緊急ミッション 災害復興予算を編成せよ!
お待たせしました。
今回は財務省のみなさんのお話です。
予算の編成とかよくわからないので完全に妄想です。
もう少しで、日本視点のお話にキリが付きそうなので、その後は異世界の方に行けるのではないかなぁと思います。
では、お楽しみください。
2019年 11月8日 15:38 財務省主計局
【緊急地震速報です。強い揺れに備えてください。繰り返します。強い揺れに備えてください。予想最大震度は震度5強です。】
「みんな、一旦仕事を中止して、自分の安全を確保!」
財務省主計局防衛係の新人官僚である中島は、市ヶ谷での交渉を終えて、霞が関へ戻ってきてようやく一息ついたところであった。なんたる不幸であろうか。しかし、流石に身を隠さなければまずいようなレベルの揺れを感じたので、慌てて机の下に隠れた。揺れはどれくらい続いただろうか。5分のようにも、10分のようにも、中島には感じられた。揺れが収まると直ちに、主計局の入っているフロアーの防災責任者が、被害状況を確認しに来た。
主計局にとっては、予算書類や各種資料などのペーパーレス化が進められ始めていたため、書類が雪崩のように降ってくるという被害はそこまで多く発生しなかったのは僥倖であった。流石に、人的被害も発生しなかった。
「余震に警戒しながら、できる仕事を続けてください。また、災害復興予算の編成準備をお願いします。」
この、主計局長の言葉に、局員は戦慄した。なぜか。それは、北陸大震災のトラウマが再び起きるかもしれないというある種の危機感が働いたためである。
ここで、防衛係の空気読めない系新人官僚の中島が、手元の資料を手繰りながら、先輩の渋谷輝馬に尋ねた。
「なんで皆さんなんか嫌そうな顔をしているんですか?」
まぁたしかに彼の疑問はごもっともなのかもしれないが、聞くタイミングは今じゃないだろと言うかのように、防衛係の面々はこれみよがしにため息を付いた。
「それにはだな、ふかーい、それはそれはふかーい、マリアナ海溝よりも深いかもしれないトラウマがあるのだよ、中島くん。いいか、まずは、災害援助物資の確保。なんてったって、民間や自治体レベルで対処できる量じゃない。だから、国でも購入して被災地へ送った。次に、遺族への見舞金やらなんやら。これもなかなかにでかい。さらに、がれき撤去にも金がかかる。それはなぜか。自衛隊を使うのであれば、通常にプラスの補給物資や燃料。民間の業者にぶん投げるにしても、それなりの対価を払う必要があった。さらにそこへ、北越電力福井原子力発電所3号機がメルトダウンなんていう厄介事まで起きてくれた。このおかげで、3号機の廃炉作業や、立ち入り禁止区域に住んでいた住民への支援金や、そこで第一次産業を営んでいた人向けの補助金なんかも支給しなけりゃなくなった。そして、もう一つ。仮設住宅の設置もしてやらなければならない。これにもカネがかかるわけだ。これを補正予算を組んで計上。どんだけ手間がかかったことか。今回もそんな目に遭う可能性が高いんだよ。わかったか。」
「はっ、はいっ…」
しかし、中島は未だその補正予算祭りの地獄を知らない。ほんとうの意味で地獄を知るのはこの後である。
2019年 11月8日 16:40 財務省主計局
「防衛係の皆さん、悪いお知らせです。厄介事が発生したようで、この後国家安全保障会議が消臭される模様です。その結果次第では、災害復興予算がものすごいことになる可能性がありますので、国家安全保障会議が終了するまでは待機でお願いします。」
防衛係係長がとんでもないことを言い出したので、またもや防衛係のシマは溜息で溢れかえった。全員の気持ちはこれ一つである。「もうかんべんしてくれ」
彼らの受難は、まだまだ続く。