ
仙川駅への近道になる暗い道。朝や昼ならいいが、夜に女の一人歩きは勧められない。案の定、背の高い女の子が二人組の男に追われている。
スリムのジーパンと、白いTシャツ、背中の中程までの髪も揺れている。
「やっぱり近道なんか止せばよかった」
もう、そんなに距離が離れていない。彼女にとってさらに悪いことに、道が、鬱蒼と繁った暗い雑木林に沿ってのびていた。やがて、追いつかれた彼女は、雑木林の中に引きずり込まれた。二人がかりで押さえ込まれて、抵抗する手段のすべてが奪われた
「(もうだめかもしんない)」
彼女が諦めて体の力を抜こうとしたその時、高らかなラッパの響きとともに騎兵隊が…じゃない。大声とともに一人の男が現れた。男は、道から雑木林をのぞき込んで、叫んだ。
「おい!、何をしているんだ、貴様ら」
その男を見た彼女は、助けが来たと一瞬膨らんだ希望が、みるみる縮んでいくのを感じた。現れた男は、身長160cmにも満たない小柄な青年だったからだ。トレーニングパンツに半袖のTシャツ、どうやら、ジョギングの途中らしい。一瞬ひるんだ賊も、相手が小柄な男でしかも一人なのを見て、すぐに余裕を取り戻した。
「うるせえ、怪我したくなかったら、とっとと失せろ」
暴漢二人は、まるで相手にしようとしない。だが彼らは、相手の実力をはかり損ねていた。その男は、柔剣道会わせて7段の猛者だったのだ。男は、雑木林の中に飛び込んでくると、一人目の男の顎に裏拳を見舞った。あわてて向き直る二人目には、返す拳で右フック。体格や、腕力の違いを補って、なお、あまりあるすさまじいまでの戦闘技術だ。息も切らしていない。
「大丈夫かい?、怪我は無いかい?」
男は、彼女を軽々と助け起こすと、携帯をとりだし、110番した。彼女は、驚きで声も出ない。彼女よりも20cmは、背が低いであろう男が、体格に勝る二人の男をあっと言う間に片づけたのだ。
彼女は、男が電話を掛け終わった頃、ようやく我に返った。
「あ、ありがとうございました」
「いいよ、礼なんて」
と、そこにパトカーがやってきた。パトカーから降りた警官は、男を見るなり、敬礼した。
「大山警部!!、只今到着いたしました」
大山は、苦笑した。
「…オレは今日、非番なんだ。堅苦しいのは抜きにしてくれよ」
「…(名前、大山さんっていうんだ…)」
次の日 午後三時、お茶の時間だ。江戸川も英吉も外出していて、絵美一人が事務所にいる。絵美が、ティーポットにダージリンを一匙入れたとき。階段を上がってくる足音が聞こえて、事務所の入り口のドアが開けられた。
「また来たの?」
ドアから入ってきたのは、彼女よりも22cm背が高い、妹の直美だった。
「あ、ちょうどよかった、あたしにもお茶頂戴」
絵美は、紅茶を手渡しながら。
「あたしはここで仕事してるんだから、しょっちゅう遊びに来ないでよ」
「いいじゃない。ここって、あたしよりも大きい人が居る、貴重な場所なんだから」
絵美は、意外そうだ。
「へーあんた、護国寺君が目当てなの?」
直美は笑いながら答えた。
「じょーだんよ」
絵美も笑っていたが、急にまじめな顔になってお説教を始めた。
「あんたってば勉強もしないで遊び歩いているけど、大丈夫なの?。一応受験生なんでしょ?」
「平気よ、あたし高校卒業したら、ここでお世話になるつもりだから」
「なにいってんのよ」
そこへ、今日二人目の招かれざる客がやって来た。
「おはようさん。あれ、お客さん?」
大山である。大山は、視線を上げていった先に、見たことのある顔を発見した。
「あれ?、君は・・・・・・」
「大塚直美です。来年の4月から、こちらでお世話になるつもりですので…よろしく!!」
出先で江戸川が、くしゃみを、一つした。
了
最後まで、お付き合いいただき、ありがとうございます。
10年前に書いて、続編も書かずにそのままほっといた理由は、
あらたな殺人のネタ、トリックを思いつかなかったからなんです。
それと、乱闘シーンや、憎悪をつのらす恨みつらみのシーンを書くことが苦痛で、
イヤでイヤでしょうがなかったんですね。
エピローグはとっとと書き終わったのに、
シーン16 〜シーン18.9(7つ目相当分)が全然できなかったことを覚えています。
「好きこそ物の上手・・・」とか言うと思いますけど、
「イヤこそ物の下手・・・」みたいな出来だと思います。
今回、修正するところがあるか、ざっと読み直すのも辛かったです。
そんな訳で、暴力シーンや、人死にが出る話は、あらたに書けそうにないんですが、
この登場人物たちには愛着があるので、
10年前に書いた「ネタ帳」にある小ネタを消化しつつ、
探偵物でないエピソードを書いていこうかなと。
(探偵が出てきて探偵物でないって、どんなのだ?)
予定であって、決定ではありません。すいません。
10年ぶりに開くんですが、ネタ帳の中には直美ちゃんの話とか、
英吉くんの話とか、絵美ちゃんのキスシーン案があるハズ。
(キスシーンのシチュエーションは【アイス】物で使ってしまった)
10年前の自分に言ってやりたい。
「どうしてネタ帳だけ一太郎形式でしか残さなかったんだよ、このバカ〜」
最近ワープロソフトって全然使わないんで、メインのPC にはインストールしていないんですよ。
Word 入りのPC まで持っていってWord で無理やり開ければよし、
開けなければ一太郎をインストールするしかないかなと・・・
使っているテキストエディタは、メモ帳とTepaEditor です。
【アイス】物を書いたり【ABO】のあとがきを書いたり修正するのには、
Story Editor を使っています。
話数、それぞれのあとがき等を階層構造で管理できるので便利ですよ。
キーボード左側のCtrlキーが調子悪いので、
「Ctrl+C」が「C」、「Ctrl+V」が「V」になったりして、肝をつぶす毎日です。
2008/08/15
続編といいますか。
このシリーズで短編の連作を始めました。
ABO式ドロップス
http://ncode.syosetu.com/n8583e/novel.html
よろしかったらご覧ください。