49-旅へ
異世界に召喚されて、元の世界に戻れないとか戻るには莫大な魔力とかエネルギーが必要だったり…あるいは強力なスキルで簡単に戻れたりなどいろいろあるけれど、異界からはすんなりと行けた。
機界からブルーの世界である堕界にも前回使ったように行けばいい。ブルーの世界の固有名詞もすんなりと私の脳に入ってきていた。ただ、異界だけは固有名詞的な何かはなかった。
「この世界は全ての情報を蓄積するだけの世界、意思みたいなものもあったとしても、まだ多くの人に認識されてないからミナが考えている固有名詞みたいなものはまだないのだと思う」
ブルーが面倒くさそうに教えてくれた。
ブルーを連れてグリーディンの所に行き、終わったことを話す。
「一緒だった仲間が消えてなくなってしまうのは、寂しいからな…存在し続ける事は嬉しい」
「グリーディンでもそういうことを思う事があるのか、ありがと」
ブルーは素直に答えていた。ただ少し照れくさそうにしていた、精神年齢…人の寿命はこの神様たちと比べて短い。精神年齢は環境から成長していくと思っていたがもしかしたら寿命…生きる年数が限られているからこそ、発達の度合いが違うのかなと思った。
夢を通じてこの世界に来て、時間の流れが違い年齢=精神年齢という目安があやふやになった。経験を通じて成長していくが、高まっていった先の社会は感情そのものが欠落することはなく、自然のありのままに戻るのかなと思ったりした。
「ところでこの天魔反戈のことなんだけど…」
グリーディンは言う、神器は存在を選ぶと言った。ブルーも同じことを言い、また聞いたことがない言葉が出てきた。神器って何?
「簡単に言えば、持ち主を神へと昇華させる道みたいなものね。その神器は一つの世界でもあるのよ、昇華といっても昇華させてくれるわけではないけれど鍵みたいなものね」
私はとんでもないものを貰った・・・のかな?
「そういうわけだからそれはあなたの物よ」
「ありがたくこれからも使わせてもらうわ」
「これからどうするの?」
グリーディンの無機質で奇妙な紋様が入った瞳は私達を見ていた。これらかのこと、私は決めている、堕界を隅々までブルーを連れて旅をすることだ。
「ブルーと一緒に旅をするよ。ブルー、私がいる世界…神界にもあなたはいるんでしょ?」
私は自分が口にした言葉に自分でも驚いていた。自分がいる世界の固有名詞を知っていたのだから…
「いるけれど、なんで?」
ブルーはふてくされつつもちゃんと答えた。
「神界で一緒に会って今後のこととか話をしていったりすると便利だからよ」
その後、ログアウトし現実というか自分の世界に戻り、この世界にいるブルーに会うことになった。ドタキャンしないように釘を刺して待ち合わせを適当な喫茶店にし、これからのことを話した。
「それであの世界をこれからどうしていきたいの?世界の敵とかいるけれどさ」
「特に何かしたいというのはないよ。僕は黒、ブラックィスに一矢報いることぐらいだ」
「自殺の次は復讐か…いいねぇ、悪くないけれどその前にこっちの用事付き合ってからね」
「ちっ」
青年のような格好、ちっこい子供の時とは違い態度がでかい。不機嫌な顔をして、半眼で睨むようにこちらを見ているが元を知っている分、あまり怖くは感じなかった。無邪気さはなく幼さを見せていた。
「ちょっと調べてみたのだけども、あなたの世界は今まで技術革新を抑制されていて、火薬技術…特に内燃機関が発達されないようになっていた。けれど、他の世界を受け入れ、良い部分を認め取り入れるようになって変化してきてる。あなたはそれを感じて、戸惑っている、それが不機嫌になってる一つの原因でもある。違う?」
異界の情報、いや、世界を救う方法がインストールされ私という存在が「世界」に対してカウンセラーとして向いているのだろう。
「神界エデンが中心であなたや他の世界はここを拠点とされた可能性、想像から産まれた世界たち…ねぇ、ブルーはこの世界を見てどう思ったの?」
いつの間にか私にインストールされている世界を救う方法が私自身に世界たちの成り立ちを教えてくれていた。
ブルーはあたりを見渡し、安らかなやさしい目をしていた。
「美しい、ただ美しい。そして、想像された側がこの世界の仕組みを知ったら、無限の可能性の虜になる。元に僕もそうだった、でも今は自分で可能性を育てればいいんだって気づいたよ」
「未那、これから…どうするんだ?」
「そうねぇ~まずはあなたの世界を楽しむわ。寿命とかそういうのは転生が使えるし、まずは今の人生をあなたと一緒に楽しむわ。気ままに、ね」
こうして私とブルー、のんべんだらりとした気ままな冒険が始まった。勇者や魔王、英雄と戦争、世界の敵や黄金の民の遺産、そういったことに積極的に絡むことなく旅をする。
私にとって飛翔恵那、咲真眠兎、香月乃陰たちの事や黒などのことはどうでもいい。彼らは彼らで問題をぶち当たって解決していくし、そんな大それた世界を英雄譚のような物語ではなく、ちょっとした国外旅行をしたい。
神器なんて手にしちゃっているし、もうひとつ…そういえば火の玉が出る銃もあったっけ…これは名前は当分呼ばない。
「あ、そうだ!ブルーは狼の姿になってさ、私がその背中にのって旅するのってどう?いや…待てよ、普通の狼サイズで刀を咥えさせて戦わせるのもかっこいいわね。うーん、でもケモミミショタっ子を引き連れて旅をするのもおいしいしなぁ…迷うわ!どう思う?」
女は行動力だ。妄想あっての行動だ。
「絶対嫌だよっ!」
「全部やろう!そうしよう!」
「話を聞けよっ!!!」
「神様なんでしょ、願い事は全部叶えるくらい器がでっかくないと、さぁてそうと決まったら行きましょう。ログインした場所に来てね」
「おい、行かないぞ!おい聞いてるのか?・・・ちょっと待てここの支払い僕持ちか?!」
風が気持ちよく頬をつたり、季節が髪を撫でていく。
心地よい思いと共に、これから新しい景色と景観が心の鼓動をわくわくさせる。
今日はいい夢を見れそうだ。




