十
うわぁー、言ってて虚しくなるくらいスペックだけは良いストーカーだな、おい!
マイナス補正がマイナスの働きをしなくなるのもイケメンだからなの?
イケメンてそんな優遇されんの?!
イケメンなら何しても許される風潮とか酷くない?!
えっ、まさかイケメンなら彼女の親友を良く分からないとこに輸送しても問題にされないとかないよね!?
まさかそんな事ないよね、恵子様!!
目を瞑って考えてみるが、どんなに考えても「それなら良いかしら」って言ってる恵子しか思い浮かばない…。
恵子の大好きな顔面の力だけでも言いくるめられそうだけど、そこに用意周到な次郎くんが恵子を納得させるだけの証拠と下準備をしてるはずだから、言いくるめられないはずがない!
そう思って目を開き次郎くんのムカつく黒い笑顔を見ると“後は置いていくだけ”って書かれてる気がしてくるから不思議だわぁ~。
「次郎くんは私をどうしたいの?」
「どうしたいのって、えっちゃんさんはおかしいこと聞くなぁ。困ってる彼女の親友を助けようとしてるだけだよ?」
「うさんくせーっ」
「ひどいなぁ。恵子の親友であるえっちゃんだから、こんなに心を砕いてるのに」
「心を砕く…?」
砕いてるのは自分のじゃなくて私のだよね?
寝てる間に知らないとこに連れ来て置いていこうとしてるヤツの言うことじゃないの分かってる?
「そうだよ」
いけしゃあしゃあと!分かって言ってるんだろうけど…。
「はぁーー」
私が今取れる選択肢って多くないし、ここは腹を括るしかないかな…。
あの部屋に帰るのはあり得ないし、荷物も持ち出してここにある状態で行けるところなんて恵子のとこしかないもん。
けど、次郎くんの鉄壁ガードに阻まれて行けそうにない。
なら次郎くんの用意したレールに乗るのも一興だよね。
「この後どうすれば良いの?」
「ちょっと待ってて」
恵子の親友である私に何かあったら恵子が悲しむ。
それを次郎くんだって分かってるから、ある程度の安全は確保してくれてるはずだ、きっと。
恵子のことに関してだけは次郎くんに完璧な信頼を寄せているが、それ以外のこととの落差が激しくてイマイチ信用しきれない自分が凄いいる。
いるけど、女は度胸でしょ!
「待つって何を?」
「ん?迎えだよ」
「迎え?」
「そう。あっ、来たよ」
そう言いながら、私の後ろの車窓に視線を向ける次郎くん。
同時に後ろから「コンコンッ」と叩く音が聞こえた。
音に誘われて次郎くんの視線の先に、私も視線を向けると――――。
男臭い超絶イケメンがご降臨なされた。
あまりの超絶イケメン振りに面食いでない私は、魅入る以前にカッチンコッチンの放心状態。
どれくらい放心してたのか分からないが、隣で次郎くんが腹を抱えて笑ってることに気付いてハッと意識を取り戻した。
「あはははっ、えっちゃんさん間抜け面ー!」
「うっさい!こんな破壊兵器並みの超絶イケメンを前にしたら誰だってこうなるわっ!」
女男関係ない!マジで誰だってこうなる!!
艶めく黒髪は軽く後ろに撫で付けられていて、無操作に垂れる髪の合間から見える切れ長のグレーの瞳の破壊力…、ハンパじゃないです!
高く通った鼻筋に薄く形の良い唇、シュッとした顔のラインと長くしっかりとした首がたまらなくエロい。
マジで全部がエロい!
こんなエロ破壊兵器見たことないよっ!
「えぇー!でも僕見てもなったことないじゃん」
「親友の彼氏になるはずないでしょ!そもそも次元が違う!」
確かに次郎くんもちょっとあり得ないくらいのイケメンだけど、イケメン力が違う!
努力とかでどうこう出来るレベルじゃない相手に何、対抗意識を持ってるのか疑問に思うよ、私は。
「てか次郎くん、あの超絶イケメンは知り合い?」
「そうだよ。僕の親戚なんだぁ」
「…。はぁあああ?!親戚ぃい?!」
「そう!イケメンのところなんてそっくりでしょ?」
確かにイケメンだけどっ!
自分からあの超絶イケメンと同じ土俵に入れるあんたの自信がすげーよ…。
私、初めて次郎くんのこと本気で凄いと思った。
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