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43-

 グリーディンは浮遊しながら、ドーム状の空間上部から降りていった。私も重槍に乗り、彼女についていった。

「あなた、もしかして…」

「そうよ、私は珪素生物…ディファー種よ。人間種に協力しているのが不思議?」

 それなりの速度で地面に向かっているが、地面がまだまだ遠く、思った以上の高さだというのが下半身から上半身にかけてゾクゾクした。


「あの二体と戦って、意思疎通が出来るからもしかしてと思った…別に不思議とは思わない」

 ゾワリと全身に緊張が走り、目の前にいるグリーディンの存在が歪んだ。


「下に着くまでゲートの準備しておくわ」

 両手を胸に持って行き、そのまま身体の中にボキボキ、メキメキ、ぐちゃぐちゃと肉と骨が壊れるような音が聞こえてきた。

「な、何を?」

 自傷行為…にしては度を越し、血色が電子回路状になって飛び散っていった。人間なら噴水のように血が飛び散っていくのだが、彼女は人間ではない。気持ち悪さが胸辺りにこみ上げてきた。


 どうしてこうも吐き気を催すような事ばかりなんだ。


 手で口を抑え、目を細め彼女が何をしようとしているのか知りたいと思った。瞬時にそれが異世界へのゲート構築する術式を展開していることが頭に入ってくる。正体不明の気味悪さが消え失せるが、かわりに軽い頭痛が襲い、口元からこみかみに手を当て、頭痛に対しての反射行為をしてしまう。


 いたた…


 引き出した情報からグリーディン自身に相当な負担がかかっていることがわかった。本来異世界を渡る術なんてものは、宇宙内を移動するものではなく、宇宙の外の宇宙へ行く距離ではなく、次元の壁と真理の壁を越えるものだ。


 彼女の存在が歪んだのは、そういった理由だったのがわかった。


 存在の力を使い、術式を完成させようとしている。滲み出て視認できるようになっていたのは私が彼女に対して認識がズレてそう見えたのだろう。


 胸から溢れ出ている血色の電子回路状の術式の広がりが収まり、胸の中にしまい込まれていった。先程まで歪んで見えたグリーディンが元に戻っており、胸から手を引き抜いていた。

 手には血色がべっとりとついており、電子回路のような跡ではなく、針金が歪に生えていた。痛々しく、傷跡のようなものから赤色のプラズマがパチパチと音を立てながら発生していた。


 大丈夫なのか・・・アレ・・・


「準備は出来たわ、あとは樹の根元にある社で開けば通じるわ」

 特に痛みなどもないのか、表情が読めない声だった。


 そうして、樹の根元にある社へ向かうと鳥居が3つ重なった…これは三柱鳥居と呼ばれるものだ。グリーディンの両手から針金のようなものが伸びていき、手からパチパチと赤色のプラズマの発光していた。


 バチンッ


 グリーディンの左手の薬指と小指がはじけ飛んだ。

「えっ、ちょ―ちょっと大丈夫なの?」

「大丈夫、あとで治すわ」


バチバチンッ


 右手の親指、中指、薬指が弾け散った。針金が全て三柱鳥居に吸収されていき、巨大な樹が脈うち、グリーディンの両手から全ての針金状のものがなくなり、消失した指を見つめていると瞬時に元に戻していた。グーパーと何度か感触を確かめて、ちゃんと元に戻っているのかグリーディンは確認をしていた。


「さ、あとはそこの鳥居に入れば通じているわ」

「ありがとう」

 三柱鳥居は薄赤くやさしい光を出していた。そして、別世界に繋がっているのかオーロラのように色が変わるカーテンのようなものが中心に張っていた。私はそこへ向かい歩んでいた、ぜっったいにブルーを倒す。


 三柱鳥居をくぐろうとしたら、後ろから声がした。

「神に挑む者よ、可能性を示してみせろ」


 ―振り向こうとしたら、すでにさっきまでの景色とは違い見たことがある部屋だった。

「ここは…遺跡だ。私が最初に来た―遺跡だ」

 重槍がとんでもない重さで私は支えきれなくなり、地面に落としてしまう。私は、ハッとなり遺跡にアクセスをする。即座に遺跡からデータを抽出しようとするが、激しい頭痛が襲い拒否された。


「痛ッ、痛い…くっ…生意気ねぇ…」


 私はそれでも無理やり中身のデータを取り出した。重槍が反応し、インストールされていくのが感じ取れた。


「はぁ…はぁ…はぁはぁ…」

 今までにない頭痛が襲い、身体に倦怠感が襲ったが段々落ち着いていき、軽く頭を左右にふり感触を確かめると頭痛は収まっていた。


 深呼吸をし、重槍を拾い上げ遺跡の出口に向かう。インストールした事によって重槍がこの世界にあったようにチューンアップされた。次に向かうのは私が何度も死亡した遺跡だ。

 この世界でも引知士の能力が使えるとわかり、元がアキージョンベースなのがわかった。そして遺跡を通じて、私が現実に帰されてから時間が一ヶ月少し経っていることがわかった。

 遺跡を出ると太陽は真上にあり、風がなびいて頬に当たる。少し肌寒さを感じるが心地よかった。空を見上げると雲が流れており、鳥の鳴き声がどことなく聞こえてきた。さっきまでいた無機質な場所と違い、自然を感じられた。


 重槍を地面に放り、その上に乗り次の遺跡を目指す。恵那を探すには、世界の縮図を使って探した方が早い。重槍はこの世界でもアキージョンと同じように作用し、浮遊し自在に反応した。


「さぁて、どうせブルーは異界にこもってるだろうし…さっさと行きますか」


 世界を救う方法、そのデータがまだ私の身体に馴染んでいなかったが直感がブルーはこの世界にはいないと告げていた。そして、恵那が鍵だというのも分かり始めてきていた。


 じょじょに速度と高度を上げ、空の上から移動した。下を見ると豆粒のようにポツポツと冒険者やモンスターなども見え、以前いたことがある町も見えた。私はそのまま、霧に囲まれた遺跡に向かった。上空から、以前と同じように霧に囲まれているのが見え、近場に着陸し、遺跡を目指すことにした。


 霧に対し「知りたい」と思う事で正体を知ることができ、言うまでもなく視界がクリアになっていく、頭痛はなかった。

「へぇ、この霧…アキージョンの霧を流用していたものだったのか…」

 遺跡へ向かう途中で自分が何度も死亡した場所を思い出す。なぜあの時、私は何度も殺されたのか…現場付近で「知りたい」と思った。即座に情報がインストールされ、軽い頭痛に襲われる程度だった。


 詳細な情報を知り、その事に怒りを覚えた。


 リスボンを繰り返す事によって、死を超越し、強制的に能力を開放するイベントだった。またログオフも出来ないようにされていたことに背筋がゾッとし、手がワナワナと震え、いつの間にか拳を作っていた。


「クソがッ…」


 私は急ぎ足で遺跡に向かう、そこにもうイベントはない。いやトラップというべきものか―


 遺跡に到着し、データのダウンロードを行おうとするが世界の縮図はインストールが出来ないことを知る。

 私の身体では発動しなく、あのアーマーでないと意味を成さなかった。


「なんとなく、わかってはいたけどね…」


 重槍にインストールした時にそんな予感はあったので、私は仕方なく噂などを頼りに恵那を探すことにした。まずは近くの街へ向かうことにした、特にこの遺跡に長居する用もない。街に着き、冒険者ギルドに向かい恵那について聞くとすぐに噂としてあり、彼がどこにいるのか目星がついた。途中、活気がある冒険者たちに絡まれたりしたが適当にボコったり、重槍を盗もうとし、あまりの重さで槍に押しつぶされそうな輩を踏んづけたり、いろいろあったが彼らは非常に協力的になってお金が恵那の情報を教えてくれた。解決出来る選択肢が増えるっていうのは大事だなと痛感した。


 今まで恵那や乃陰に守られていた事のありがたさを痛感しつつ、恵那を探す事にした。乃陰はすべてが終わった後でいいという考えは変わらなかった。説明するのも面倒だし、むしろ足手まといになるような気がした。


 私は恵那がいたとされる街へ向かう、重槍に乗りひとっ飛びで…今まで歩きで数日、数週間、一ヶ月とかかっていた場所は今では数時間でいける。

 空には自分を妨げるものはなく、流れる雲に揺蕩う季節の風が草原や木々を撫でていた。すべてがパノラマで楽しめる優雅さがあった。自由に空を飛べるというのは素晴らしいなと改めて思った。前に空に隔離されていたことを思い出し、改めて実感する。


 気持ちいい、と


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