シーン2 大山刑事来訪/シーン3 エアコンは科学の勝利
このお話はフィクションです、実在の人物団体等とは一切関係ありません。一応推理小説です。後半格闘シーンがありますし、人死にが出ます。ご注意ください。この話で描写されている内容を模倣しないでください。電気関係の法律に違反する可能性があります。
シーン2 大山刑事来訪 〜江戸川探偵事務所〜 8月26日(火)
夏の昼下がり、エアコンの使われていない室内はかなり暑い。
招かれざる来客の大山刑事は、事務所の中に入って開口一番、
「おはようさん、ここは相変わらず暑いな。エアコンの持ち腐れだね。」
絵美が、仕事の手を休めず、顔も上げずに返事をした。
「ビーにはこれで、ちょうどいいの」
「オウムは本来、亜熱帯産なんです。冷房なんか入れたら死んじゃうわ」
「大塚君……」
英吉が、口を挟んだ。
「そう、そう、いやなら帰ってください、仕事のじゃまです。それに、エアコンなら、ちゃんと仕事しましたよ、冬に。」
「護国寺君も冷たいなあ、わかりましたよ我慢しますよ」
「何のご用ですか?、大山さん」
全く気配を感じさせずに、江戸川が傍らに来ていた。
大山は、来訪の目的を、思い出したようだ。
「江戸川君、昨日の雷雨を覚えているかな」
江戸川は、アメリカの某SFテレビドラマの航宙士よろしく片眉を上げた。
「石橋本町に雷が落ちたらしくてね、人が一人死んでるんだ」
「君も聞いたことあるだろう?、常盤三四郎さん」
「小説家の?」
江戸川は、怪訝な顔をして訪ねた。
「雷に直撃したんですか?、運の悪い人ですね」
「いや、室内なんだが」
「?、何故室内で?」
「詳しい原因はまだ調査中なんだが、常盤さんは、低肺で、機械を着けていたんだ」
「酸素濃縮装置ですか?」
「そう、それだ。そいつが落雷のせいで、壊れてしまったということらしいんだ」
「ま、直接の死因は、心不全ってことになるんだろうが、ね」
「君は、電気に詳しかっただろう?、ちょっと協力してほしいんだ」
「そうですか。事情は解りました」
「今、現場には、入れますか?」
「ああ、入れるよ、一緒に来てくれると有り難い」
「いいでしょう」
「絵美ちゃん、英吉君、ちょっと出るから後よろしく」
「はい、先生、いってらっしゃい」
ドアが閉まると英吉は絵美に言った。
「大した事件でもないのに、どうしていつも来るんですかねえ」
「暑いだの、コーヒーも無いのかだの、文句ばっか言うくせに」
「何が目当てなんですかね?」
「下らないこと行ってないで働きなさい!」
「向井原の浮気調査はどうなってるの!?」
「今、行きます!」
英吉は、へその辺りを隠して言った。
「くわばら、くわばら」
「護国寺君!!」
絵美の雷が落ちた。
シーン2.3 歩いて移動中 〜中山駅踏切辺り〜
夏の強烈な太陽に照らされて、二人の影は極端に短い
江戸川は、大山に尋ねた。
「常盤さんが亡くなったとき、ご家族の方はどうしてたんですか?」
「常盤さんは、一人暮らしでね、お手伝いさんが居たらしいんだが、」
「常盤さんに勧められて早く帰ったらしい。傘を借りてね」
「常盤さんは、一人だったんですか」
「ああ」
「ご家族の方は?」
「両親はとうに死んでいる、奥さんも早世している。子どもは三人いて、上から、女、男、女」
「長姉の方は、結婚している。長男も結婚して、独立している。一番下の妹は、近所のアパートに独りで住んでいる。常盤さんは一人で暮らしていたんだ」
「まあ、身の回りのことは、お手伝いさんもいたしな」
「雷が原因って言ってましたよね」
「常盤さんの建物か、近所に落ちた雷が、アース線から逆流したらしいんだ」
「しかし、暑いなあ」
大山は、ハンカチを取り出し、しきりに顔の汗を拭く。小柄なからだからは想像もできないが、柔剣道合わせて7段。
数々の武勲もあげているらしい。
「でも、これも、常盤さんの家に着くまでの辛抱だ」
「あそこは大きいエアコンがあって涼しいからな」
「?」
江戸川は、不思議そうな顔をした。
そうこうしているうちに、坂道を下り終えて、会話が途切れた頃二人は常盤邸に着いた。
シーン3 エアコンは科学の勝利 〜石橋本町の常盤三四郎邸〜
常盤邸は、北に向かってまっすぐのびた路地の突き当たりにあった。
南側に銅葺きの立派な門。四方を、石を積んだ壁に囲まれた、23区内にしてはかなり広い敷地に建っていた。
西南の角に桜の木、東南の角には、欅の大木が、在った
平屋建ての切妻の屋根。東西に細長い建物の、南側の真ん中に玄関があった。
北西の角に、通用門。建物の北側には、勝手口があり、エアコンの室外機が集められていた。
建物の西南側には、サンルームが付随していた。
二人は、邸内に入っていった。
建物の中は、外の暑さが嘘のように涼しい。
「又、おじゃまします、常盤さん。こちらは江戸川君です」
[どうも…]
「初めまして、江戸川さん。私は、常盤一郎と申します」
江戸川と一郎は、挨拶を交わした。
「まあ、立ち話も何ですし、どうぞこちらへ」
玄関ホール、リビング、ダイニング、そして、キッチンの間には境界がない。
床に段差をつくらない意匠が見て取れる。
リビングは、南西の角にあり、この建物の四分の一ほどもある広さだ。
南側のサンルームに出れば庭の桜がよく見えるだろうと思われた。
家主の趣味なのか家具、調度品は、ブラウンに統一され、落ちついた雰囲気を醸し出している。
警官らが何やら調査をしている。
大山は、出されたおしぼりで顔を拭きながら
「ああ、暑かった。エアコンは、科学の勝利ですなあ」
「和光さん、すいませんが、お茶をお願いします」
一郎は家政婦の和光に茶菓子を頼むと、
大山に向き直り、
「刑事さんは、さっきいらしたときも、そうおっしゃてましたね」
大山は頭をかいた。
「いや、お恥ずかしい。暑がりなもので」
「このエアコンは、私が取り付けたんですよ」
一郎が指さしたエアコンは正方形でリビングの天井に埋め込まれていて、業務用かと思うほどに大きい。
「すると、ご職業は」
「ええ、エアコンの取付工事をやっています」
「こんなに大きいと電気代が、かかるでしょう?」
「いえ、200Vの機械ですから、それほどでもないと思いますよ。電流が、100Vの同じ機械の、半分で済むんです」
「電気料金の計算の仕方までは解らないんで確かなことは、言えないんですけど」
「いい親孝行が出来ましたな。あ、すいません、とんだ失礼を」
「いいんですよ。父は、医者にも「30まで持てばいい」と、言われていたらしいんですから」
「手術した当時の平均年齢は五十歳ほどだったって言うんですから、65になるまで生きて父も本望でしょう」
「はあ、そうですか。で、これからどうなさるおつもりですか?」
「遺書がないんで…分けられる物は、姉と妹と私とで三等分して、この家は私が…」
「ここに引っ越すかどうかは、まだ決めてないんです。妻と相談してから、考えます」
「はあ、そうですか」
大山は頷きながら言ったが、何か納得がいかないようだ。
「(姉と妹と三等分?、妹はともかく姉は嫁に行ってるんじゃないのか?、珍しいな。)」
和光が、お茶を入れてきた。
「ありがとう、和光さん。色々あって疲れたでしょう?」
「今日は、もう結構です、帰って休んでください。又、明日よろしくお願いします。後は、僕がやっておくから」
和光が、帰っていった。
一郎は、和光が出ていった扉の方を見ながら言った。
「和光さんは、よく気の付く人で、父によく、つくしてくれたんですよ」
「でも、和光さんには気の毒だけど、辞めてもらうしかないかな、と思っています。私の家庭には、家政婦は必要ないので」
連載するときの2話目以降の投稿方法がきになったので、
ちょっと夜更かしして投稿しました。明日も仕事だから、もう寝ないと。




