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8-

 見張りの交代をしつつ、無事に朝を迎える。夜中にモンスターに襲われる事もある、場合によっては盗賊に会う事もある。私がこの世界で最初に襲われたのは盗賊だった、なのでいい印象はもちろんない。見つけたら即斬死するように眠兎には言ってある。


 寝ている時も重装状態を解除していない眠兎だが、寝心地は悪くないらしい。寝返りとか窮屈じゃないのかと思うのだが、座りながら寝ている。

『確かにベッドで寝たいけれど、旅だし、それに野宿なんてそんなものだと思ってるから気にしないかな…』

 私だったら無理だなと思ったりした、多分、キャンピングカー的なものをどうにか入手できないのか調べる。絶対に調べる・・・私はアーマーでよかったのかもしれない。


「みんな起きたな、準備できたら出発するぞ。夕方前には着いておきたい、町までモンスターは昨日見た情報から遭遇する確率は低いとは思うが、いつも通りで行こう」


「はぁ~、だるい…了解」

 乃陰があくびをしながら、ゴーグルをつけた。さすがに寝る時はゴーグルを外し、アイマスクをして寝る。アイマスク必要なのかと思うが、乃陰の奇行は今にはじまったことではない。


 各々が準備をし、道具を片付けそれぞれが荷物を持つ、リュックサック型なのでいざ戦闘になっても一応は戦える。だが、背負う部分が瞬時に外れるようになっているので戦闘になった時にすぐに外せる。


「忘れ物チェック、火の消し忘れチェック…ま、こんなものか」

 今日は眠兎がチェックなので、出発する前にチェックをしている。火の消し忘れで火災が起きると場合によってはお尋ね者になる。ヘタしたら牢屋行きになるため、冒険者は野宿する際はこういった消し忘れがないか必ずチェックを行う。


「じゃあ、行こうか」

 恵那は抑揚のない口調で言い、三人は歩き出した。


 見渡す景色は相変わらず丘、丘、丘ばかりだ。空は透き通るくらい雲もなく、風も穏やかに吹いている。

「うーん、気持ちいいな」

 眠兎がなんか言っている。

(重装状態の今、どうやって風を感じるのよ…)

『き、気分よ』

 眠兎のひとりごとは恵那と乃陰には聞こえなかったらしく、歩みは変わらず進む。


 乃陰がふと立ち止まり、それに気付いた眠兎と恵那も立ち止まる。

「なんか視線を感じないか?」

「私のレーダーには何も反応ない」

「僕も特に感じないけど…」


私も特に何も感じなかった、マップにも反応していない。だが、「気の所為か」という流れで漫画やらアニメで何も起きなかった試しがない。ましてやこれはゲームだ、NPCが何かに感じているということはこれからイベントが起きる。

「乃陰、気のせいじゃない?」

(眠兎、多分気のせいじゃないと思うから気をつけるに越したことはない)

『えっ?!今もう言った後なんだけど!』

 ごめん、眠兎…先に言っておけばよかったね。うーん、変なことにならなければいいけれどな…


「恵那も何も感じないか?」

 乃陰は恵那にもう一度きく、いつも二回確認した後に決める事にしているからだ。

「僕は何も感じないな…どこからその視線を感じるの?」


「進行方面の左、あのあたりからだ…」

 乃陰が指をさした方角には見た感じなにも無かった。普通に緑の丘があるだけでかなり遠くだった。距離で言うと大体10キロくらい先だ…途中の丘の斜面など注意深く見ても特に何かあるように見えなかった。

「乃陰、気のせいじゃないか?」

 恵那は腰に手を当て、乃陰に言う。


 眠兎はそっちの方を見るが今は単純な重装モードなので視覚的に遠くを偵察できるような状態じゃない。


(眠兎、乃陰が言った方向を見てくれる。ちょっと詳しく見てみる)

『うん、わかった』


「ちょっと乃陰がいった詳しい位置を教えてくれる。ちょっと詳しく私も見てみる」


 私は重装モード状態で頭部の部分、主に目を偵察索敵モードに切り替えて乃陰が言っていた視線を感じるという方向を見た。

 フルフェイスヘルメットの目の部分が今までは2つの突起が出て、クルクル回っていた状態が三本の突起に変形し、クルクルと回り始める。


 望遠に切り替わり、私は眠兎に視覚を共有し、乃陰が言っていた場所を詳しく見る。私のレーダーには引っかかりもなく、特に生体反応もなかったが…


『あの丘の中からこっちを何かが見てる』


 あれはギリースーツか?この距離からじゃほとんど違和感がなく、丘と同化していて明らかにNPCじゃなく冒険者だと思った。偵察している意思があり、この先に待ち伏せするためになんらかの情報を待ち伏せする人に伝える役目か…


(私のレーダー外から偵察してるから気づかないものね…うーん、ここに立ち止まってると相手は気づいてしまうし―)

『このまま視線の方向に向かうっていうのは?』

(もしかしたらそれを見越して待ち伏せの罠を仕掛けておく可能性もあると私は思うわ)


「眠兎、何か見えたか?やはり、俺の気のせいだっ―」

「いや、誰かが偵察してる。このまま進むともしかしたら待ち伏せされるかもしれない」

 二人は私が言ったことを聞いて、肩をすくめて気のせいだったかというフリをした。

「眠兎、ありがとう…とりあえず気のせいだったことにし、先に進みつつ逆に迎え撃つ」

 恵那はやけに好戦的になっていた。

「ああ、了解…」

「戦闘を避けて進むという選択肢は?」

 眠兎は先を急ぎたかったのか、あまり相手にしたくないという思いがあった。

「歩きながら説明するよ、大事な話でもあるし…乃陰も僕が言いたい事はわかってると思う」


 乃陰も頷き、私達は歩みだした。


 視線を感じなくなり、恵那は説明をし始めた。空気は重苦しくなり、なぜわざわざ罠に向けて進み、迎え撃とうと言ったのかわかった。

「眠兎、連携して対多数、しかも対人は無かったと思う。今まで対モンスターが多かった。でもこれからはわからない、だからここで経験しておいた方がいいと僕は思ったんだ」


 ごくり、と眠兎はツバを飲み込む。重装状態なので二人にはわからないが、私にはわかる。眠兎は殺生をしているし、盗賊相手に相手を殺した経験もあるが対多数戦闘においては戦闘昂揚状態、つまりバーサーカー状態でしか戦闘をしていない。

 実際、冷静になった状態でちゃんと戦えるのか、心配でもあったので丁度いいと感じた。もちろん負けるという要素はないと思っている。


「いつもの訓練を実践通して、すり合わせていくってことだ」

 恵那と乃陰は旅の合間など訓練をしてくれている、そして、これも訓練の一つだということだった。


「で、でも…相手の戦力がわからないのに?」


「相手の人数、装備、戦術なんていうのは全部わかってる状態なんてない。それに勘だけどな…俺達で勝てる相手だ。恵那もそう思っているからこそ、戦う方向で行くと決めている」


「うん、それもあるけれど…白髪の三人組の情報をもしかしたら知ってる可能性もあるからね…戦況によってはもちろん逃げるのも視野に入れて迎え撃とう。大丈夫、来るとわかっているのだからどこで襲ってくるのか、罠を張っているのか、勉強になる」


 そして、私達は遭遇する…他のプレイヤーたちと―

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