十四
十三の後半を大幅に書き直しさせて頂きました。
手直し後をまだお読みでない方は、お手数ですがそちらからお読み下さい。
もし気になることがありましたら、ぜひ教えて頂けると有り難いです。
ゆっくり、でも確実に絡みついてくるエロい指を、ただただ見つめる。
呆然とされるがままに見つめ続ける私の姿は、先ほどの彼の言葉を借りるなら、今の状況を受け入れていることになるんだろう。
それを証明するように、今まで絡めていただけの指が、撫でるように輪郭をなぞり出す。
時折感触を確かめるようにギュッと優しく握り込んできたりもして。
まるで、私に見せつけているみたいだ、って変な気分になる。
後ろめたい気持ちがあるから余計にそう思うのかもしれない。
さっき散々、超絶イケメンでエロいこと考えてたから、エロいことされてる気分に私が勝手になってるだけなのかもしんない。
だって、手を握られてるだけだよ?
ただそれだけのことで、変な気分になるって痴女じゃん…。
私、痴女になっちゃうじゃん!
いくらなんでも痴女は嫌だ!!
変な気分になってることが超絶イケメンにバレたら本当に痴女になりそうで、怖い。
そこまで捨てたくない。
捨てられない。
だから落ち着け!って思うけど、思えば思うほど焦れて上手くいかない。
焦りで手汗が出そう!と思って、また手に意識が向いてしまった。
なにが楽しいのか、エロい親指で私の親指の爪をなぞってらっしゃる。
女子力の低い私は、爪のケアをしたことがない。
マニキュアも付けないし、切るのだっていつも爪切りでパッチンして終わりだ。
爪ヤスリすら使わない。
そんな爪を超絶イケメンが触ってる。
これはもう、ただの嫌がらせか罰ゲームでしかないと思うんだ。
私が悪いんだけどね。
女なのに怠ってる私が悪いんだって分かっちゃいるんだけどね。
馬鹿殿には触られて恥ずかしいなんて一度も感じたことないのに、超絶イケメン相手だと感じる。
これは相手が超絶イケメンだから?
私も実は顔面偏差値主義だったってこと?
これじゃ恵子のことを顔面偏差値主義だって言えなくなるね。
頑張って意識を違うことに向けようとするけど、やっぱり思うようにいかない。
もう、この際だし超絶イケメンの感触を覚えてやろう!と全神経を手に集中させてみた。
手が心臓みたい。
そう考えて、恥ずかしくなった。
ガキ臭い初々しい感覚を、この歳になって感じるとは思ってなくて、顔が熱くなる。
十代の時ですら、こんなこっ恥ずかしいこと思ったことない。
やっぱり相手が超絶イケメンだから?
私も恵子の仲間入りしちゃった感じ?
「顔、赤くなった。暑い?暖房下げるか?」
暑いッス!
諸事情により熱くなった頬だけど、暖房のせいにしよう。
そう、顔が赤いのは暖房のせい。
とりあえず熱い頬を冷ますために暖房を下げて貰うことにした。
「…お願いして、良いですか?」
「喋りかた、なんで?」
「はい?」
喋りかた? 私、気に障る言い方でもした?
「敬語。文次郎には使ってなかっただろ」
あー、そういえば超絶イケメンの前で次郎くんと会話したわ。
確かにテンションだけじゃなく、話し方も違うから違和感を与えたかも。
限られた親しい人たちと話す時は、地が出て口が悪くなっちゃうんだよねぇ。
でも、どっちかって言うと敬語が標準装備なんだけど…。
「いつもは敬語なんです。親しい人と話す時だけ敬語じゃなくなるというか…、さっきはあの、ちょっと色々あっていつもよりテンションが高かったんですけど、いつもはこんな感じなんです」
ザ・言い訳をしてみるけど、こういうのってどんくらい効果があるんだろうね?
「親しくなったら敬語じゃなくなるんだ?」
まぁまぁ、簡単に言っちゃえば、
「そう…、ですね」
そうなんだけど、私の言い訳の長さと不要さを突きつけられたわぁ。
「色々あったって、何があったか聞いても?」
“聞いても?”に、なんか拒否できない雰囲気をそこはかとなく感じるんだけど…。
まぁ、全然言えることだから良いんだけどさ。
さっきのテンションの80%は次郎くんのウザさによるものなんだけど、それは言わなくて良いよね?
「はい、大丈夫です。昨日の夜に、たまたま同棲してた彼氏と高校時代からの男友達の浮気現場を見てしまいまして、同棲してたので部屋を出てきたんです。あっ、さっきのゴミ袋はダンボールがなくて仕方なく代用したんですよ」
「男、友達?」
ああ、やっぱりそこで引っかかっちゃいます?