プロローグ
西暦2019年 11月8日 01:43 気象庁地震火山部
真夜中といってもいいこの時間に、一人の男が庁内をかけてきた。
「緊急連絡です。先ほど、八丈島より東南東120kmの海域にて震度1を観測。海底火山が活動している可能性が高いとのことです。」
「津波の発生の可能性はないな?」
「確認されておりません。また、今後この地震による津波及び余震の可能性は著しく低いです。しかし、今後海底火山の活動が活発化する恐れはあります。」
「了解した。夜遅くにご苦労。」
報告を受けた男は、こう言いながら連絡を寄越してきた男を下がらせた。
(しかし、八丈島沖か。厄介なことにならないことを祈ろう。ま、念の為海保に連絡を入れておくことにするか。)
西暦2019年 11月8日 10:00 海上自衛隊横須賀基地
この日、新たに建造された新型護衛艦が海上自衛隊横須賀基地で就役、遠洋練習航海に出航するという情報が日本中を駆け巡ったのは記憶に新しい。普通の護衛艦だったらここまで注目されることはないだろう。それはまさに、いま、出航していった艦の特殊さ故だろう。
その艦の名は、『ずいほう』。『ずいほう型固定翼機搭載護衛艦/航空護衛艦一番艦、ずいほう』である。この艦は海外で言うところの空母である。
海上自衛隊初の正規空母にして、アングルド・デッキを備え、電磁カタパルトを装備した、それはそれは立派な空母である。全長はなんと278mで、いずも型を越す大型艦だ。
結果として、書類上は固定翼機搭載護衛艦/航空護衛艦であっても、空母であるという事実が多くの国民の興味を惹きつけていた。
ではなぜ、世論が反発する可能性が非常に高かった空母を、建造、配備できたのか。
その理由は、ずばり、2011年に発生したあの忌々しい大災害である北陸大震災の際に活躍した、おおすみ型輸送艦を見た国民が、今後はあの全通甲板を持った艦も必要じゃないかと感じた結果である。
もちろん、当時の政権を握っていた民主独立党(民独党)、財務省は苦い顔をしたものの、世論に押される形で配備計画を盛り込んだ。特に財務省の主計官は、正規空母を配備するための建造予算、艦載機などの装備調達費、就役後の維持費などを考え、胃がものすごいことになった者が多数出たそうである。
このような紆余曲折を経て、初の正規空母が配備されたのである。
調子に乗ってやってしまいました。後悔はしておりません。
こんな同しようもない作品ですが、温かい目で見守っていただければ幸いです。