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世界を救う方法、これがどんな意味を持つのか全てをインストールされ理解する。
「恵那、この世界は崩壊しない。彼の…ブルーはそのことを知らない…異世界と異世界を渡る門は開いたことでこの世界の真理が他の異世界と同調、変異、昇華していってる。以前の世界ではなく、変わってきている」
「どういうことだ…?」
「ブルーはこの世界が壊れていくのを止めようと私達を利用しようとした、だけど、そんなことをしなくてもこの世界は壊れないように変わったのよ。それに気づいていない、受け入れてないのがブルーなのよ」
「なんだよそれ…」
ただ、踊らされていた。それだけの話だった、それだけだったんだ。周りが変わったことに気づいていても、変わりたくない、変わった自分の生き方を想像できない。変わらないままいきたい、そして気がついたら時代に取り残される。
「なんなんだよそれ…」
恵那は涙ぐみ、震えていた。
「環境は変化しても、自分が変わらない者がもたらした真実なんてこんなものなのかもね。ブルーを倒しても何も変わらない、このままじゃ何も変わらない。だからこそ、恵那の剣で可能性を無理やり植え付けて終わらすのよ」
それが世界を救う方法…世界を人格化した存在であるブルーを救う方法―
「そうじゃないと…この世界は自壊する」
「自壊…まさか―崩界が起きるってことなのか?」
そうだったらまだよかった。世界は再構築されるだけなんだから…
「世界そのものが消えて二度と蘇らない、今までは何回も蘇ってきたけれど、世界と繋がった事によって変わった。この世界から逃げ出し、その事を受け入れられないまま、ちぐはぐな状態になってこのまま壊れていってしまうのよ」
ブルーに伝えたところで考えも思考も変わらない。
「恵那、世界を救うのが確かに名目だけど、私はあいつをぶっ飛ばしたいのが本音よ。あなたは今の話をきいて、どう思う?」
腫らした目をしていたが、眼光は強く、すでに恵那の意思は決まっていたのがわかった。
「僕は世界を救う、眠兎を救って新しく人生を歩む」
私は異世界にいる、その世界が危機に瀕している。私は現実へログアウトすれば戻れるから気楽な気持ちがある。どこか大丈夫だろうと思っている心、余裕がある。絶対大丈夫だという余裕。
でも、現実とかそういうのではなくこの世界で生きている恵那は違う。ちゃんと前に進むという意思を持っている。強いなと思う、私はちゃんと生きているのだろうかと考えてしまった。
「行こう、あいつをぶっ飛ばして目を覚まさせよう。その後のことは私がなんとかするわ」
自然と言葉が口から出ていた、自分でもよくわからなかった。
私たちは恵那が作った門に入り、異界へと向かった。
星空が視界に広がり、天の川のようなものがリング上になって遠くで流れていた。他の星とは動きが違い、別々に星空はゆっくりとだが動いていた。
上も下かもわからない空間、前に来た時はそうだったが、今は地面を感じていた。ちゃんと立っていた。横に恵那がいるのも感じたし、はるか遠くの方にブルーがいるのも感じた。
「ここが…異界…」
恵那はあたりを見渡していた、すぐさま剣を召喚した。
「ええ、ここが異界…前に来た時は雰囲気も変わってる。ずっと先にブルーがいる、行くよ」
私は重槍を地面に浮かせ、その上にいつもよりも後ろよりに乗り、恵那を前に乗せる。
「飛ばすわよ」
ゆったりと流れていた星の輝きを後ろに置いていくように、星の煌きは線となって後ろに駆け抜けていった。SF映画で宇宙空間をワープするときのような星が流れていった。空気抵抗も感じない空間で自分たちはどうやって息をしているのだろうとふと疑問に感じた。
異界の意思で私達は生きている。
その答えがわかったのは私が引知士として知りたいと思ったわけではなく、異界の意思が語りかけてきていた。全てを知っているからこそ、この異界も人格化しようとしているのかもしれないとそんな気がした。
距離感がわからないがブルーに近づいている感覚はした。重槍の速度も加速し続けていき、宙空にある星の輝きが今まで線だったものがはるか後ろの方に針のようにこちらに突き刺すように光を置いていっていた。
そして、その光を置いていった先に何かを超えるような感覚が全身を襲い。
気がついたら、最初にいた場所に立っていた。だが、違うのは目の前にブルーとクリスタルのようなものに入った眠兎がいた。
「眠兎!!!」
いきなり横で恵那が叫ぶものだから、私はびくっとした。
なぜ、最初にいた場所に戻ってきたのか…私は気づいた。絶対に距離が縮まらない魔法を使っていたのだ、だけど、私が音速の壁、光速の壁、空間の壁とありとあらゆる壁を突破して魔法を破ったんだ。
「お前を倒し、眠兎を返してもらう」
恵那はすでに戦闘態勢に入っていた。ただひとつ、ブルーを変えさせる剣を構えていた。
「ミナ…無事に帰したのになぜここに?」
ブルーは恵那のことなど範疇になかった。
「おいっ!」
恵那が吠える
私はため息をつき、はっきりとした言葉、しっかりと両目で睨み、指を指して言う。
「あんたをぶっ倒しにきた、そして、世界を救う。それだけよ!」
ブルーの目は死んでいたままだったが、私が言った言葉によって変化した。
「前世…過去にも何度となく言われた。勇者と呼ばれていた者、英雄と呼ばれていた者、魔王と呼ばれていた者にも―まさか、自分の世界からではなく他の世界…しかも神界の住人にも言われれるとはな」
ブルーの手に嵌っている10本の指環が光る。そして、彼の目の前に本が現れ、ページがめくられ続けていく。
「自分で作ったものだ、お前にとやかく言われる筋合いはない。帰れ」
ブルーは魔法陣を形成し、私達を元の世界に帰そうとしているのがわかった。
「恵那、止めるわよ」
「もとよりそのつもりだっ!!!!!!!!」
多数の刃が形成され、上段に構えた恵那の剣に集まっていった。
「うおおおおお!!!!!!!」
集まった刃が巨大な刀身となり、恵那はそのまま振り下ろす。
ブルーはそれを予期していたのか手を掲げるだけだった。不可視の防壁が形成されているのがわかった。無表情なブルーは結果がわかっているのか、片方の手で送還の術を形成していっていた。
振り降ろされる刃、肩から胴へ、斜めに突き抜けた。
浮遊していた本も真っ二つになっていた。
術式も破壊された。
「なっ…」
一撃、入った。
ブルーは驚愕していた。目を見開き、刃が通過していったあとを手でなぞっていた。傷跡から血が滲むが瞬時にそれは引いていった。
「お前は何者だ?」
真っ二つにされた本は、ボロボロになりページが舞い…ブルーの背中に星形を象っていった。そして、ページが次第に変化し、巻物、本、石版などに変わっていった。あれがあの本の真の姿だと直感が感じていた。
「恵那!」
「言われなくても!!!」
恵那の足場に重槍をクラウチングスタート用に置き、重槍を点火させて恵那を飛ばす。ものすごい速度でブルーに接近し、恵那のさや付きの剣がブルーを捉える。剣が彼を砕くが、それはクリスタルのような欠片となって散乱するだけだった。
ブルーは、はるか上空にいた、囚われている眠兎も一緒だった。この距離はヤバイと感じ、重槍に乗り恵那を引き上げる。
恵那を引き上げて、重槍の前に乗らせた後に私達が居た場所には鋭利なクリスタルが大量に生えていた。それが上空から発射されたものだったが衝撃波などなかったため、そこにいきなり生えたものだと勘違いした。
地面から高度を上げてブルーに近寄ろうとしてそれに気づいた時には、目の前に大量の鋭利なものが降ってくる直前だった。先端恐怖症ならとっくに気絶してるだろう、トゲトゲが全部自分たちに向いていた。
「超高速戦になるわ、目を回さないでね」
星に見えていたものは全てクリスタルの輝きだった。億万とも言える星が降る中で、見下しているブルーを落とすために速度を上げる。弾幕ゲーや逆走カーレースゲーはやったことはないけれど、直感が告げている。
世界を救う方法をインストールした私には出来ると―




