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シーン4 探偵の行くところ殺人有り〜シーン6.8 乾燥重量149kg

このお話はフィクションです、実在の人物団体等とは一切関係ありません。一応推理小説です。後半格闘シーンがありますし、人死にが出ます。ご注意ください。この話で描写されている内容を模倣しないでください。電気関係の法律に違反する可能性があります。分電盤をアスキーテキストで表現した部分があります。携帯をお使いで見えずらい方はPCサイトビューア等を使ってみてください。

シーン4.0 探偵の行くところ殺人有り 〜石橋本町の常盤邸〜


江戸川は、今まで数々の調度品に目を奪われていて、会話に参加していなかったのだが、唐突に一郎に尋ねた。


「書斎に入ってもよろしいですか?」


「ええ、どうぞ、ご一緒します」


 江戸川は、一郎に案内されて、リビングの北側の書斎の中に入った。

被害者の三四郎は、酸素濃縮装置の管を着けて歩いていたので建物にはドアがなく、部屋の境にあるのは、すべて引き戸だ。

書斎は建物の北西の角にあり、四方の壁は、机、パソコンデスク、入り口の引き戸、西側の小さめの窓を除いて、残りの全てを、本棚に占領されていた。


「凄い本ですね」


「仕事の関係上、しょうがない部分も有ったんですよね」


 江戸川はパソコンに歩み寄った


「ああ、壊れてしまってますね」


 大山は、鑑識課員を呼び、尋ねた。


「なにか、解ったか?」


「壊れていた物は、書斎のパソコン、台所の冷蔵庫、そして、酸素濃縮装置です」

「以上の物すべてに、アース線、もしくはアンテナ線が、接続されています」


「やはり雷だろうな、よし、調査を続けろ」


「大山さん、大山さん」


 江戸川は部屋の隅に大山を手招きして、小声で話しかけた。


「大山さん、おかしいと思いませんか?」


「何が?」


「何故壊れている物と、壊れていない物とが有るんですか?」


「偶然だろ?、江戸川君は何でも殺人事件にするからなあ」


 江戸川は大山に返事をしなかった。そのまま一郎に向き直り。


「すいません、お電話をお借りしても宜しいですか?」


 書斎のコードレス電話を手に取り、事務所に電話する。


「………絵美ちゃん?、英吉君はいるかい?」

「ああ、そうか。携帯に連絡してこっちに来るように伝えてくれないか?」

「そう、石橋本町の。うん、知らなかったら住所教えてあげて」

「彼、地図持っている筈だから」

「あと、5時になったら事務所閉めて、君もこっちに来てくれ、それじゃ」


「江戸川君…」


大山と、一郎が、目を見開いて江戸川を見た。



シーン4.3 午後の紅茶 〜江戸川探偵事務所〜


 絵美は、江戸川からの電話を切ると、英吉の携帯の留守電にメッセージを入れた。

ビーという名の黄色いオウムは、上機嫌で何やら、さえずっている。


 絵美は、のびを一つすると、


「ひと休みするかー」


 ポットを手にとり紅茶を見やる。

事務所の主の嗜好を物語るように紅茶の種類は豊富だ。


「オーソドックスにダージリンにしようかな…でも、オレンジペコもすて難いし」


 と、突然芝居掛った口調になり、


「ダージリンにするべきか、オレンジペコにするべきか、それが問題だ」


「エエカゲンニシナサイ!」


「あんたとはやってられんわーって、ビーちゃん!!」


[ハイ!」


「ビーちゃん、私のこと好き?」


「スキ!」


「ありがとう!、私もビーちゃん大好きよ☆」


「…ビーちゃんになら、言えるのにな…」


 電話が鳴った。


「はい、江戸川探偵事務所でございます」

「あ、護国寺君。あのね、石橋本町の常盤宅に行ってほしいの」

「先生と、大山さんが居るはずだから」


 絵美は、常盤邸の住所を教えた。


「さあて、仕事、仕事」



シーン4.6 衝突? 〜石橋本町の常盤邸〜


「江戸川君、どうして…」


 大山が戸惑いながら尋ねた。

江戸川は、一郎に電話の礼を言ってから、大山の問いに答えた。


「冷蔵庫も、パソコンも、エアコンもアース工事がしてありますよね」

「それなのに、冷蔵庫とパソコンが壊れていて、エアコンが無事って言うのは、矛盾しているんです」


「しかし」


 江戸川の口調が、できの悪い生徒を諭すような、それでいて半ばからかうような調子に変わった。


「原因を雷と決めつけて捜査するのは、危険ですよ」

「あらゆる可能性を考えないと」

「また、早とちりが元で失敗しても知りませんよ?」


 大山は、少なからず、気分を害したようだ。



シーン4.8 英吉移動中 〜常盤邸付近〜


 英吉の移動手段は、主に自転車である。通勤用兼、尾行用の自前のマウンテンバイクだ。

自動車の免許と、自動二輪の免許を持っているのだが、滅多に運転はしない。生来の乱視に加え、近頃は近視の度もすすみ、標識がよく見えないのだ。


英吉曰く。


「交差点の向こう側の信号の下についている標識が、交差点に入って、交差点の半ばまで行かないと読めないんです」

「え?、免許の書き換えの時の視力検査ですか?、目を細めてごまかしているんです」

「だからたまに運転なんかしちゃうと、よくても違反、悪くすると事故を起こすんですよ」


 かくして彼は、今日も元気に自転車のペダルを踏んでいるのだ。



シーン5.0 BUFFER 〜常盤邸、書斎〜


 英吉が入ってきた


「失礼します」

「どうもすいません、おまたせしまして…」


 江戸川は、英吉の話を遮った。


「英吉君、この家の電気関係」

「壊れた物、壊れていない物、あと、回路分けなんかも調べてみてくれ」


「はい」

「あ、初めまして、僕は、護国寺英吉と申します」


 英吉は、一郎に挨拶した。


「江戸川探偵事務所の調査員です」


「英吉君!?」


 江戸川が顔をしかめたのを見て、英吉は身を縮めた。


「挨拶は大事ですからね」

「では、早速」


 振り向き一郎に向かって小声で


「すいません、うちの先生ああいう人だから」


 英吉は、足早に書斎を出ていった。



シーン5.3 Just 5 o'clock 〜江戸川探偵事務所〜


絵美が、ドアを閉めようとしてる。


「ごめんね、ビーちゃん。ビーちゃんは連れていけないの、そんなに、鳴かないで〜」



シーン5.6 壊れている物、壊れてない物 〜常盤邸、書斎〜


 英吉が、息を切らして帰ってきた。


「先生、よそは、一通り調べてきました、後はここだけです」

「えーと、あれ?」


「ん?、どうした?」


「テレビもミニコンポも無事なんですよ、へんだなあ」

「テレビには、アンテナ線。ミニコンポには、アース線も、FMのアンテナもつながっているのに」


「アンテナは何処にあった?」


「屋根の上です。一本のポールに上から、FM、UHF、VHF、BSの順に。FMだけ別の電線で、このミニコンポまで」


「アース工事は何にしてあったんだ?」


「えーと、パソコン、ミニコンポ、電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機、乾燥機、シャワートイレ、それからエアコンが4台とも全部。それと酸素濃縮装置の本体」

「こんなにきっちりアース工事してある家って珍しいですよ」


「うん、で、何が壊れていた?」


「廊下の常夜灯、これは、暗くなると勝手に灯る奴です。それと、主寝室の常夜灯、これは照明器具の中のナツメ球です」

「それから台所の冷蔵庫、パソコン、最後に酸素濃縮装置です」

「あと、壊れてはいなかったんですが、ビデオデッキの時計がパーになっていました」

「雷って落ちると怖いんですね」


「なるほどね、絵美ちゃんが来たら、分電盤の写真を撮っといてもらおう」



シーン6 絵美合流 〜常盤邸〜


 フラッシュの眩い光芒が洗面所の中を照らし、絵美が、分電盤の写真を撮った。

洗面所は、建物の北側、東西のほぼ真ん中にあり、西にキッチン、書斎。東側には、浴室、トイレ、北東の角に納戸があった。洗面所の、廊下を挟んだ向かい側には、客間の和室があり、そのとなり、建物の南東の角には、主寝室があった。


---------------------------------------------

ブレーカー番号 1:玄関廊下

ブレーカー番号 2:リビング

ブレーカー番号 3:主寝室

ブレーカー番号 4:電子レンジ

ブレーカー番号 5:客間エアコン

ブレーカー番号 6:主寝室エアコン

ブレーカー番号 7:酸素濃縮装置

ブレーカー番号 8:トイレコンセント

ブレーカー番号 9:客間

ブレーカー番号 10:書斎

ブレーカー番号 11:台所

ブレーカー番号 12:洗濯機乾燥機

ブレーカー番号 13:書斎エアコン

ブレーカー番号 14:リビングエアコン200V

ブレーカー番号 15:パソコン

ブレーカー番号 16:予備

---------------------------------------------


 絵美は振り向いて、尋ねた


「これで何が解るんですか?」


「壊れた物がどの回路にあるかなと、思ってね。これが何の役に立ってくるかは、この後も調べてみないとね」


「はい、先生」


 江戸川は、大山を伴って庭に出た。


「大山さん、死亡推定時刻を調べてもらってください、多分、夕立がやんだ後、夜になってからだと思います。それから、電気のメーターと、その回り、特に地面を調べてください。夕立の後ですからね、足跡が残っているかもしれない。それから最後に、常盤さんの人間関係」


 大山は江戸川の依頼をメモして尋ねた。


「江戸川君、その、どういうことなのかね?」


「雷鳴の後に、酸素濃縮装置に高電圧をかけて、壊すことが出来たなら、疑われることなく、事故死と思わせることが出来るでしょう?」


「そうかもしれんが、そんなことが出来るのかね?」


 江戸川は大山の問いには、直接答えず。


「第一発見者は、和光さんですよね。話を聞いてみて、いいですか?」


「構わんが、和光さんならもう帰ったぞ?」


「あっそうか、帰らせちゃってたんだ、しょうがないなあ。直接話を聞くのは、明日ですね」

「で、どんな状況だったんですか?」


「和光さんの話によると、いつもどうり、朝食をつくるために朝8時に常盤宅に来たらしい。ところがインターホンにも出ないし、ノックをしても返事がない」

「それで、まだ寝ているのだろうと思って、合い鍵を使って勝手口から家の中に入ったんだそうだ。そして、寝間着と部屋着兼用のジャージ姿で、廊下に倒れている三四郎さんを発見したんだそうだ。あわててリビングの電話で、救急車を呼んだらしいが、そのときにはもう…」


「今日エアコンをつけたのは誰なんですか?それともエアコンはつきっぱなしだったんですか?」


「あ、すまん、訊かなかった。てっきり雷のせいだと、思っていたから」


 江戸川は、肩を竦めてため息をつくと。


「後は、明日直接あって聞くことにします。それじゃ、先ほど頼んだことよろしくお願いします。絵美ちゃん、英吉くん、引き上げよう」


 三人は常盤邸を後に歩き出した。夏の高い太陽も、すっかり傾いていた。


「二人とも今日は、直帰でいいよ。タイムカードは、僕が押しておくから」


 英吉は通勤用兼、尾行用のマウンテンバイクで走り去ったが、絵美は江戸川の後ろについて歩き出した。身長の差が30cmぐらいあるので、歩幅がまるで違うのだが、1m位の間隔を保ってついていく。江戸川は、それに気付くと、


「えーと。 え、絵美ちゃん、駅まで送るよ、暗くなってきたし、同じ方向だものな」


絵美は、微笑んで首を縦に振った。



シーン6.8 乾燥重量149kg 〜江戸川探偵事務所裏の駐輪場〜


 真夜中、事務所で調べ物を終えた江戸川が、愛車の前にたたずんでいる。OHC、空冷の単気筒。なのにキャブレターが二つ、バルブが四つの変わり種。大型免許がないと乗れないバイクなのだが、持ち主に似合った、スリムなバイクだ。マフラーは、アメリカ製の物に取り替えてあって、英吉の表現を借りると、


「ドパパパパパパ、パパンパンパン、バババババ」


という音がする。普段は、近所から白い目で見られていても全然気にしない江戸川なのだが、さすがにこの時間に騒音をたてるわけにはいかず、川越街道までは押していこうとは思うのだけれど…


「排気量の割には、軽いバイクと言ってもなあ」


 早い話が途方に暮れているのである。


「アイス」物は現在鋭意作成中です。すいません。人気ないのがわかっているんですが、こちらは完成済みのものを分割して修正してうpするだけなので楽なんです。

時代にあわせて「ポケベル」関係を「携帯」関係に修正。

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