十一
本当にごめんなさいっ!
なにが悪くて謝ってるのか自分でも分かんないけど、とりあえず謝るから!
だから、だからどうか…
その御尊顔で、私の私物が詰まってるゴミ袋を“えっ?これが荷物?”って顔で眺めないでぇーーー!
次郎くんが私の荷物をちゃんと乗せられるように用意してくれたハッチバックの車は、私の荷物が少な過ぎてガラガラで、ハッチを開けるまでゴミ袋の存在を超絶イケメンに悟らせなかった。
超絶イケメンは顔だけでなく中身までイケメンで、荷物を運ぶと言ってさっさかハッチを開けてくれたのだが、御開帳したゴミ袋に困惑している。
なんでだろう?! なんかすっごい居た堪れないっ!
他の人なら見られても“そうですが何か?”としか思わないのに…。
馬鹿殿たちの交わりを目撃した時とは、また違う何かが凄い勢いでゴリゴリ削られてる。
やはり超絶イケメンの御尊顔にはそれだけの力があるんだね!
「荷物はこれだけ?」
テノールより少し低い、耳に染み込むような力強さと柔らかさがある声が、鼓膜を揺らす。
初めて声を聞いただけで、腰にキた。
慌てて足にグッと力を入れ、馬鹿殿のアヘ顔を思い出す。一瞬で高鳴りが静まる。
今日から馬鹿殿のアへ顔の使い道が決まった。
有効活用できそうで良かったよ!
「そう!せっかく大きい車用意したのに意味なかったよぉ」
私が答える前に次郎くんが答えてくれて、正直ちょっと助かった。
あの声が私に向けられるってだけで胸がザワザワする。
「これだけで生活出来るのか?」
「えっちゃんさんだし大丈夫じゃない?洋服とか下着一式はこれから僕が持ってくるしぃ」
次郎くんの言葉に超絶イケメンの右の眉がキュッと上がる。
たったそれだけの仕草で、不満があることが伝わってくる。これもイケメンがなせる技なのだろう。
どこが気に障ったのか分からなかったが、私も次郎くんの言葉で引っかかるところがあった。
「次郎くん、私だから大丈夫ってどう言うことかな?」
「えー、そのままだよ?えっちゃんさんは何処でも生きていける逞しい子だって恵子も言ってたしぃ」
「恵子ぉ!うぅ~、恵子が何を指して、そう言ったのか分かるだけに否定しづらいのがツライ…」
あのカオスな実家で生き抜いてきた私の姿を、恵子は見て来ている。それだけに、恵子の逞しいって言葉には重みがあって否定できない。 超絶イケメンを前に、否定したい気持ちはすっげーあるけど…、事実なだけに否定できない!
「あははっ、変なえっちゃんさーん」
「くぅ~~っ」
楽しそうな笑い声がホント癪に障るっ!
次郎くん、あんた人をイラつかせる天才だよ。
「文次郎、お前が持ってくるってどういうことだ?」
どんな顔をしても超絶イケメンな超絶イケメンさんは、さっきと変わらず右の眉がキュッと上がってる。もしかしたら気持ち、角度が上がってるかもしれない。
不満を右の眉と声に乗せて、次郎くんに問う姿も超絶イケメンでいらっしゃる。
もはや私の目には後光が見えてきそうだ。
「なにがぁ?って、下着のことぉ~?」
「それ以外にあるか?」
「うーん。ないかなぁ」
どうしてだろう…。
さっきまで後光が見えて来そうだったはずなのに、次郎くんが話し始めた瞬間に消散した。
すげーよ。人をイラつかせるだけじゃない、空気をクラッシュさせる才能もあるなんて、親友の彼氏じゃなければ絶対に縁を結びたくない相手だよ!
恵子、次郎くんと別れないかな…。
「えっちゃんさん、いま縁起でもないこと考えたでしょ。それ以上考えたら、僕にも考えがあるからねぇ?」
「私は、心で思うことさえも許されないのかっ!」
「そんなことないよぉ?僕の幸せに関係ないことだったらドンドンどうぞぉ~」
それ、なんて難しい注文なんだ…。
「説明しろ、文次郎」
あっ、また超絶イケメンさんのお話しを遮ってしまった。
邪魔しないように、もう大人しくしてよう。
「説明も何もぉ、恵子に準備するように言われたから、サンプルや在庫からサイズが合うのをテキトーに見繕うように秘書にお願いしてるだけだしぃ」
「なら俺でも良いんだろう?」
「もっちろーん!なんなら今から買いに行けば?荷物も少ないし、僕が部屋まで運んどいてあげるよぉ」
「頼む。行くぞ」
「えっ…?」
うん? なぜ私は、超絶イケメンさんに手を握られ引っ張られているのかな?
次郎くん、次郎くんてばっ!手を振ってないで助けてぇー!
超絶イケメンさんと二人にしないでーーーー!
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