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いきなり殺すとか言われ、怖いと感じた。モンスターと戦っている時は殺意を全身で感じたりするが、生きるために相手を殺すという殺意ではなかったからだ。
以前にもこういう殺意を向けられたことがあるがその時はねっとりとした気持ち悪さがあった。世界の敵と呼ばれている奴らと戦闘をした時のことだが、あいつらは行為そのものを楽しんでいる為なのか気持ち悪さの方が際立っていた。
今ならわかるがさっき向けられた殺意は身体に突き刺さり心臓を鷲掴みにされ血管一つ一つが押さえつけられているような圧迫感があった。まあ、私生身の身体ないんですけれどね。
(眠兎、落ち着いて聞いて欲しい事があるの…唐突だけど私を殺しに来る人たちがいるわ)
『「―えっ?!」』
ガタンッ
「ん?」
「どうした眠兎?」
ちょっと声に出てるぅぅぅ
『「い、嫌ッ」』
「どうしたんだ?眠兎大丈夫か?」
世界の縮図モードは立ち上がったことで解除され重装モードに切り替わる。眠兎がかなり動揺し、涙目になっていた。恵那と乃陰にはフルフェイスのヘルメットなので顔は見られていない。
(落ち着いて眠兎、まだ殺されると決まったわけじゃないから、大丈夫だから…ほら深呼吸深呼吸)
眠兎は深呼吸をし、徐々に落ち着きを取り戻していった。その間、恵那と乃陰が心配して、声をかけていた。
「おい、眠兎?おい?」
「な、なんかあったのか?」
眠兎が深呼吸する度にフルフェイスのヘルメットの裂け目からバシューと音を立てられ、アーマー内の空気が換気されていった。アーマー便利機能の一つが作動し、アーマー内が換気されることによってリフレッシュされる。
清涼感あふれる空気がアーマー内に入り、リフレッシュされた。
(眠兎、落ち着いて私を殺しに来る人たちのことを話しておきたい。すぐには会うことはないと思うけれど、二人が知らない状態よりは情報を共有しておきたいから伝えて欲しいの…さっき世界の縮図を見ているのを気づいた人たちがいて青の使徒と私を呼んだわ。)
眠兎の心臓がドクンドクンを鼓動が高くなっていているのが感じ取れた。今までこういった宣告されたような状況はなかった。誰かから狙われるという状態は今の重装状態前では恵那と乃陰が守ってくれていた。
今は重装状態になっていて、防御力という面は高くて安全かもしれない。しかし、それが絶対ではないことを眠兎は知っている。もちろん私もわかっているが、眠兎は怯えていた。
眠兎は、私のアバターといってもゲーム内では数ヶ月も経っていない…0歳だ。精神年齢もそこまで高いわけじゃない、ましては眠兎にとって私は生きていく上で大事な存在だろう。
(大丈夫、眠兎…恵那と眠兎が一緒にいる。一人じゃないんだから大丈夫よ)
私は眠兎に言い聞かせながら自分に言い聞かせていた。ゲームでとはいえ、心臓を鷲掴みにされとっさに私は逃げたことになる。その時になって自分がどういう行動をとるのか、それが「逃げ」だったということに苛立ってきた。
いざとなった時に私は―
『うん、ごめん眠兎…私…二人に説明してみる』
三人を見捨ててしまうのだろうか…
たかがゲームだ、いざとなった時…このゲームを飽きたりし、嫌になってやらなくなったらそれは見捨てた事になるだろうと私は感じていた。
ゲームのNPCや自分をベースにしたアバターに愛着を持ったということなんだろうと思う。あまりにもゲームに愛着を持ちすぎて運営や開発者に歪んだ愛をぶつける人たちがいて、終了されるサービスに対しておかしな行動をするような人たちがいたことを思い出した。
見捨てたくない…せめて、私はこの三人がハッピーエンドになるまではやり続けたい。
「えっとね、さっき世界の縮図を使ってる時に私達が見ているのを気づいた人たちがいて、その人たちが私を青の使徒って呼んでて…私を殺すって言ったの…」
眠兎が恵那と乃陰に説明してるが…そういえばあまり詳しい事を話してなかった事を思い出した。
「世界の縮図を使っているのがわかる人もいるのか…そしてそれを使ってる僕たちを青の使徒と呼んでるってことか…」
恵那がちょっと勘違いしてる…私達じゃなくて私なのだ…うーん、どうしたものか…
(眠兎、私そのものが狙われている事を伝えた方がいいと思う)
『えっ、でもなんて伝えたらいいのかな…?』
(そうね…武具を狙ってるって言えばいいと思う)
『す、ストレートだね』
「えっと、私達じゃなくてこの武具を狙ってるのよ」
「どのみち、武具を狙ってるにしても俺たちを狙っているも同然だ…よくもこんな便利な武具を…」
「チッ、武具バカが…そういうことじゃなくて」
「まあ、乃陰はちょっと特殊かもしれないけれど―」
「俺だって今まで見えていた視力をいつの間にか奪われた時に言われたら…ふざけてすまなかった…」
乃陰が珍しく謝った…私は驚いた。
「べ、別に…なんか調子狂うな…」
「乃陰、眠兎…僕たちはパーティだ。前みたいに眠兎が一人で理由を説明せずに敵陣へ行く前に知らせてくれてありがとう。情報をもっと詳しく知りたい…どんな人達かわかるか?」
私は眠兎にどういう人達か説明した…そう恵那に似ている事も含めて―
「僕に…似ている…?!」
「もしかしたら、恵那…そいつ月無じゃないのか?」
「いや、まだわからない…会ってみないと、でも会ったら襲ってくるかもしれない…」
「相手がどんな奴らか情報がわかればな…白髪の3人組だからある程度目立つはずだ。調べたら出てくるかもしれない」
「とりあえず情報収集しながら警戒し、北を目指そう」
相手はおそらく私を常にトラッキングしてるわけじゃないのがわかる。見られているという感じがないからだ。絶対ではないけれど、世界の縮図を使っていた時のような見られているような変な感覚はないからだ。
「じゃあ、さっき見た情勢を考えてこれから北を目指して謎の一味と遭遇するとしたら、この街道と―」
恵那がこのあたりの地域が示されている簡易的な地図を出し、指で遭遇する可能性がある場所の指し情報を共有してくれた。
「恵那、どのタイミングで迎え撃つ?相手の情報をある程度知って対策が可能か、それともそれ対処不可能な程の存在どうかによると思うが」
乃陰は、腕を組みながら首をかしげながら、苦虫を噛みつぶしたような顔をした。
「うん、確かにね…僕もそこが気になっている。眠兎が見たのは3人…僕達と同じ人数で旅をしているのならば、相当な実力者だと思うし、普通に考えてもっと人数がいてもおかしくない」
死んだら…どうなるのだろう、ホームとなる遺跡がない私は…いやそもそも恵那と乃陰がいなくなった後で冒険なんて続けたいと思うだろうか…




