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地面に流れているぬめりとした液体が巨大ビルのエントランスから湧き出ていた。ビルといっても全面ガラス張りで、内部は水が流れているのが透き通って見えていて綺麗だった。内部の構造は透き通って見えており、ランドマーク用として造られたような芸術品だった。
見上げ、内部中央に巨大なコアだと思われるものがあった。
浮遊した状態で周りを移動し、敵と思われる巨大建造物を注意深く見る。本来なら濃霧に囲まれて、ここまで来ることはないのだろう…その前にアラクネ型に倒されるのだろうと思った。
地面がなぞの液体で満たされている状態のここではさすがにアラクネ型も自由に行動はできないだろう。居たとしてしてもこのビルの側面か上だろうと考えていた…
地図には表示されていなかったものはこのビルのみ…高度を上げコアがある部分まで上昇する。こいつ…私が見えてないのか?
『飛翔未那、濃霧状態で相手はおそらくお前を見失っていると思われるが―』
「えぐらせてもらうぞ」
ビルの方向から声がし、ガラス張りの美しい芸術品が溶けていき、巨大な戦車の姿へと変貌していった。濃霧にあったカラーリングになっており、さっきまでの透明なガラス張りではなくなっていた。あの物量がどうやって縮んだのか、さっきまであったビルが跡形もなく消えた。
そこには美しさはなく、無骨さが際立っており、戦車の上半部分は砲身がついてるものだが、奇妙な出で立ちをしたものがついていた。辛うじて私はそれが人の上半身っぽいものだとわかったが前屈になっていて、その背中に大砲を背負っていた。大きさにしてみればさっきのビル程ではないにしろ、私が乗ってきた装甲車などと比べるとサイズが一回りも二回りも大きい…いやもはや別次元の大きさだ。
あ、ヤバイ…大砲の砲身が私に向いていた。
ドゴォン!!!!
爆音がする中、なんとか躱すことに成功はするものの発射された弾の衝撃波によってふっとばされ、運良く近くのビルの屋上に転げ落ちる。重槍は衝撃によって私と離れ離れになってしまうという失態と犯す。
くそっ…油断した。
立ち上がり、嫌な気配を感じその場から飛び退くと散弾の後が地面をえぐっていた。耳障りで嫌な音がドバァンとし、発射されたと思われる方向を見るとアラクネ型と言うだけだって上半身が女性で下半身がクモだった。
両手はショットガンが一体化されている形状をしていた、上半身の女性にも口があるが下半身のクモにも口と眼がついていていた。どっちが本体だ…?
多脚型というだけあって、カサカサと器用に足を動かして動くと思ったら、地面に足を設置したまま滑っていた。しかも無音でかなり早い…
ヒュゥゥウ
という風斬り音が聞こえ、アラクネ型が瞬時にその場から離れていった。まさか…やっばっ!!!
ビルの屋上から飛び降りると背後に爆発音と衝撃波が背中越しに感じ、そのままふっとばされ、別のビルへ運良くガラスをぶち破り、全身にガラスの破片を受けながらビル内に転がり無様ながらに助かる。
オフィスビルなのか、机や椅子などが規則正しく設置されており、パソコンなどもあった。特に争ったような後はないことから、神かくしにあったような感じで気味悪さがあるなと思った。
全身に痛みという痛みはなく、ただふっとばされただけだったので、ガラスの破片なども払う程度で特に傷はなく、戦える状態だった。
この世界の人体強度は思いの外高いのかと感じつつ、さっさとビル内部から外に出ることにした。ここにいたら命が危ない、ただでさえ逃げ場がない、隠れて解決出来るのならまだしもあの火力だとビルに隠れるだけ無駄だ。
さっきまでいたビルを見るとどす黒い煙が出ており、炎上していた…
危うく炎上するところだった…丁度自分がいる場所が戦車が見えない位置だったのでこのまま隠れて隙を伺うのがありかと思ったが…突然花火が連続で上がったような音が鳴り響いた。
対人用の兵器をバカバカと打ちまくっていた…打ち上げれた花火から無数の拳大の鉄球が360度高速発射されていた…運良くビルの影にあるビル内だったため、免れたが…これはひどい。
どうやってあんなのと戦えっていうのー!!!
必死になって考えるが、まずはアラクネ型の奴を仕留めてからにしたほうがいいと思い始めてきた。超超遠距離からの重槍による投擲撃で仕留めるか…いや大砲持っていたからなぁ…あれ実は変形して電磁誘導型の大砲になりそうだ。
私は走りながら今いるビルから、退避してどこかに転がってるか刺さってるかであろう重槍を呼び寄せる。一直線で飛んできたのか、途中の障害物などはすべて綺麗に貫通してきた。私は細かいことは気にせず、重槍に乗り込みさっさとその場から退散しようと思ったが向きを戦車の方に向けた。
「やっぱり最初はあいつからぶっ潰そう…」
あんなただの火力バカ、この槍の餌食にすればいい。呼び寄せた時の速度と貫通力を考えると…張り付いてこいつをゼロ距離から叩き込んでパイルバンカーよろしくコアまで突貫させてしまえばいい。
リアクティブアーマーを装備してる可能性もあるから、このハンドガンで打ち込んでから張り付いてやろう。
さぁて、濃霧ときどき鉄球、ゲリラ鉄球にご注意くださいか…
アンバーシティの上空までトップスピードで登り上げ、濃霧が届かない位置まで駆け上がる。天井近くまで行こうとしたが、段々空気が薄くなっていくのがわかったので途中でため濃霧から飛び出している摩天楼を見下す。
まだ花火を打ち上げてるのが眼下で見えたが、私はそのまま自由落下のように重槍とともに突っ込む、私はすでにその花火を打ち上げている対象を目視し、どういう規則性で撃知上げているのか知りたいと思い、そのパターン情報を抽出していた。更にコアがどこにあるのかも把握しておいた。
「便利な能力には―」
抽出した情報は多くはないが、軽く頭痛がした。
『バイタルチェックに異常値が出たけれど…』
「『問題ない』」
打ち上げられた鉄球を落下しながら戦車本体に重槍で打ち返しながら落下していった。もちろん、戦車は自分にあたっても気にしない所に花火を打ち上げているが、それは爆発し加速した鉄球以上の速度での衝突は考慮されていない。
それ以上の速度で当たった場合はもちろん違和感として戦車の装甲をへこませるか場所によっては貫く。
落下中にアラクネ型が視界にうつり、かなり遠くから様子を伺っているのを見て、私は真下に打ち返していた鉄球のいくつかはアラクネ型に贈ってやった。まさか自分の方に来るとは思っていなかったらしく、驚き避けるが幾つかあたり、身体の一部を破損させた。
まあ、どうせ自己修復機能とかで治るだろうが、人間風情と舐めたのが命取りだったと塩を送ってやったんだ。ありがたく受けておけ…どうせ私に倒されるだろうが
うまく減速をし、戦車の上に着地する。目の前には前屈姿勢になったような奇妙な胴体、顔だと思われる部分には眼があり、装甲やアンテナといったものでゴッチャゴチャしていた。
目が合い、私は笑顔で挨拶をした。この瞬間がたまらなく好きだ。
「ライドオーン」
にやけた表情が顔についているのがわかった。戦闘時の一つ一つの雰囲気が好きだ、ちゃんと自分が動けるというのがたまらなく好きだ。
私が戦車の上に乗ったことを改めて伝えるとありったけの殺意が私に注がれ、ビリビリと空気が振動する。
「フザケルナァァァ」
左手でハンドガンを構え、即座に顔をめがけて撃ち放ち、目眩ましをする。銃口と大きさが違う火炎の弾が超速で顔に着弾し、爆散する。
「ガハッ!」
ハンドガンを仕舞い、重槍を構えてコアにめがけて投擲する。狙うは戦車の上半身前屈状態の中心部めがけて力をこめて放った。
放った瞬間、重槍が瞬時に変形し、超速で貫く―
「この街で…終わるとは…な…」
戦車に大きな穴があき、どこから声をだしたのか最後の声が聞き入れ、戦車だったものはどろりと巨大な不格好な粘土のようなものへと変質していった。
「そんな…何かの…間違いよ…嘘よ…いや…い―」
声の方向に向かってハンドガンを発射し、声の反応と爆発音から着弾を確認し、重槍を呼び寄せる。トドメとなるコアを破壊し、出来損ないの粘土になったのを見ない限りはね。
重槍がいつの間にか足元の近くに来ており、私はそれに飛び乗りアラクネ型を探そうとしたが、すでにさっきの攻撃でアラクネ型は粘土の塊になっていた…
「ミッション完了。シティへの損害もあるが…ほぼ完璧、素晴らしい戦果だ。こうでなくてはな…飛翔未那の有能性、確かに賭けてもいいものがあるね」
最初に会った時と同じ格好をして、グリーディンは現れた。
「近くに居たのなら、わざわざ通信をを使う必要がなかったんじゃないの?」
「今、到着したのよ。光見えても多忙でね…さて、この街の地下にゲートがある。ソーディアーに送ろう…こっちだ」
グリーディンに地下へ案内される。さっきまで戦闘していた戦車の残骸がある開けた場所…どうやら公園だった。地下へ通じる場所がある公園というのも奇妙なものだが、シェルターのようなものが作られていたのかもしれない。
「こいつらがここにいたから、ソーディアーにいけなかったってこと?」
「ご名答、そのために大型レイド作戦を展開することになったわ。ここに来る途中、近くで陽動部隊を大多数展開させてこの街を手薄にしたが…主戦力となるこの二体以外が残るだろうと予測したが、当たりだったようだ」
「私を利用したってこと?」
「手引きよ、あなたに可能性があるのか確かめたかった」
両手を上げながら、悪びれるわけでもなく、淡々と言葉を紡ぎながら歩いていた。こちらに振り向く事なく進む彼女の姿は強い意思を感じた。ブルーと同じような意思を感じ、もしかしたら…彼女も…
「ここよ」
どのくらい歩いていたのか、いくつかの入り組んだ通路の先にドアがあった。そしてドラが開かれた先は光があり、緑…そう自然がそこにあった。
「植物プラント施設、ここから見える大きな樹がある。そこにゲートがあり、ソーディアーに通じている」
公園の下に大きな、いやそれ以上の公園があった。眼下に広がる景色から、自分がいる場所がドーム上の最上部の部分だった。地下の下に更に地下空間が存在する世界か…




