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7-

 遺跡を出ると太陽の視線が痛かった。遺跡といえど、地下にあるため外にでると違った光で眩しく感じるのだ。


 気候は春前、でも太陽の光から若干の暑さを感じたりする。重装状態では中は蒸し風呂…というわけでもなく快適な温度で保っていたりする。このアーマーにはそういった体温調整機能も含めたいろいろ便利なものがついている。

 遺跡から出るとギルドの人やこの国の人…そして集落で商いをしてる人たちが私達を見るが昨日入っていった冒険者だとわかるとさして興味を示さなくなる。まあ、そんなものだろう…


 恵那と乃陰は冒険者としてのランクは高い。ランクが上からS系ランクはSが5つのファイブスター、フォースター、トリプルS、ダブルS、そしてSとある。A系は3段階あってトライエース、ダブルA、Aとある。その下はB、C、D、E、Fとなっている。

 S系とA系がいくつも段階があるのは強さがインフレを起こしてるわけじゃなく、影響度からランクがAからつけられるようになっている。ギルドの依頼を難度が高いものをこなしていけば自然と上がっていけるのはA系のAまででその上は違う地域のギルドから認められて上がる。


 恵那と乃陰は冒険者としてランクは、二人ともAランクなのだ。かなり高く、他の地域のギルドから認められるようになれば、すぐに上がるレベルだ。眠兎はEランク、まだ駆け出しといっても過言ではない。


 Aランクが二人にEランクが一人のスリーマンセル。心もとないパーティに見えるのもあるし、この地域だとそんなに名が売れているわけじゃないので周りはそんなに興味を示さない。


 恵那を先頭に遺跡を後にし、来た道とは違う別のルートで次の町を歩み始める。


 次の町は順調に行けば2日くらいで着く、そこで行商と出会う可能性があり、目的地が一緒の場合は乗せてもらおうと考えていた。

「さぁて、うまい具合に行商と出くわすタイミングになればいいね」


「大丈夫だろ、世界の縮図で行商の動きや町にいる人たちを見て行動がある程度わかるんだし」


「二人とも楽観的だな」

 眠兎はすでにボイスチェンジャーを使っている状態である為、しゃべり方も変えている。遺跡の周りは起伏が激しい丘になっているため、見通しも悪いし誰が近くにいるかわからない状態だ。

 とはいえ、マップ上では近くに生命体がいるかどうかわかるのでそこまで神経質にならなくてもいいのだが、ふとした瞬間に気を抜いて普段のしゃべり方をしてしまうとオカマ野郎と思われるのが癪でもあり、男になりきるのが楽しいと感じてる眠兎なので私は温かい目で見ている。


 特に危険なモンスターと出会う事もなく、その日を無事に終わる。野宿も慣れたもの、交代で火の番をしつつ、睡眠をとる。


 この地域は丘がずっと続いているため、死角になりやすいが生息しているモンスターが4足歩行系は狼系、羊系で好戦的なのは狼系だ。羊系は特に害をなすわけじゃないが、食料としてだったり素材として狩ろうとすると鋭い角で攻撃してきたりする。

 狼系よりも強さはあり、後ろ足の攻撃や踏み潰しの前足の攻撃が結構厄介だ。狼系はこいつらを主食としているのが目撃されている。


 この地域はそんなにモンスターがいるわけじゃないのが遺跡でわかったことだった。


 夜、交代で番をとっている時に眠兎はよく夜空を見上げている。こんな時、いつも私とおしゃべりをすることが多い。今日の出来事の振り返りや記憶の事についてなど、いろいろだ。


『ねぇ、ミナ…ミナは何者なの?』

 この日は、いつもと違った。

『最近ね、変な夢を見るの…こことは違う世界で生活している夢を見るの…それが私じゃないっていうのはわかるんだけど…なんていうかそれはミナなのかなって思ってさ』

(こことは違う世界ってどんな感じ?)

『立派な一軒家がひしめいていて、移動する時は歩いて駅って呼ばれる場所に行って電車に乗って大きな縦に長い…空に伸びている建物がたくさんある所に行って買物したりとか…』

 ど、どういうこと…

『モンスターとか戦いとか無縁の世界で、誰も武器とか持ってる人がいなくて、人がたくさんいた。あの世界は…ミナがいる世界なんだなって感じるんだけど、あってる?』

 眠兎は私がいる現実を感じている。ゲームだよね…これ?いや待って眠兎は私の行動心理やパーソナルデータから創りだされたアバターだ。混乱してきた…いったいどうなってるの?


(眠兎、確かにその夢で見た世界は私が知ってる世界と似ているけれど確証はないわ)


 実際に私はその映像を見ていない、確証を持てなかったからだ。


(それにどうしてそう思うの?もしかしたら眠兎の記憶かもしれないじゃない?)


 そうなのだ、眠兎は記憶喪失でその失った記憶を取り戻す旅をしている。他の冒険者だってそうなのだ。失った記憶に大きな秘密が隠されているのがこのゲームの醍醐味だ。だから眠兎はその記憶を夢を通して感じているのかもしれないと思った。


『ううん、なんとなくこれは私の記憶じゃないって感じる。そしてミナの記憶というよりもミナの生活を見ているって感じている。なんか不思議だけどね…なんていうかミナとちゃんと会話するようになってからかな』


 私は眠兎が言っている事が理解できなかった。いくらゲームが高性能になったからといって現実の私を認知し、それを踏まえた反応を示すのはおかしい。

 私はこのおかしいと感じた、眠兎が見ていた夢の内容がはたして現実世界の出来事そのものかどうか確証を得たかった。


(眠兎、その夢の中で私だと思うのは…何を見聞きし感じたの?)


『えっとね、夢の中で鏡を見て髪の毛を整えている時に、これは私じゃなくてミナだって感じた。私は髪の毛長いし、顔つきも似ているけれど全然違ったんだ。なんていうか夢野中なのに、まるでその人の中にいて見せられているって感じたからかな』


 うーん、まだ私の世界かどうかわからないな…


(他に何か…こう地名とか、なんて呼ばれたかとかは?)


『うー…あんまり覚えてないや、見た時にまた伝える』


 その後、他愛のない話をして見張りをし、次に見張りをする恵那と交代して眠兎は寝た。眠兎が寝た後、私も一応寝ることもなぜか出来る。睡眠欲というのはなくずっと起きていられるし、寝ているような感覚で時の進みを早く感じることもできる。

 アーマーになってから私は睡眠が変わり、眠ることは少なくなりいろいろ考える事が多くなった。


 私という意識が本体の現実と分裂し、この世界に囚われてしまったんだと思うようになった。私はこのゲームをクリアするまで戻れない…もしかしなくても戻れないのかもしれない。


 クソ…なんでこうなった…


 でも、現実より面白くて、毎日が楽しく感じる。見たことのない景色や新しい常識や世界観…私は娯楽に飢えていたから、その願いがこれなのかな…


 結局のところ、私は楽しんでいるのだ。苛立つ何かを持っていながら、楽しんでいる。


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